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呪怨の舞台が終わりました

 

 呪怨の舞台が終わりました。来ていただいた方、ありがとうございました。

 さて、今回の舞台はすごく勉強になりました。僕が今までやってきた舞台って、お笑いの『よゐこライヴ』が一番多くて、あとは単発のイベントばっかり。何度も練習して、本番でも何公演もやって練り上げるっていうのは、やってこなかったですね。

 以前、とりあえずライヴの台本覚えたしええやろ、と思って立ち稽古(実際に立って動きながら立ち位置を決める段階)をサボってたら、作家の鈴木おさむから、

「1週間前ですよ! 立って稽古してください!」

 って言われてても、

「まあええやろ」

 って、やらずにゲーム三昧。それで3日前にようやく立ってみたら、

「え、そっちに立ってんの? こっちやと思ってた」

 よゐこって2人しかいないのに、立ち位置の齟齬が台本まるまる2時間分あるので、その誤差修正で1日使っちゃう。ちゃんと立って稽古したのは2日だけで、結局、立ち位置まで覚え切れずに本番。広い舞台なのに椅子から立つか座るかだけの、動きが極端に少ない舞台になった。後から「大きな舞台は大きく使ってください!」って怒られた。それくらい、立ち稽古って大事なんです。

 

 

 

 さて、『呪怨』の舞台の場合。

 自分の好きにやれるよゐこライヴとは違って、脚本家の先生が書いてくれた台本から、演出家が効果音・小道具・セットなど全て発注してあって、リハーサルの段階ですでに全部揃ってる。なので、こちらの仕事は演出家の想像通りに動く、それだけ。その“それだけ”がすごく難しいと知りました。

 顔合わせの日が、初本読みの日でした。演者はほぼ全員揃ってます。ロの字に囲われたテーブルで座ったまま本読みスタート。この段階では、ただ読むだけでいい。覚えてこなくてもいい。だって、手に持った台本には全て書かれてます。僕は霊感のない不動産屋の役だったので、物件の鍵を取り出す、扉を開ける、誰を見て話す――そんなト書きを目で追いながら、初日は終了。

 ホラーのはずやのに僕のセリフでみんなが笑ってたので、緊張感を壊してしまってるんじゃないかと思い、言い方か言い回しの変更をしてもらったほうがいいかもと、演出家に聞いてみた。

「僕どうしたらいいですか?」

「有野さんは霊感がない役なので、飄々としてて大丈夫です」

「あのセリフみんな笑っちゃうと思うんですけど?」

「ウケていいですよ。ホラーですけど、初めから最後までずーっと怖いってことないじゃないですか。有野さんのところで緩和させたいんです!」

「なるほど!」

 と、この日は一安心。

 でも、それから始まる稽古が大変でした。演劇の稽古は初めてです。12時稽古開始、19時終了予定、それが3週間続く。

 行ってビックリ、弁当がない! それに休憩は1時間ごとに短いのが1回。演出はずーっと演出してるし、合間の休憩ではスタッフと段取りやらを相談してる。

 36年間バラエティで甘やかされすぎた! お稽古って弁当ないんや!

 劇場の本番ならば、入場料やらでお金が発生してるからお弁当が出る。稽古は稽古なので弁当なんぞは出ない、ということらしい。なるほど!

 そんなことを家で話すと、「おにぎり作ろうか」と、妻。稽古期間ずーっとおにぎりを作ってくれました。自分の食い扶持が固まると、みんなは何食べてんの? と気になりだす。僕の妹役の蘭乃はなちゃんは、ラップで包んだおにぎりを持参。スタッフも軽食を持ち込んで食べてる。チキンバーの人、ミニ冷やし中華、おにぎり。みんななんか小さめのを2個くらい持ち込んでるみたい。軽食っていうのかな。腹一杯にはしない感じなのか、タイパ目的なのか。

 中には何も持ってきてない人もいるので、差し入れでもしようかと、三鷹の駅で回転焼き買って行ったり、近所で駄菓子のどんどん焼き買ったり……すると、あっという間になくなった。なんや、みんな腹減ってるやん!

 テレビ局だと、楽屋にお菓子を置いてくれてる。僕は食べないけど、後輩は嬉しそうに選んで食べてるし、持って帰ったりもする。全部なくなってると、スタッフは「よっしゃ!」って思うらしい。

 その喜びを僕は差し入れで感じてました。いろんな味のカプリコミニやうまい棒を買っていくと、「何味にしよう!」で盛り上がってくれる。安いけど有り難がられる。稽古の合間に他の仕事もしてるので、そこで翌日の差し入れを選んでみたりね。喜ばれはしたけど、いやいや、それより大事なのは稽古の出来ですよね。

 

 僕は別の仕事との兼ね合いもあって、稽古に参加できたのは3日目からでした。するとビックリ! もうみんな台本なしで稽古してるやん! ヤバい! 出遅れてる! しょうがないので、僕だけ台本持って立ち稽古です。すごく恥ずかしかったです。演出家も困ったやろうな、有野が全然台詞覚えへんって。『呪怨』の本編よりも、有野がセリフ覚えられるかどうかの方が怖かったやろうな。

 家に帰っても、一人で本読みをずーっとやってました。でも、全然覚えられへん。それはそうです。会話なので、相手のセリフも覚えないと、なかなか出てきません。

 結局、次の日からは早めに入って、蘭乃はなさんに、「すみません、合わせてもらっていいですか」「すいません、あそこもう1回お願いします」を毎日やってもらってました。

 宝塚のトップ女優やった人に何度も合わせてもらうやなんて、ありがたい話ですよ。しかも、あつかましいことに、劇場公演が始まっても毎回本番前に全シーン合わせてもらってました。内緒ですよ。

 

 どうやら、この公演数9日間で16公演というのはすごく多い方だそうです。そうなのか、だからこんなにしんどいんや。

 蘭乃さん曰く、

「宝塚でも3日に一回休演日がありますよ」

「へー、そうなんや。僕は今まで6公演が最高なんですけど、蘭乃さんは何回が最高?」

 何気なく聞いたつもりが、蘭乃さんはちょっとだけ気まずそうに、

「宝塚って基本100公演なので」

「え! そんなに?」

「東京でやって、宝塚でやって……合計それくらいになりますね」

 基本が100か……。『よゐこライヴ』の6公演でブーブー言うてたのが情けなく思えてきた。今回の最年長、劇団四季所属の鈴木周さんにもこれまでの最高公演数を聞いてみたら、

「う〜ん、何回だっけな。297回だったかな、300はいかなかったんですよ」

 すげー四季! 丸一年やるのか、だから、劇団四季なのか?

「病気とかなったらどうするんですか?」

「劇団四季って班がいくつかあるので、別の班から人借りたりですね」

 やろうと思えば、『よゐこライヴ』も100公演くらいできたんかな……いや無理。代役立てられへんし! この9日間のために、他の仕事をズラして、それでもこんなに忙しかったし!

 さて、この原稿を書いてるあいだに晩ご飯のリゾットを作ってもらってたら、なにやら妻が騒いでる。

「お米がない!」

「――あ、ごめん。パパが毎日おにぎり作ってもらってたから」

 ってことで、今からお米買ってきます! 父親の代役も立てられへんからね。