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縁の下の力餅

 

 お餅が大好きなんです。近所で買うお餅もいいですが、とりわけお土産で買うお餅が好きです。ということで、今回は日本各地の“ご当地餅”をご紹介します。

 仙台行ったら、ずんだ餅買います。枝豆の食感が少し残ってて、ほんのり甘い。初めて食べたときは、ビックリする美味しさで目ん玉飛び出そうになりました。それから仙台に行くと必ず買うようになりました。仕事で仙台に行ったときには、ずんだ餅発祥の店にもお邪魔したくらい。すげー美味しかったです。

 ずんだ餅だけでも美味しいのに、今はずんだシェイクってのもあるんです。初めは仙台空港にしかなかったんですけど、最近では仙台駅でも買えるようになって、これが堪らない。甘めのずんだに、餅の食感、バニラの香りが合う!

 

 山梨県に行ったら、信玄餅買います。あれ、どうやって食べますか?

 風呂敷みたいなビニールを広げて、その上に乗った信玄餅の蓋を開けて、黒蜜をかける派ですか。それとも、蓋をとって、一個きなこのみで食べて、その隙間に黒蜜入れて食べる派ですか。

 僕? どっちでもない派です。ビニール広げて、そこに信玄餅ときなこが入ったケースをひっくり返して、きなことお餅に黒蜜かけて、ビニールを包んで、唐揚げみたいに揉みます。揉みます。きなこと黒蜜が絡むまで。きなこの色が黒蜜色になるまで揉みます。するとどうでしょう。でっかい黒蜜きなこボールができます。そのままだと少しくどいので、周りについた黒蜜きなこの部分を、付属の小さくて平たい爪楊枝でこそいで食べます。

 残った黒蜜きなこは、どうしよう? バタートーストに載せても美味しいですよね、多分。やった事ないけど。普通の四角い餅焼いて、そこにかけても美味しいやろうけど、そのために信玄餅買うっていうのも、信玄餅がメインじゃなくなる感じで失礼やしなぁ。歌舞伎揚に乗せても美味しいか。あ! ヨーグルトに入れたらええかな。今度、試してみます。

 

 あと、鹿児島行ったら、じゃんぼ餅を食べてほしいですね。平たく整えられて焼かれたお餅に、割り箸みたいな四角い棒が2本刺さってて、砂糖醤油がかかってる郷土甘味。知ってますか? 名前の“じゃんぼ”は大きいって意味ではなくて、実は漢字で書くと“両棒餅”。棒が2本刺さってる様子を、武士の差してる二振りの刀(本差と脇差)を指す“両棒”に喩えたというのが由来だそうです。“両棒”は中国語で“リャンボウ”、これが鹿児島で訛って、“じゃんぼ”となったとか。諸説あるようです。

 このじゃんぼ餅、空港で売ってるのを見たことがない。だから、もし見つけたら「買う!」ってなります。仕事で通りかかったら、店が少し遠くても寄ってもらうくらい、食べたい餅です。この魅力がタレなのか、平たい餅にあるのか、とにかく、美味しい。みたらし団子とは全然違う。

 

 んで、1番有名なご当地餅は伊勢名物の“赤福”やと思う。

 なぜなら、赤福に関しては、餅って言葉がつきません。“赤福餅”と言わなくても、もう、赤福って餅なの知ってますよねって感じです。

 テレビ業界でも似たような話があって、たとえば挨拶。テレビやと本番収録前に他の出演者のところへ挨拶に行く文化があるんです。僕はもう芸歴を重ねすぎて、先輩のいる現場が少なくなったので、挨拶に行く機会は減りました。ゲストとして呼んでもらったからといって司会者のところに挨拶行くと、それはそれで相手へのプレッシャーにもなるので、メイク室で会ったら挨拶する程度。それでも若い頃は、「松竹芸能のよゐこの有野です!」と言うと、先輩出演者の方は「ああ、鶴瓶ちゃんとこのか」と、気さくに話してくれました。

 名前が売れてくると「よゐこの有野です」となって、最近では「課長の有野です」って言うほうが盛り上がったり。「生まれは大阪、松竹芸能のお笑い芸人・よゐこの有野です!」とは言いません。赤福で喩えると、「伊勢名物の、こしあんが載ったお餅の“赤福”です!」って言って回るようなもんです。すると先輩出演者は「名物も餅も知ってるわ!」って、丁寧すぎて逆に怒られます。

 

 さて、お餅の素晴らしさをもう少し掘り下げます。

 うどんに餅を入れたら、“力うどん”になります。名前の由来は“力持ち(餅)”から来てるのかなと思うけど、食べると力が出るって意味もあって、分かりやすい。でも、パンやご飯でそんな言い方するのは聞いたことがないから、餅には特別なエネルギーの源というイメージがあるんやと思います。

 それに、餅って、ご当地甘味もあるけど、季節ごとにも食べます。春は桜餅、秋はおはぎ、冬は鏡餅。季節問わず、お祝いごとでも食べますね。一生食べるのに困らないよう、一歳のお祝いには一升の鏡餅を背負わせるという文化もあります。一升なので、約2kg。子供からしたら「なんでこんな重たいのん背負わなアカンねん!」って泣きますよね。のちに親の人生も背負うことになるのに。周りに聞いたら、やってる人が多かった。和菓子屋さんで餅を予約注文して、鏡餅を作ってもらうそうな。

「ウチやったよ」

「どうですか?」

「親は喜んでたよ。和菓子屋さんで作ってくれるから、手間もかからんし」

「マジっすか、ウチもやろうかな」

 って感じで、やり方聞いて、その場で自宅近所の和菓子屋を検索したら、鏡餅、やってました。

 うちは長女の成人の祝いで、一升餅背負わせようか。

 いや、やっぱり、やめとくか。一生食べれるようになってほしい気持ちもあるけど、それより親の人生を背負ってほしい。両親2人分の重さの何かを背負ってもらおうか、でも100kg超えるな、無理やなー。

 成人したときには、何か背負わせたいなー。あ、両親背負うのにひっかけて、“両棒”!

 一升分の鏡餅ではなく、棒が2本刺さった一升分の「ジャンボじゃんぼ餅」を背負ってもらおう。

 右肩と左肩から棒が見えてて、武器背負った『デッドプール』みたいになる長女。背中には、砂糖醤油がだら〜っと垂れてくる。

「熱い熱いよ!」

「ちょい待ち! パパとママが食べるから!」

 長女は言うでしょう。

「何このお祝い!」

 ごもっともです。