特別すぎない場所
アバンティブックセンター寝屋川店(大阪府寝屋川市) 永嶋裕子さん
昔は美容院、八百屋、薬局、みたいに町に溶け込んでいた本屋が、今や探さないと見つからない貴重な存在になってしまった。
生き残りをかけて工夫する中、店主こだわり選書のお洒落な店もたくさん出てきて、私も大好きでウキウキ出かける。そこは普段は出会えない本と遭遇する楽しみがある、特別感満載の場所だ。
そして、私の勤める町の本屋には町の本屋としての役割があると思っている。特別過ぎないということだ。
ちょっと時間があるからとか、待ち合わせはここでとか、誰もが気軽に立ち寄れる、日常の中にある書店であって欲しい。そしてどこでも置いてある本がここにもある安心感を届けるのも役目だと思っている。
ただ欲を言えば、この店は他とちょっと違うぞと思ってもらえると嬉しい。そのために少しでも印象に残るような売場を、試行錯誤しながら作っている。売れる本、売れている本をどかんと展開すべきだ。熱量や愛情だけではどうにもならないことは閉店を経験した身として痛感しているから。だけどやっぱりそれだけじゃ味気ない。スター級ではないけどいい味を出しているたくさんの本の魅力も同時に伝えたい。
その本が誰かの何かを変えるきっかけになるかもしれないという希望を込めて届けたい。それが私の唯一のこだわりだ。
とはいえ理想だけでは太刀打ちできないのも現実。ひとまず今日も、本を手にした人の背後でレジへ向かうよう念を送る。
なんだかんだ言っても超能力的なものに頼るふがいない書店員である。ちなみに念の効果の程は不明。真面目に働きます。
私の推し本
『迷犬マジック』
山本甲士・著
(双葉社)
どこからともなく現れ去って行く迷犬マジック。自分次第だよ! ともの言わぬマジックに気付かされる。なげやりになりそうな時、あの眉毛顔を思い出し自分を奮い立たせている。