武蔵小杉に遊園地を!
紀伊國屋書店武蔵小杉店(神奈川県川崎市) 鶴見真緒さん
「ずっとここにいたい」と思える空間。私は書店の中に、プチ遊園地を建設している。
文芸・文庫担当四年目となる。武蔵小杉は渋谷から十五分、横浜からも十五分。アクセスは悪くない。でも映画館もライブ会場もないこの街で、どこでも同じ価格で買える本を、どうやったらわざわざ買いに来てもらえるだろう?
〝推したい!〟という熱量を込めたPOPやフリーペーパー、派手なディスプレイを作ることは好き。でも、私なんかより凄い、芸術作品のようなPOPを作る書店員さんは全国にたくさんいる。もう一歩、うちだけの強みが欲しかった。
そこで始めたのが、ここでしか買えない〝お土産本〟を用意することだ。代表例が〝ボックス〟。朝井リョウさんのエッセイ「ゆとり三部作」が入る箱を、デザインから印刷、組み立て、補強まで、すべて手作業で作った。ボックスシリーズは現在四種類になり、どれも三桁セットの売上を記録している。
ほかにも、雑誌『GOAT』ではオリジナルビンゴカードを封入したり、昨年末には選書サービス付きの「本の福袋」を企画したり、春には「本屋大賞ノミネート作十冊セット」をお手製の窓付き紙袋に入れて販売したり。少し変わっているけれど、「あったら面白い」を形にしてきた(どれも想像以上に売れた!)。
「まちの書店」で終わらない付加価値を――。そんな思いが実り、今では「名古屋から」「大阪から」「北海道から」、「この展開を見に来ました!」と言ってくださるお客様もいる。
遊園地の発展に終わりはない。書店員、一生楽しめそうな予感がしている。
私の推し本
『まどろみの星たち』
菰野江名・著
ポプラ社
元保育士の私ですら知らなかった夜間保育園の現実。正解のない子育てと向き合う人々を、どこまでも誠実に描いた一冊です。