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ツナマヨは最強なのか

 

 みなさんツナマヨって知ってまっか?

 ツナにマヨネーズ和えるだけの副菜。でも、最強でしょ。ツナマヨは小皿に載せただけでもええけど、何にでも合う!

 

 コーン入れても美味しい!

 玉ねぎに和えても美味しい!

 ピーマンに和えても美味しい!

 ポテトサラダに入れても美味しい!

 焼いたレンコンに載せても美味しい!

 

 誰と組んでも美味しい。今回は、副菜にするには最強のツナマヨの話です。もう、おにぎりの具でも美味しいし、フランスパンに載せて焼いても美味しい。ゴーヤに和えても、まぁ美味しい。そんなのを書いてるだけで今回終わっちゃう。

 

 強いものが更に強くなるっていう最強のことわざ、「鬼に金棒」があるなら、「ツナにマヨネーズ」が現代版やろう。ただ、僕はひねくれもんです。ホンマに最強かな? コイツに和えたら美味しくなくなるもんってあるんかな? そんなのを考えます。

 

「鬼に金棒」、「ツナにマヨ」。なので、「ツナに真珠」的なの探してみます。「マヨに真珠」じゃない。マヨはやっぱり金棒なんです。でも、金棒だけではどうしようもない。マヨ単品は飲まないでしょ? そんな感じです。でも、大体のものを美味しくしてくれる。だからこそ、鬼であるツナに合わないものを探してみます。

 

 ツナにハッピーターンは?

 ……絶対美味しいな。

 

 ツナにチーズは?

 合う。

 

 ツナにひき肉は?

 ツナヒキ! おもしれー!

 

 ツナとガリ(生姜)でツナガリ!

 

 話が名前遊びに逸れてしまってるけど、まぁ、合いそうです。合わへんものがないな。

 

 

 

 

 さて、そんなことを考えてると出口がない!

 ということで、自分に置き換えてみます。「鬼に金棒」。金棒はアイテム、武器、特技の類。では、自分をツナとした場合に、マヨネーズはあるのかな?

 

 簡単なところで言うと、「僕にテレビゲーム」なんでしょうね。でも、これは認めたくないんですよ。普通すぎるというか、知ってるやろうから。この連載を読んでくれてる人にはお得感を感じて欲しい。知らなかった有野を知ってほしい。

 

 僕の武器特技ってなんやろう?

 あ! 連載にもついてる“ガヤ”、これが良い!

 僕はご存知、大人数やと真ん中に立ちたくない人間です。真ん中なんてもんは立ちたい人が立つ所。カラオケ行ったら、歌いたい人がマイク持って歌えば良い。

 僕は、歌ってる人とそれを見てる人がいるとしたら、その見てる人とガヤガヤ話したい人なんです。ってことで“ガヤ”です。この言葉って、バラエティの業界用語やと思ってる人も多いと思うけど、そもそも“ガヤ”って言葉は声優業界のもんです。

 

 なんで有野が知ってるの? 実は、バラエティに持ってきたのがよゐこなのでね。真ん中に立たせてもらえないのは昔からで、その昔、『めちゃイケ』という番組がありまして、そこで「今日もガヤ仕事か」と、濱口が言うてたのが本番中にバレまして。出演者から、

「なんや“ガヤ”って?」

 と聞かれて、

「声優で言うところの、ガヤガヤ言うだけの仕事や」と濱口。

「“ガヤ”も立派な仕事やろ」なんて岡村くんに言われました。

 そうなんです。立派な仕事なんです。

 ここからさらに昔話に入ります。

 

 アニメ『クマのプー太郎』(1995)という作品で、双子の兄弟というキャラクターでレギュラーで出させてもらってたよゐこ。当時の番組プロデューサーが現在のフジテレビの社長やったり――それはさておき、その番組の録音監督が千葉繁さんでした。

『鬼滅の刃』では我妻善逸の師匠やってたり、僕の中では『うる星やつら』のメガネ。そんな人が制作スタッフもやるんやと、当時は驚いてました(現代では探してみたら結構あります)。そこで“ガヤ”という役を知ります。1回で2話分(2週分)録音するスタイルで、その話の台本に載ってるセリフ部分の録音が終わると、

「ガヤお願いしまーす」

 と言われて、声優さんみんながスタジオに入ります。でも、そこからよゐこはスタジオを出てました。なんか分からんけど、ここからは声優の仕事って思ってたんです。出しゃばらへんのがよゐこなのでね。

 

 そのアニメ『クマのプー太郎』の現場では、最近では珍しい“内入り”がありました。番組が最終回を迎えての打ち上げではなく、レギュラー途中でこれからも頑張って下さいってやる宴会です。原作の中川いさみ先生もやってきて、みんなで話します。出演者も多く、マネージャー制作含め80人以上は参加してた立食スタイル。

 そこで録音監督の千葉繁さんが話しかけてくれました。

「有野さん、ガヤお嫌いですか?」

「え、なんでですか?」

 質問に質問で返してしまう失礼さ。

「いつも、“ガヤ”になるとスタジオを出られるから」

「そこは声優さんのお仕事なのかと思って出てました」

「いやいや、やって欲しいです」

 そこから“ガヤ”の凄さ、面白さを教わりました。

「主役を生かすも殺すもガヤ次第なんですよ。例えばね、事故現場でね。画面では右から左へ野次馬を見せてますよ。そこで『台本にはないセリフでガヤお願いしまーす』ってお願いすると、こんな感じで声を入れるわけです。

――『誰か倒れてるぞ』

――『救急車呼んで』

――『あ、あのビルの上にいるのは!』

 で、画面がビルの上に切り替わったら、

――『私が来たぞ』

 と言って、ヒーローが立ってる。これが自然な流れです。

 もし、この場面での“ガヤ”で、一人目の人が、

――『あ、あのビルの上にいるのは!』

 って言ったら、展開を先取りしすぎて、ダメじゃないですか。かといって、ビルの上にいる人に触れないのも、主役が立たないでしょ。

 大事なやりとりですけど、それって台本にはなかったりするんです。“ガヤ”っていうのは、声優がアドリブで勝負する唯一の場所なんですよ。『うる星やつら』でメガネいるでしょ、あれ僕がやらせてもらってたんですけど」

 知ってる! 見てました! とは言わず。

「あれも、元々はガヤだったんですよ。『あたる! どこ行くんだ!』とか言う程度。でも、そこで僕が勝手なこと言ってみたんですよ。この後に起こるヒントとかね。そしたら、ある日台本にメガネのセリフが入るようになって、そしたら、高橋留美子先生も見られたみたいで、重要な役になってって。すごいガヤって夢があるじゃないですか。声優も台本にないセリフを出せるから、みんなのびのびやってるんです」

 

 その翌週から、僕らもガヤにも参加するようになった。

「ガヤお願いしまーす」

 録音が始まる。

「――さん、3番目でお願いします」

「――さん、2番目でお願いします」

「有野さん、最後の人お願いします」

 やった!

 

 そんな感じでやってました。主役を生かすガヤを頑張ってみようって、やりだしました。

 でも、最近のバラエティのガヤって、テロップになりたい人全員がみんなガヤガヤ言うてるだけになってて、誰の言葉も立ってない。アニメやと、録音監督があなたの言葉が必要って吟味していくのに、バラエティやとメインが拾うまでずーっと何か言ってたり。ガヤっていうより、傷つく人もいそうなヤジ的な言葉が増えてる気がする。

 僕にとっての“ガヤ”って、ボケに対するツッコミではなく、ボケがより変に映るような一言を添えたり、ツッコミ要素よりもボケの補助アイテムみたいな感じ。それが『ゲームセンターC X』の“課長のボヤキ”とも言われるやつ。ゲームのキャラクターがボケてるから、そこをより理不尽に見えるような言葉を補足してます。

 

 ってことで、最強を示す言葉は、「鬼に金棒」「ツナにマヨ」「有野にガヤ」。これでどうでしょう。テレビ業界の方々は、有野を真ん中に立たせないようにお願いします!

 ただ、有野はひねくれもんなので、ツナマヨにもう一癖足したい。どう? 美味そうでしょ。うーん、結局、「ツナに真珠」はありませんでしたm(_ _)m。