マンガ肉の真髄を見つけました
“マンガ肉”には、食レポの極意があるんです。
なんの漫画で出たのが初めか分かりませんが、大きめの骨に、大きくて丸い肉がついてて、突き出てる骨を握って両手で食べる、マンガ肉。漫画の中ではそうとは呼ばれてないけど、ある日、マンガ肉って呼ばれるようになって、テレビでもいろんな人が作るようになりました。カラオケボックスのメニューにも入ったりして、驚いたのを覚えています。
初めて見たのはなんやろう? 『はじめ人間ギャートルズ』かな。マンモスの肉を大人が食べてて、子供がマンガ肉を食べてた。それが最初かな。あのマンモスの肉が美味しそうで、でも大きさが小学校の運動場に埋まってるトラックのタイヤくらい大きな円周の肉。なので、テレビで作ってるのを見たとき、「ホンマに作れるんや! アホなことをしてるなぁ」と思って羨ましかったです。
でも、その頃には僕も大人で、いろいろ考えてしまいます。骨の周りにはコリコリの軟骨があるし、肉もついてる。本当はあんな真っ白な骨にはならない、ということも知ってます。
以前、猟師さんから、
「骨の周りの肉が美味しい。でも、包丁では取るのが面倒くさいから、煮込む」
って話を聞いたことがあります。ロケでいろんなところに行くのでね、特によく無人島に行ってる印象があるのか、猟師さんも漁師さんも、好意的に話してくれるんです。
この話から考えると、マンガ肉には本当に美味しい骨の周りの肉がついてないし、もったいないってことになります。それに、大きい肉なので、なかなか中まで火も通らないでしょう。だから、いったん外側を焼いて、そのあとオーブンで中まで火を通す必要がある。さらにこれが『ギャートルズ』くらいのサイズなら、大きなオーブンのあるところでしか作れません。なかなか不便な料理です。
ちなみに、僕が話した猟師さんはジビエ用の肉を獲ってる人で、「どの動物のどの部位が一番美味しいんですか?」って聞いたら一言、「好みだね」。“マンガ肉”じゃなかったです。それはそうやなって回答でした。
でも、強いて言えばウインナーがお薦めだと教えてくれました。色んな部位が入ってるから美味しいそうで、食べるならば秋って言うてました。冬は冬眠で獲れない、春は冬眠明けで痩せてる、夏も腹が減らないと食べないので基本痩せてる。一方、冬眠前で太ってるから秋が一番美味しい。「ええこと聞いたで!」って思ったけど、ジビエの肉を買えるところが都内にはなかなか見当たらへんかった。

閑話休題。
マンガ肉です。
現実的に考えると、手間もかかるし、本当に美味しいのか分かりませんが、やっぱり作品のなかに出てくると、不思議と美味しそうに見えるんです。
漫画以外だと、ゲームの『モンスターハンター』の“こんがり肉”が有名なのかな。シリーズ通して登場するアイテムで、『モンハン』の象徴でもあります。プレイヤーが狩り場で料理して、実際に焼き上げて作るからか、いっそう食べたくなります。
最近見たので驚いたのは、確か『ONE PIECE』の扉絵やったかな、ルフィが持ってるマンガ肉。何が驚いたって、マンガ肉って焼くもんやと思ってたら、なんと揚げてたんです。肉に衣がついてて、大きな骨つき唐揚げみたいな感じ(違ったらすいません)。さすが、海上レストラン「バラティエ」で修業したサンジ! 火も通るし、サクッと感もいい! 熱いうちに食べたい! と思わされました。
ジブリ映画の飲食シーンなんかは、絶対食べたくなるくらい美味しそうやもんな。オマール海老をハサミごと食べて、口の中に手を突っ込んでムニ〜ってハサミの殻を出す感じとか、ほっぺた膨らむくらい頬張る感じが、たまらなく美味しそう。これはジブリじゃないけど、宮崎駿監督の『ルパン三世 カリオストロの城』のミートボールパスタとかね。食べてるキャラクターの顔がもう、美味しいって言ってる。
そうか! “マンガ肉”が美味しそうやったんじゃなくて、食べてる人が美味しそうに食べるから食べたくなってたんか! と、食レポの極意を見つけました。
料理漫画も好きでたくさん読むけど、料理を細かく描写してるのよりも、やっぱり食べてる人が、はふはふ言いながら食べてる顔の描写のほうが惹かれる。なるほどな!
それを自分の仕事の食レポで実践してみたら、口いっぱいに頬張りすぎて、いざ美味しさを話そうにも、うまくレポートができない! って気づきました。当たり前やけど、頬張りすぎてるからね。アニメみたいに上手くいかへんかったけど、美味しさを伝えることはできた気がします。
むしろ最近の食レポは、口に含んでから感想言うまでが早い傾向にあります。「いただきます」と頬張って、「これは美味しいですね」。これくらいのスピードで話してるので、噛んでないやん! って思っちゃう。
別に噛んでも噛まんでもええねんけど、そこ短縮するんや、って。せめて、うんぐって飲み込むところがあってから、「美味しいですね」であってほしい。これもタイムパフォーマンス、いわゆるタイパってやつなのかな。そこにパフォーマンスいらんねんけど、まぁそういう時代なんかな。
そういえば、最近のテレビでは、頬張る時に「ガブッ」て効果音がついてきます。アニメじゃない、実写の食レポで、ですよ。揚げ物やったら、音が鳴るのも分かるけど、饅頭でも、ティラミスでも「ガブ」って鳴る。せっかく本物を食べてるのに、偽物の音がするのは、なんか気持ち悪い。その料理の効果音、その音とちゃうやろって思うけど、ガブガブ食べる感じを強調したいからなのかな。違和感をなくすための効果音やのになー、本来の効果が出てないと思います。
その一方で、アニメの食事シーンは違和感がない。食べてる音も、声優さんが演技してるから。声優さんは、実際には食べてないのに、食べてるように見せることができるんです。
そうそう、アニメのキスシーンって、例えば男性声優が実際に隣の女性声優に顎クイしてキスしてるわけじゃないですよ。どうするかっていうと、手の甲の親指の付け根あたり、手の平の親指の付け根、母指球の裏のあたりっていうのかな、そこを「カプッ」って咥えて、少し吸って音が鳴るように「ぷちゅ」って離すんです。この技術がすごいです。声優は大体できるので、それを見せてもらうのも楽しい。で、「そこ、カプってやらせて!」って言うと必ず「嫌ですよ!」って言うてくれます。
あれ? 声優さんってお料理シーンで食べてないし、キスもしてないのに、食べたりキスしたりする演技してる。何も満たされてないのに、本番終わって帰ってはるのか……大変な仕事やな。
せめて、今度会ったら、マンガ肉を作ってあげたい!
そしたら、完食するまで帰さへんけど。
