去る10月から、ドラマ『家政夫のミタゾノ』の新シリーズが放送された。この番組名の元ネタは、大ヒットした『家政婦のミタ』。だが、実はこの題名も松本清張原作の2時間ドラマ『家政婦は見た』のもじりで、制作スタッフの遊び心が伝わってくる。

 番組名を決める際、視聴者の興味を引くために、制作スタッフは工夫を凝らしてきた。

 たとえば、音楽番組にあえて長い題名を付けたこともある。1976年放送の『セブンスターショー 又は異常とも思われるうすら寒い情況の中で彼らは如何に体力と精神力の均衡を保ちながら日夜歌っているか』である。文字数はなんと58。たぶん最長記録だろう。名付け親の久世光彦さん(当時TBS)から聞いたところでは、この番組名は、ある時期のフランスの小説群がヒントらしい。マルキ・ド・サド作の『ジュスチーヌ物語又は美徳の不幸』あたりを意識したのか。

 これと同じ年に、今度は長い題名の連続ドラマが日本テレビで放送された。それが『二丁目の未亡人は、やせダンプといわれる凄い子連れママ』である。かつてその由来を演出の石橋冠さんに尋ねたら、名エッセイストだった植草甚一に感化されたとのこと。確かに氏の著書には、『こんなコラムばかり新聞や雑誌に書いていた』のように、字数の多い書名が多かった。

 これとは逆に、1文字で勝負したドラマもある。『心』『道』『島』『彼』『川』『駅』そして『嘘』。あえて視聴者に内容を想像させない、という作戦だろうか。

 子ども向けの特撮ドラマは、『仮面ライダー』を筆頭に、人類の平和を守る主人公の名前を番組名にするのがお約束。ところが、あえて悪役の名前を付けたのが『宇宙猿人ゴリ』だ。しかしこれが不評だったのか、放送の途中で番組名が、正義の味方である『スペクトルマン』に変わってしまった。また主人公の名前をタイトルにしたドラマは、『水戸黄門』ほか時代劇に多いが、現代劇だと『古畑任三郎』『半沢直樹』あたりが有名か。それから主人公が小太りなことから、『池中玄太80キロ』『刑事110キロ』のように、その人物の体重を番組名にした作品もあった。

 ユーモアを強く感じる番組名もある。慣用句にひねりを加えたのが『明日はアタシの風が吹く』と『渡る世間は鬼ばかり』。また『刑事7人』は60年代の人気ドラマ『七人の刑事』、宮藤官九郎脚本の『11人もいる!』はSF漫画『11人いる!』がそれぞれの元ネタだ。だじゃれも多く、『Oh! それ見よ』はイタリアのカンツォーネの有名曲だし、木村拓哉主演の『安堂ロイド』は「アンドロイド」、バカリズム脚本の『素敵な選TAXI』は「選択肢」である。

 番組関係者にゴマをすったタイトルもある。人気アイドルのたのきんトリオが、バラエティー番組に初主演した。提供は東急百貨店。そこで担当プロデューサーの青柳脩さん(当時TBS)は、その番組名を『たのきん全力投球!』とした。これはご当人から聞いた裏話で、このタイトルをスポンサーは喜んでくれたそうだ。また『ミセスとぼくとセニョールと!』は、その頭文字を並べるとMBS、すなわち、このドラマを作った大阪・毎日放送の略称になる。考案したのは、先ほど名前を出した久世光彦さんである。

 びっくりマークは昔からバラエティー番組のタイトルに多用されてきたが、ドラマの『ハンドク!!!』には、このマークが3つも付けられていた。また最後に句点を打ったドラマは『いいひと。』『オヤジぃ。』『女子アナ。』『整形美人。』『夫婦。』『なるようになるさ。』などかなりの数になるが、その元祖は、先日亡くなった山田太一脚本の『想い出づくり。』(1981年)だろう。

 2023年に放送された話題のドラマ『VIVANT』は意味不明の題名だったが、さらに理解困難なタイトルが付けられたバラエティーが、1975年の元日に放送された。TBSの『コント55号のトンヒラコッぺドビダブジョ』である。名付け親は、これに主演した萩本欽一。彼が新聞で過去の正月番組を調べたら、「初笑い」「勢ぞろい」といった題名ばかり。そこで、わざと意味がないタイトルを付けたら、視聴者は観てくれるか試してみた。その結果、高い視聴率を取ったというから、番組名がもたらす影響力は思いのほか大きいらしい。

 その後も萩本は、斬新な番組名を考えた。自身が初めて企画主演したバラエティーに、『萩本欽一ショー・欽ちゃんのドンとやってみよう!』(フジテレビ)と名付けたのだ。番組タイトルに自らの名前を二つも!? 凡人には思いつかない、大胆な発想である。

 のちにトレンディードラマの元祖と呼ばれた『男女7人夏物語』にも、面白い逸話がある。企画プロデュースの武敬子が書いた本『たけさんのプロデューサー物語』によると、彼女が九州の放送局から東京の制作会社に移って最初に手がけたのが、『みんなで7人』というホームドラマだった。これが好評だったので、武さんは「私の幸運の数字は7」と感じ、その後も、自ら企画したドラマに「7」にまつわる番組名を与えた。『三男三女婿一匹』『さよなら三角またきて四角』そして『男女7人夏物語』である。

 驚異的な視聴率を叩き出した『おしん』。実は、同名のドラマがその14年前に放送され、しかも制作・NHK、主演・乙羽信子まで同じだった。もちろん内容は別物だが、偶然にしては、似た点が多すぎる。

 タイトルは番組の「顔」。その由来には、時として興味深い事実が潜んでいる。