脳内検索フル活動 紀伊國屋書店 広島店(広島県広島市) 藤井美樹さん

 

 日々、パズルです。私の担当は文庫本がメインです。少し細身な幻冬舎文庫、少し背の高いハヤカワ文庫などありますが概ねサイズはA6判。手のひらサイズの手帳ぐらいでしょうか。

 毎月の新刊、今話題のものも面陳にしたいし、定番と個人的に推しているものも忘れずに。

 カバーの色が隣同士で同系色だと埋もれてしまうので補色になるものを間に入れたいけど、内容があまり違うと違和感がでるのであれをこっちにしてみたら手に取ってもらえるかしら、など考えつつ黙々と並べていきます。

 昔々、棚を担当するようになった時に先輩から言われたのは「手を入れた棚はお客様に伝わる。しっかりと考えて棚を作ってね」でした。どの本屋で買っても夏目漱石の『吾輩は猫である』の内容が違うなんてありえません。けれど同じ本をどこにどう並べるかで棚の顔は変わります。棚作りって担当者はもちろん、お客様と作っていると思っています。先の先輩曰く「お客様との会話は重要よ。何の媒体で誰がいつ紹介したのか作者の情報もどんどん教えてもらって取り入れていけばいいんよ」

 はい、頑張って実践してますよ、先輩。

「この間の本、面白かったから次読むものを選んでよ」って言われることも増えました。脳内検索フル活動でスタートです。ちなみに私が好きなのはあっちこっち作戦です。

 おすすめの本を多めに仕入れたら一カ所ではなくあちこちにポップをつけて展開します。レジにいてその本を購入して下さるのを発見すると心の中で「ありがとうございます!」と叫んでいます。たぶん顔がにやけているかもしれませんが。

 

私の推し本

『このホラーがすごい!2025年版』1位の前作と共に展開

『ポルターガイストの囚人』上條一輝
東京創元社

 

日本特有の湿気を帯びた怖さがありながら、闇雲に怖がらせるのではなく冷静な理論で組み立てられた展開にぞっとします。超常現象なんて……と思う人にこそお薦めしたい1冊。