本との出会いも思い出に
今井書店出雲店(島根県出雲市) 島田優紀さん

 

 今の職場は私にとって二つめの書店である。以前の職場が閉店したため転職して今の書店に勤めているのだが、売り場面積が以前の職場の二倍で市の人口は約六倍となり、ご来店されるお客様の多さには転職から一年以上経った今でも驚き続けている。

 日々たくさんのお客様を見ながら、スマホでさっと本を買える時代にあえて書店に足を運ぶ意味は何かと考えると、本が好きな人にとっては「本との出会いの瞬間すら思い出になるから」だろう。それを演出するのも書店員の仕事である。

 平台に本を並べるときには、隣に何を置き、棚のどの位置に置けば本の魅力を最大限引き出せるかと考えている。

 ジャンルやテーマによってまとめるのはもちろんのこと、たとえば千早茜さんの『なみまの わるい食べもの』の隣に村山由佳さんの『PRIZE』を置いてみたりした。この二作には直木賞の待ち会という共通点がある。そしてその並べ方は書店員それぞれの経験から導き出されるため、棚には担当者ごとの個性が生まれる。

 購入するかどうかはお客様次第だが、手に取ってみていただかなければその先はない。だからこそ、手に取っていただくきっかけをいろんな形で演出する必要がある。

 出会いの場は多い方がよい。その中の一つが、もしかするとお客様にとって特別な一冊になるかもしれない。

 売り場の全ての本が誰かにとってその日の主役になり得るのだ。

 特別な一冊との出会いの瞬間はきっと記憶に残り、その書店も思い出の場所となるだろうから。

 

島田賞が、埋もれてしまった良作を手に取っていただくきっかけになれば

私の推し本

『友達だった人』
絹田みや・著
(光文社)

 

現代を生きる人々が抱える小さな胸の疼きや心のモヤモヤを、 こんなに的確に表現できるなんて!  自分の気持ちをもっと大切にしていいんだと思えるご自愛作品。