バス移動
車を修理に出しました。
普段は電車・バスに乗らへんのです、レギュラー11本抱えるスターなのでね(自分で言う)。ということで、この1週間は公共の移動手段を使うことになりました。
高校生の頃は、通学以外ではバイトに行くのも遊びに行くのもバイクでした。中型免許持ってたからね。東京に来てすぐの頃だけは、電車で仕事場に行ってみたけど、駅から歩くの嫌やなーと、再びバイクを買い、20代前半でバイク生活に戻りました。さらにその数年後には車も購入したので、東京の電車について詳しくなることもありませんでした。
そして、結婚。僕がいると、家族はマイカーで移動になります。ただ、外食でお酒飲みそうな時はタクシーで行って帰る。そんなスタイルの僕やけど、現在は自分の車がない。
仕事終わりに繁華街で家族と合流して、タクシーで移動しようと大通りに向かってたら、妻から、
「駅まで近いし、乗って2駅だから電車でよくない?」
「何言うてんねん、わしスターやぞ! タクシー移動やろ!」とは言わず、
「そやな」
と、しぶしぶ電車に乗ることになりました。
妻と娘はみんなIC乗車カードのSuicaを持ってて、僕は持っていない。これがしぶしぶの原因です。内心、すごい焦ってました。切符って、どうやって買うんやろ? 53歳で知らないって言いづらい。家族の前ではなんでも知ってる父親像を演じているので、みんなに待ってもらっている間に、知ったかぶって券売機のところに行く。路線図を見上げて驚愕、記憶喪失でもないのに自分のいる駅が分からない。理由は簡単、記憶してないから。当駅って書いてるはず……どこや、分からへん!
独り言(のふり)で、娘に助けを求める。
「ここどこやろ?」
「えー、路線図見ないと分かんないけど」
そうか、今の乗客はI C乗車カードで乗るから、チャージしてたら残高が減るだけで、切符買うために“今どこにいるのか”を考えることもないんか。そんなことより、今の問題。
「当駅って書いてへんかな?」
「2駅だから180円でいいでしょ」
「ちゃうねん、どこからどこに乗るか知ってたいねん」
「そこ!?」
家族からは軽くあしらわれるスターでした。
“自分がどこにいるか把握しておきたい”って、よく分からん考え方やろうけど、ドラクエで言うとマップを頭に入れておきたい感じなんです。自分がどこにいるのか把握しておかないと、たいまつが消えた時に階段の場所が分からず、ダンジョンの中で途方に暮れることになる。たいまつって序盤しか使えへんけど、明るさの範囲が狭くなるとパニックやったやん。最近はドラクエの新作やリメイクも出てるし、この気持ちがわかる人増えたかな。ここでは表記も“松明”ではなく、ドラクエにならって“たいまつ”にしときます。

さて、180円の切符を現金で買って、何年かぶりに乗った電車。いつもは踏切で足止めされて車の中から電車を見てたので、逆に踏切で停車する車を電車の中から見下ろすだけでワクワクでした。僕は珍しくって車内をキョロキョロするけど、家族は慣れたもんで、ずーっとスマホいじり。
「吊り広告ないのか」
「え、あ、なくなったね」
他になくなったものはないかなと、キョロキョロする。確か東京来た頃には、扉のところについてるモニターで、パズル出してくる動画が流れてたのは覚えてる。さらに35年前の高校時代まで記憶を遡って、
「エアコンがなかった頃は扉入ってすぐのここに大きい扇風機があって、夏はぐるぐる回っててんけどなー」
なんて、ずーっと独り言言うてた。そういえば子供の頃は電車の中に灰皿もあって、タバコ吸ってる人もいたっけ。変な表現やけど、ないものがたくさんある。もしかしたら逆に、僕が知らんだけで、車両によってはまだ残ってるものもあるんやろうか。
それくらい電車離れもあったけど、妻の「電車でよくない?」の一言で、それ以降も電車に乗るようになりました。旅行先にも特急で行って、現地ではバス。その方が自分で運転せんでええ分ラクやし、移動中も家族と話せて楽しいし早い。スターの僕が、実は電車・バス移動です。
もちろん、僕はバスも初心者。乗り方もよくわかってないです。関西の人は後ろから乗車、前で降車やけど、関東では逆。それはもう覚えました。同じJRのICカードでも、関東はSuicaで、関西はICOCA。なので、関西のコンビニで買い物するときに「Suicaで」って言うても、店員さんは「スイカ(西瓜)」に聞こえるみたいで、「は?」って言われます。この1ターンが面倒くさいなと思い、こちらが携帯電話を見せながら「交通系で」って言うと、「(あ、電子マネーね)こちらにどうぞ」ってかざすところを教えてくれるのが分かりました。
さて、そんな初心者の僕がいると、家族で外食に行くのも一苦労です。僕を連れて歩きながら、店に電話する長女。「〇分後に着きます」と、移動時間も考えてお店に電話予約してくれてる。バス停に着くと、今度は妻が、バスが何個前の停留所に来てるかスマホで確認。3個前まで来てるから、ここまで来るのに4分くらいかかるとか。
僕は信号の先にあるコンビニまで、くじ引き見に行ってええかなと打診してみる。
「絶対ダメでしょ。間に合わないよ」
「めっちゃ急ぐけど」
みんなから止められ、断念することに。見るだけやのにな、ってブツブツ言う始末。
あれ? ちょっと待って。一家の大黒柱の立ち位置のはずが、まるで幼稚園の末っ子長男坊やん。バスに乗ってる間も、家族はスマホ見て、僕はバスの中をキョロキョロ。末っ子はバスが珍しいみたい。なんや格好悪い父やなーって、ぼやーっと思ってたら、降りる停留所が近づく。ソワソワしてるのを押し隠しながら、
「次、押してええかな?」
せっかくバスに乗ったんやから、あの“とまります”のボタンを押したい。これも父親の言葉らしくはないかもなと思いつつ、
「いいよ」と、長女。
「え! 自分で押したくないの!?」
カルチャーショック? ジェネレーションギャップ? 最近の人はボタンを押す喜びがないのかな? 押す手間を誰かにやってほしい感じなのか。大きなバスをボタン一つで止める権利を得られるのに、もったいない! これも、時代かなーって末っ子長男坊は思いました。そろそろ押すかなと手を伸ばしたところで、〈ピンポン 次止まります〉のアナウンス。先に押された! とバスを見回すと、犯人である長女が笑ってる。
「押していいって言うたやん!」と、末っ子長男坊は泣きそうになりました。
そんなこんなで、無事に店に到着。行きの時点ですでに長女が帰りのバスの時間を調べてくれてたけど、僕はそんなことも忘れて、いつもの癖で食べ終わって、さっさと店を出てしまった!
バスが来るまであと13分。その時に気づいた。そうか、自分は車出勤が多いので分からなかったけど、みんなバスや電車やらの出発時間に合わせてスケジュールを組むのか。一方、自分はなるべく現場にちょうどに着くように「この時間は混むから何分前に出よう」って考え方しかなかったけど、家族は早く着いたら着いたで何しようとか、待ってる間何しようとか考えてるわけか。
寒い停留所で家族が出てくるのを待ちながら、周囲の人がスマホ触ってる横で、明日は何食べようかなーと考えてました(さっき食べたばっかりやのに)。あったかいところで、あ、沖縄の料理がええなー。きつい環境にいるほど、今何食べたいかなって現実逃避するのは、無人島0円生活からのクセやな、って思い出しました。
