実店舗だからこそできることはなんだろう。欲しい本はいつでもどこでもネットで買える時代に、わざわざ足を運んでいただけるお店にするには、どうしたらいいのだろう。ご来店いただいたお客さまへ感動を提供できるお店ってなんだろう、といつも考えています。
 その答えの一つに『サイン会』があるのではないでしょうか。作家さんとファンの方が直接会える機会なんて、あまりありませんよね。サイン会を開催するにはお店は小さいかもしれない、お店の知名度もないかもしれない。でもその場を提供する。絶対に開催する。それが実店舗だからこそできる私たち書店の使命であるとも思っています。
 いつも感じますが、サイン会にいらっしゃるお客さまの幸せそうなお顔や感動のあまり流れた涙のきらめきなどを拝見すると、私も嬉しくなります。開催ができて本当に良かったと心から嬉しくなるのです。今、私は『作家とファンを繋ぐ架け橋となる』ことができているのかもしれないと思える瞬間です。本屋の使命として『架け橋』であることが私のこだわりなのです。
 架け橋になれるのはイベントだけではありません。一つ一つ丁寧にお手紙を書くつもりでPOPを作りお客さまへ本をご紹介していく。その積み重ねがいつか作家とファンを繋ぐ架け橋となるのだと信じています。だから私は今日もPOPを作り、作家さんや出版社さんへイベント開催のお願いをするのです。

 

私の推し本

『マン・カインド』藤井太洋
早川書房


第53回星雲賞日本長編部門を受賞。
近未来の戦争を描いたSF。未来の技術の描写が鮮明。人類が人類たる所以を考えさせられる傑作。