何が見えていないのか? HMV&BOOKS OKINAWA(沖縄県浦添市) 中目太郎さん

 

 マイルールは「見えないものを知ること」です。

 毎日、さまざまなランキングが発表されています。

 有名書店やネットのベストセラーランキングなど、書店員にとって品揃えの参考になる情報がたくさん出ています。しかし書店の棚をランキング上位の商品で埋めても売上が向上するとは限りません。というのも、ランキング上位の商品とは過去に売れたものの全国平均であり、自店でこれから売れるものとは異なるからです。

 全国の売上データを基にしたランキングや出版社の受注データによる定番書リストだけでは、自店でこれから売れるものを知ることはできません。参考にはなるものの、まだデータが足りないのです。

 その不足を補うのが数値化できないデータです。

 数値化できないデータとは、店頭での問い合わせや、経験から得た勘、地域の人口動態、行政の動きなどあらゆる物事です。数値化できない、つまり見える化できないデータは、現実には必ず存在しています。

「見えないデータが存在する」ということを考えに含める。それが現実の読者にフィットする棚づくりに必要だと考えています。

 見える化できないデータは仕事の現場以外でもあらゆるところに存在しています。

 日々のなかで納得できないことや予想と大きく異なる売上の動向に直面したときには、数値化されたデータを基に「見えているものは何か?」を整理したうえで、「では逆に、見えていないものは何か?」と、その存在を念頭に置いたほうがよいでしょう。

 

自店から見える浦添うらそえの海

私の推し本

『那覇の市場で古本屋 
ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』宇田智子
ボーダーインク

 

那覇というまちで、古本屋を営む日常を描いたエッセイ。著者の物事を見通すような率直な文章を読むと、こちらも背筋が伸びる思いがする。