SDGs鍋サラダ
4月になりました。そこで「もうお鍋はやめましょう!」とならないくらいには、お鍋って冬だけのものではなく、どの季節にも食べる定番料理になりました。我が家では、冬になったから棚から鍋を出そう、とはならず、ずーっと出っ放し。なんでやろ?
答えは簡単! 冷暖房の設備が普及して、部屋が寒くなくなったから。その上、夏の部屋も暑くなくなったから。
この二つの理由やと思います。何より、部屋が寒くなくなったのがでかい。
昔は、寒い冬に灯油ストーブ焚いて、こたつを出し、その上に延長ホースで台所からガス管繋いで、お鍋をぐつぐつ作ってました。お鍋のおかげで部屋がさらに暖かくなるんです。
以前、20代の人と話してて驚いたのが、小さい頃にしもやけになったことがないって言うんです。
え! しもやけって冬の風物詩ちゃうのか。足の小指が大きくなって、むず痒くなる、アレです。学校行っても治まらへんから、授業中に片方の踵で靴の上から足の小指あたりをぎゅーぎゅー踏んで。虫に刺されたわけでもないのに、何やこれ、と帰宅して母に聞く。
「母ちゃん、なんか足の指はれててかゆい、皮膚科行きたい」
「見せてみ。あ〜、しもやけやんか。お風呂入ったら、指をよぉもんどき」
そんなんで治るかいや。病院連れてってほしいのに。ブツクサ言いながらも、風呂入って揉んでビックリ。一晩で指の腫れが半分になって、次の夜には治ってた。
そんな冬の風物詩も、時代とともに減ってきてるようです。
逆に夏には「冷房病」って言葉もあるくらい、エアコンつけるだけで涼しくなるし、むしろ鍋が食べたくなることもあります。
おまけに、カセットコンロもお鍋普及に手伝ってると思う。長いガスホースをキッチンから繋がなくてもいいし、そのホースに子供が足引っ掛ける心配もない。カセットコンロってすげーです。さらにコンセント繋ぐだけの電気鍋もありますからね。
関係ないですけど、紙鍋ってすごくないですか? なんで燃えへんの? なんで漏れへんの? これ僕知ってるんですけど、また今度、冬に書きますね。

そんな事より、今年は出てましたか? 冬将軍。
冬将軍も見なくなりましたね。若い方からしたら、「冬将軍って何?」でしょ。ニュース番組のお天気のコーナーでも言わなくなりました。
「スタジオの年配の方は知ってるけど、見てる視聴者の若い方には説明しないと伝わらないんじゃないか? でも、その説明する時間があったら、お天気の情報を伝えたい……この表現、カットしましょう」
こんなふうに、昔使ってた言葉っていうのも、テレビからどんどん減ってるんじゃないかな。そんな冬将軍やけど、めちゃくちゃ冷たい寒気が来る時に“冬将軍がやってくる”、寒い日が続くと、“冬将軍が居座る”みたいに言われてたんです。でもそれって、東京中心の考え方ですよね。東北方面には毎年巨大な冬将軍が来て居座ってることになるしねえ。
昔は、そんな冬将軍と一緒に、鍋奉行がやって来てましたよ。あ、ご紹介遅れました。鍋奉行、お鍋にこだわりがあって指示してくる人のことです。
「魚の骨から出汁が出るから、魚は最初だね」
「肉は最後だよ!」
「野菜はクタクタまで煮るほうが好き? じゃあ初めに入れとこう」
「よっしゃ、雑炊は拙者が作ろう」
そんな人です。この鍋奉行をうるさいなと取るか、美味しいのを作ってくれてありがたいと取るかは、あなた次第です。
鍋奉行というと年上のイメージですが、僕なんて20代から鍋奉行でした。「有野、細けぇよ!」って言われてました。
だいたい4人で鍋1個でしょ。だから10人くらいで食べに行くと、2個か3個の鍋に分かれます。不思議なもんで、こういうのって大体各テーブルごとに鍋奉行がいます。独身鍋奉行に対抗するのが、既婚者である主婦納言。主婦納言の凄さは手際のよさ。独身鍋奉行は鍋しか知らないので、アレンジが利かない。しかし、負けじと対抗心むき出しの独身鍋奉行。
「あっちの鍋より美味しいの作ったりますわ」
「もう、肉食べれますよ。食べへんねやったら僕食べますね」
「春菊はよ食べんと! もう、僕食べますね」
「ちょっと、灰汁くらい取ってもらえまっかね」
ここでアク代官の任命です。僕よりも後輩です。
「鶏肉入れたから、火強くしよか」
江戸の火消しの逆、鍋の火増しです。
「ほら、肉入れたからアク出てるで、アク代官様」
「沸騰し出したら、弱火やん」
「これでいいっすか」
「灰汁だけじゃなくて汁も捨ててるなぁ、アク代官様」
「もう良い、おたまを置いて下がれアク代官」
すげーうるさいのが鍋奉行です。いつの間にか、主婦納言の方へ、食べるだけの町人は流れていきます。
「ウインナー食べないの? ほな入れちゃおう」
「野菜? 生でも食べれるからいつ食べてもいいよ」
「噛むの疲れたから、雑炊はやわやわで良い?」
主婦納言は、指示も押しつけがましくなく、高い支持率を誇ったそうな。
楽しい食卓です。
普段料理しない男性もはしゃげるのが、鍋やバーベキューの良いところやと思います。
そして、僕が鍋についてもう一つ好きなところは、締めまで食べて、鍋が綺麗になって終われるところです。
締めはうどんでもいいけど、理想はご飯入れて、弱火でコトコト煮込んで汁を吸わせて、少しシャバシャバなくらいにして、卵、ねぎ入れて完成。好みで海苔やチャンジャ入れてもいい。
何より、雑炊のおかげで、鍋が綺麗になって終わるから、気持ちいい。フードロスゼロ、これが日本古来から伝わるSDGsです。
映画『たそがれ清兵衛』観ましたか? 真田広之さん演じる元武士の清兵衛さんが、旧体制の藩士を粛正するという最後の仕事を請け負う話です。
みんなで質素な朝食を食べるシーンがあるんですが、そこで清兵衛さんがお茶を茶碗に注ぐんです。そして、残していたたくあんを使って、お茶碗に残った米粒をこそぎながら、最後に全部飲み干す。最後に、水滴を刀についた血を振り払うように、縁側でチャッと茶碗を振る。
僕の好きなシーンです。綺麗に服を畳んでるとか、その職業の綺麗な所作を見るのが好きなんです。「それそうやるんや」って思いたい。それでいうと、昔は洗剤ないから、そうやって綺麗にしてたのかって分かって良かった。
その観点から言うても、お鍋は最後まで綺麗に食べられていい。あと、おでんも良いですね。全部食べられる。お皿に汁が残ってたら、ご飯入れて、おでんライス。お鍋に残った汁があれば、翌日カレー作るもよし。
でも、どうしてもたくさん作ってしまうおでん。そんな時はおでんのサラダはどうでしょう。
……何? おでんのサラダって? おでん奉行に怒られそうです。
で、主婦納言って何?
