十五少年疑心暗鬼
1.
ばりばりばり、ばりばりばり!
サメの尖った歯によって、赤ずきんとガリバーを乗せたいかだは、噛み砕かれていきます。
「どうするのよ、ガリバー」
「どうするって……しかたないですね」
小さな軍艦をつなぎ合わせたいかだに両足を踏ん張ってバランスをとりながら、ガリバーは腰からナイフを取り出しました。
「そんな小さなナイフで、あのサメをやっつけられる?」
「やるしかないんです、えいっ!」
果敢にもガリバーはサメの体にナイフを突き立てますが……カキン!
サメの皮膚は思いのほか硬いらしく、刃が弾かれてしまいました。サメはぎろりと、その黄色い目をガリバーに向けると、海の中に潜っていきました。
「退散したのでしょうか?」
「いや……何か、嫌な予感がするわね」
赤ずきんはつぶやきました。
すると、赤ずきんたちの乗っているいかだが、ゆっくりと持ち上げられていくのです。
「助けてっ!」
赤ずきんの叫びと同時に、いかだはぐるりと一回転しました。明らかにサメよりも大きな何かが浮き上がってきて、いかだを転覆させたのでした。
「きゃあ!」
赤ずきんとガリバーは海に放り出されました。
クジラでしょうか。いえ、違います。鉄の鱗でおおわれ、ところどころにねじを締めた跡も見えます。これは、海に潜る船? でも、そんなものが存在するでしょうか。
ざばあ!
その巨大な物に呆然としていると、いつのまにかサメがそばにきて、大きな口を開けます。無数に並ぶ尖った歯。洞穴のように黒いのど……ついにここで、赤ずきんの命運も尽きてしまうのでしょうか。
シュシュン、と妙な声が聞こえたのはそのときでした。
「えっ?」
赤ずきんの前から、サメの姿が消えました。波間にぐるぐると、緑色の渦が巻いているのが見えます。サメは、その渦に一瞬にして吸い込まれたようです。
「ガリバー、あれは何?」
ガリバーを振り返りますが、転覆したいかだにしがみつくのに夢中で、赤ずきんのことを気にはしてくれません。
とにかくサメはいなくなったわ。私もいかだにしがみつきましょう―そう思った赤ずきんでしたが、思うように泳げません。
バスケットを握っているからでしょうか。いや、赤ずきんの体もまた、緑色の渦に引き寄せられているのです。
「ガリバー、助けて。吸い込まれちゃう!」
「はい? なんですか、その渦は?」
「わからないわよ。あああーっ!」
赤ずきんの足はすでに渦に捕らえられていました。
シュシュン!
サメと同じく、その不思議な渦の中に、赤ずきんはぐるぐるぐるっと巻き込まれてしまったのでした。
2.
それから、十秒も経たなかったでしょう。
赤ずきんは、ぽん、と吐き出されて何かの上に落ちました。
「うわっ!」
「なんだ、どうしたクロス?」
「さっ、サメだ!」
そこは、森の近くの原っぱでした。赤ずきんは、ふかふかの草の上に落ちてしまったのです。そして、さっき一緒に吸い込まれたサメも、そばにいました。周りに、男の子が四人います。
バキュン!
銃の音がして、サメのわき腹から血が飛び出ました。男の子の一人が撃ったのでした。
「丸太を持て!」
「やっつけろ!」
サメは大きな口を開けて襲い掛かろうとしているようですが、何といったってここは陸の上。男の子たちが丸太でボカボカ殴りつけてきては、かないません。
やがてサメは、ぐったりとしました。
「なんだかわからないけど、いい獲物だ」
「これだけあれば、腹いっぱい食えるぞ!」
男の子たちは大はしゃぎです。
「ねえ、あなたたち。サメをやっつけてくれてありがとう」
赤ずきんが声をかけると、男の子たちは初めて赤ずきんに気づいた様子でした。
「えっ? 女の子?」
「俺たちの言葉がわかるのか?」
「わかるわ。私は赤ずきん。あなたたちは?」
「俺はドニファン」
サメを銃で撃った男の子が言いました。四人の中ではリーダーのように見えます。
「こいつがウェッブで、こいつがウィル、そしてこいつは俺のいとこのクロスだよ。ところで赤ずきん、お前、どこから現れたんだよ?」
赤ずきんは、今までにあったことを話しました。四人の少年は顔を見合わせ、首をかしげました。
「緑色の渦? 知ってるか、ウィル?」
「知らないよ。だけどドニファン、その渦を通れば、僕たち、帰れるんじゃないの?」
「帰れるって? この近くにお家があるんじゃないの?」
「ここは無人島だ。もっとも、俺たちがやってきてからはもう、一年半くらい経つ」
ドニファンが吐き捨てるように言います。
「話してやろうか、俺たちのろくでもない旅について」
*
俺たちは、ニュージーランドっていう国のオークランドという町にある、チェアマン学校の生徒だ。チェアマン学校には寄宿舎があり、八歳から十四歳までの男ばかりが共同生活をしている。
毎年、長期の休みがあって、普通は家に帰れるんだけど、その年は希望者だけで二週間の船旅をしようと校長が言い出した。
集まったのは十四人。出港の前日、俺たちは港の近くのホテルに泊まったんだ。みんな興奮して眠れなかった。すると、夜中の十二時をすぎたとき、船旅で俺たちの世話をすることになったモコっていう黒人が部屋にやってきたんだ。
「明日、お坊ちゃんたちが乗る船が、もう港に着いてますぜ」モコは言った。「今から行って、下見をしませんか? お菓子も持ってますぜ」
俺たち十四人はモコについて港へ向かった。真新しいピカピカの船がたくさん泊まっている中、俺たちの乗るスルーギ号っていう船はとってもおんぼろだった。
俺たちはがっかりしたが、船に乗ったらそんなことは気にならなくなった。甲板を走り回り、船室でかくれんぼをし、モコの持ってきたお菓子を食べて遊びまくった。
そのうち、最年少の八歳のガキども三人が眠くなったって言い出してベッドに入ってしまったんだ。おぶって帰るのが面倒だったし、どうせ明日乗るんだからって俺たちも眠ってしまったんだ。
ところがそのうち、ゴードンっていういちばん年上のやつが叫んだ。
「おい、この船、動いてるぞ!」
俺たちは跳び起きた。船は揺れていた。甲板に上がると、周囲は暗い海で、どこにも港の明かりは見えなかった。
「この船、ロープで港につながれていなかったっけ?」
「つながれていたはずだ。だが、外れちまったんじゃないのか」
ゴードンと俺はそんな会話をしたっけな。
とにかくもうどうしようもなかった。操舵輪を操ることができるやつも、帆をかけられるやつもいなく、潮の流れに乗り、ときに嵐に遭いながら漂流をすること五日目の朝、がずん、と船底が何かに当たった。
座礁だよ。
目の前に、島があった。それがこの島だ。
まずはゴードンと、俺、そしてもう一人の十三歳、ブリアンが降りた。
しばらく歩くと洞窟を見つけた。中に入ると、かなり広くて焚火の跡があった。書き物机があって、その上に古い手帳が置かれていたんだ。
開いてみると、それはボードワンっていう船乗りのものだとわかった。乗っていた船が難破して、小さなボートに乗れたのはボードワン一人。三日のあいだ、海を漂ってたどり着いたのがこの島で、食べ物を探しながら過ごした、と書いてあった。日付は今から百年前さ。ボードワンは洞窟の周りをくまなく探検して地図まで作っていた。
*
「それで俺たちはここが無人島だと知って、絶望したんだ」
リーダー然としたドニファンが、腕を組んで言いました。
「そのボードワンっていう人は?」
「知らない。骸骨すらなかった。だから絶望して海に身投げしたんじゃないかとゴードンは言っていたな」
「なるほど。もう一ついい? あなたたち、お手伝いの男の子を入れて十五人いるはずよね? 他の人たちはどうなったの?」
「知るもんか!」
クロスという男の子が、地団太を踏みました。
「あんな、自分勝手で偉そうなやつ! ドニファンのほうがずっと立派で、勇気があって、賢いに決まってる!」
悔しがるクロスを、両脇のウィルとウェッブが「まあまあ」と宥めます。
「赤ずきん、今はわけがあって俺たち四人は離れて暮らしているのさ」
ウェッブという少年がおっとりした口調で言います。
「それについてもドニファンが話してくれると思うけど、腹が減ってきたよ。日も傾いてきたしさ、まずは晩飯の準備をしないかい?」
3.
四人が住処にしているという場所まで、五人でサメを運んでいきました。そこには、細い枝と布で作った簡易的なテントがあり、石を丸く並べた焚火の跡があります。ドニファンが火をおこしているそばで、ウィルがサメをナイフで捌きました。
「じょうずなものね」
赤ずきんが褒めると、
「ナイフさえあれば、クジラだって捌けるさ」
ウィルはおどけます。どうやら、冗談が好きな性格のようでした。
クジラといえば……と、渦に巻き込まれる前のことを赤ずきんは回想しました。ガリバーはどこへ行ってしまったのでしょう。あの渦には巻き込まれず、はぐれてしまったようです。
「さあ、あとは待つだけだ」
ほどよい大きさに切り分けたサメの肉を枝に突き刺して火にかけ、ドニファンは言いました。
「そのあいだに、続きを話そうか」
*
俺たちは洞窟を生活の拠点とすることに決めた。ボードワンはあり余る時間を使って洞窟の中を生活しやすいように掘り進めていたらしく、焚火の跡のある空間を中心に、二つ、部屋みたいな空間と通路があった。通路は湖のほうに抜ける裏口に通じていたんだ。
まず俺たちはスルーギ号から運んできた大きなテーブルを、焚火の跡のそばに置いた。出入り口から見て右奥にぽっかりあいた穴の奥にあった部屋にはベッドを持ち込んで寝室にした。
左奥の部屋はもともとボードワンが敷いたらしいマットがあって、モコの提案で台所になった。マットのそばの壁のくぼみには、スルーギ号にあった食器棚がぴったりと当てはまったよ。
スルーギ号には大工道具もたくさん積んであって、物をすっかり運んだあとは、俺たちは船を解体して、必要な木材とした。座礁して、もう船としては使えなかったからな。
船室のドアを持ってきたら、表の出入り口にも裏口にもぴったりはまった。これですき間風なく快適に過ごせるようになったんだ。
俺たちは生き延びるため、それぞれの長所を生かして役割分担をした。
リーダーは、責任感のあるゴードンだ。俺の担当は、こいつらと同じ、狩り。料理はモコ。その他、かまどだのテーブルだの、生活に必要なものを工作する担当や、木の実を取ってくる担当なんかもいた。
スルーギ号にはどっさり保存食が積んであったんだ。缶詰、干し肉、砂糖……一年以上は持つぐらいの量だ。狩りで捕った獲物の肉とモコの料理の腕もあって、たまには喧嘩もしたけれどな、まあなんとかこんな感じで一年半、暮らしてきたんだ。
ところが今から十日ぐらい前、ゴードンが突然言い出した。
「そろそろ、選挙で新しいリーダーを決めないか?」
ゴードンが続ければいいじゃないかと俺たちは言った。だけど、同じ人間がリーダーをやりすぎると腐敗政権になるとかなんとか、くそ真面目なゴードンは言い出したんだ。
俺たちは選挙をした。当然、腕っぷしの強い俺がリーダーに選ばれると思っていた。
だが、結果は違った。
*
「ああ、あいつめ! ブリアンの野郎!」
ドニファンよりも先に、クロスが悔しがりました。
「ブリアンって、どんな男の子なの?」
赤ずきんは訊ねます。
「変に気取ってやがって、すぐに正論を振りかざすやつだ。口調は穏やかだが、いつも説教じみて俺を諭そうとする」
ドニファンとは、根本的に性格の違う男の子のようです。
「この島に来る前から俺はあいつのことが嫌いだった。だが一緒に生活するにつれ、本当に嫌になってきた。だがどういうわけか、あいつは年下の連中に慕われている。そして、選挙でついにリーダーになりやがった。俺に票を入れてくれたのは、ここにいる三人だけだ」
選挙なのだから仕方ないと、ドニファンも初めは従っていたのですが、だんだんと、腹が立ってきたそうです。
「俺はコマ回しが得意だ。ゴードンでもそれだけは俺にかなわない。ところがこのあいだ、ブリアンが俺に勝負を挑んできて、偶然、一回だけあいつのほうが長く回ったんだ。それをきっかけに俺たちは喧嘩した。最終的にブリアンは言いやがった」
「『僕の方針に従わないなら、この洞窟を出ていってもらうよ』」
左手で右ひじを触るようなポーズをとり、クロスが言いました。「似てる似てる」と、ウィルとウェッブが笑います。
「俺は、『出ていってやるよ!』と立ちあがった。一緒に来てくれたのが、こいつら三人だ」
「なるほど」
赤ずきんは言いました。
「長々とお話を聞かせてくれたけど、つまり、コマ回しがきっかけで喧嘩して、四人だけ家出したってことね?」
「家出だって?」クロスが真っ赤になって怒ります。「もっと高尚なものだ。これは、革命なんだ!」
「それは、おおげさだなあ」
おっとりとした口調で言うのはウェッブ。
「だけど、ドニファンに対する態度は明らかに悪いからな、ブリアンは」
「お仕置き、って言ったほうがいいんじゃないのか」
そう言葉を継ぐのは、ウィルです。
「十五人の中で、鉄砲の腕前がいいのは、ドニファンとクロス、そしてこの俺の三人。この島に来てから、動物はほとんど、俺たちが狩ってきた。洞窟に残ったやつら、きっと今ごろ獲物が捕れなくて泣いてやがるぜ」
うっふふふとウィルは笑うのでした。
「『戻ってきてくれ』と泣きつかれたらどうするつもりだ、ドニファン?」
クロスもにやにやしながら言いました。
「そりゃ、戻ってやらないこともないがな。リーダーにしてくれるのが条件だ」
「やつらもそれぐらいはわかってるさ。リーダーにふさわしいのは、獲物を捕まえられる人間に他ならないよ」
わっははは、と四人は顔を見合わせて笑います。まったく、男の子ときたら。
「あの、食べ物を獲得できるのはいいんだけれど、調理のほうもしっかりしてくれる?」
赤ずきんは焚火を指さしました。サメの肉が、黒い煙を上げているのです。
「わっ、これはしまった。クロス、引き上げろ」
「うん。……あちっ! ウィル、葉っぱを敷いてくれ」
ウィルが敷いた皿代わりの大きな葉っぱの上に、黒こげのサメの肉を載せます。木の枝でそれをほじくると、中はまだ食べられそうでした。ドニファンが塩で味付けします。人数分に切り分け、ようやく夕食になりました。
あたりはもう真っ暗。ウェッブがそばに転がっていた太い棒をかまどの火の中に差し込むと、ぼうっと燃え上がりました。それは、松脂を塗って作った松明だったのです。
「うーん……」
一口食べ、ウェッブが首を傾げました。
「やっぱり、モコの作ったやつのほうが美味いなあ。ねえ赤ずきん。ウサギの白ワイン煮って知ってるかい? コクがあってすごく美味いんだぜ。あんな料理、寄宿舎でも食べたことないよ」
ウェッブはうっとりした様子で言いました。
「ないものを言ったってしょうがないだろ。このサメだって、塩をもっとかければ……」
「しょっぱくなるだけだよ。それより、スパイスはどうだい?」
ウィルが、何かの種をクロスに差し出します。
「それはいいよ」
「赤ずきんは?」
差し出してきたそれを、赤ずきんは手のひらで受け取りました。
「俺たちがこの島で見つけたスパイスなんだ。奥歯でかみ潰してから肉を食べると、だいぶ味にしまりが出てくる。サメも美味くなるかもだぜ」
ウィルの隣でウェッブが口を押えて笑っているのが気になります。本当にこんな種で、味が変わるのでしょうか? 手のひらの上の粒を眺めていた、そのときです。
ばしゃーん!
どこか遠くで、激しい水音が聞こえました。
「なんだ、今の音は? 湖のほうだな?」
ドニファンが立ち上がります。他の三人の少年も、不安そうな顔をしていました。
「行ってみよう!」
松明を握り、男の子たちは走っていきます。赤ずきんも立ち上がり、バスケットを持って追いかけたのでした。
4.
森の中を二百メートルも走ったでしょうか。突然、目の前に水が現れました。
「これ、湖なの?」
松明であたりを照らしながら、ドニファンが「ああ」と答えます。
「この島のほぼ真ん中にある大きな湖さ。俺たちの住んでいた洞窟はこの向こう岸にある」
「何か、小さな波が立ってるよ」
クロスが言いました。闇の中から、波紋が押し寄せているのです。耳をすますと、沖のほうから、バシャバシャ音が聞こえました。
「ちょっと、行ってみよう」
ドニファンは、すぐそばの岩のほうへ歩いていきました。ついていくと、岩の陰に、赤い小さなボートがあります。
「スルーギ号の救命ボートだ。洞窟からここへ来るのに、使わせてもらった。流されないように、ここに引き上げてあるんだ。赤ずきん、松明を持っていてくれるか?」
赤ずきんが松明を受け取ると、四人の少年はボートを運びはじめました。それぞれの持ち場は決まっているものと見え、慣れた様子です。
湖面に浮かぶボートには、五人が乗ってもまだ余裕がありました。四人がオールで漕いでいきます。
「風が出てきたな」
ドニファンが言うとおり、湖の上に出ると風がけっこう強いことがわかりました。森の中では風が木に遮られ、それほど気にならなかったのでしょう。
「上空なんてすごいぞ。見てみろよ、雲の流れ」
空には星が出ていて、小さな雲がぐんぐん流れていくのが見えます。早く目的を果たさなければ、風でボートが流されてしまうのではないかしらと赤ずきんは心配になりました。
やがて、ある物体が近づいてきました。
「なんだこりゃ?」
ドニファンが頓狂な声をあげます。
それは、大きな六角形の物体でした。木材を加工して作られた六角形の枠に、布が張られたものです。明らかに、人の手で作られたものでした。バシャバシャという音はもう、聞こえません。
「誰か、なんだかわかるか?」
ドニファンの問いに、赤ずきんを含め、誰もが首を横に振りました。赤ずきんは船べりから手を伸ばして松明をそれに近づけ、さらに観察します。六角形のそれぞれの角には、鉄製の輪が取りつけられていて、それぞれに紐が結び付けられています。
「さっきのは、やっぱりこれが落ちた音なんだろうか?」
ドニファンが再び、疑問を口にしました。
「そうだろうね」クロスが答えます。「とにかくドニファン、ここは寒い。岸に引き上げて、調べないか?」
「そうだな。ウェッブ、ロープを取ってくれ」
ドニファンは船べりから身を乗り出し、ロープの端を、一つの鉄の輪に結び付けました。その髪が、びゅうびゅうと風になびきます。
「よし、戻ろう!」
四人はオールを器用に操り、すぐにボートは岸に取って返します。引っ張ってきたそれを一度岸に上げ、ボートを岩場に戻してから、みんなでその謎の物体を運ぼうということになりました。
「一、二の三!」
「なんだこれえ! 思ったより、重いぞ!」
ウェッブが叫びました。赤ずきんも松明を持っていないほうの手で手伝いましたが、たしかに重量があるようです。
「騒ぐなよ、ウェッブ。〝思ったより〟重いだけで、ボートよりは重くないだろ?」
「そうだけどさあ、どうして木枠と布だけのこいつが、こんなに重いんだろう?」
「布が水を吸っているからだろう」とドニファン。「火のそばに一晩おいておけば、きっと乾くさ」
というわけで五人は、焚火がいちばんよく当たるところにそれを置いたのでした。