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長と大和とネバリスター

 

 忘れられない味ってありますか。

 僕の場合、住んでた場所と味の記憶が結びついてます。

 

 1995年、僕が東京に出て一人暮らしを始めるにあたって、どこに住もうかと考えてた頃。当時、『UN FACTORY カボスケ』という番組に出してもらってて、ウッチャンナンチャンのお二人にも毎週会ってたので、「どこが良いですかね?」と南原さんに聞いたら、「多少我慢してでも、思ってるより1~2万は多く払わないと理想の部屋には会えないよ」と言ってもらい、6万で考えてたところ、7万8千円で1Kのマンションを見つけました。運命を感じてすぐに決めたはいいものの、いざ暮らし始めてみると、桜新町という都心から少し離れたところだったのが、どこに行くにも遠かったです。

 で、2回目の引っ越しです。せっかく東京に来たならばと、今度は渋谷から1駅あたりにある三宿に決めました。飲み屋が多い街です。当時は、ご飯食べに行って、2軒目は三宿にしよかって流れが多かった。「家は桜新町です」って言うと、「遠いわ」と誘ってもらえなかったのが、引っ越してビックリ!

「有野? 今、三宿にいるんだけど来る?」って誘いが毎週来てました。そこから少し交友関係が増えて、お酒も覚えました。誘ってもらえるのは嬉しいんですけど、あまりに飲み会が増えた反動で、次は桜新町よりもさらに1駅遠い用賀に引っ越してしまいました。

 

 

 とはいえ、一番思い出に残っている街は、やっぱり三宿です。

 変わった店もあって、すごく楽しかったです。店長が矢沢永吉さんのファンだそうで、店内の歌はずーっと永ちゃん、ポスターも永ちゃん、店長の髪型までリーゼントで、行くと誰かしら芸能人がいるような店。ただ、そういう店って、華やかすぎてしんどいんです。

 静かなご飯屋さんはないかなって思ってたところ、ありました。「うさぎ」って名前のお好み焼き屋。もう閉店してて、ネットで検索しても引っかかりません。20年以上前に閉店してたのかな。それまで、関西出身の僕としては、お店でお好み焼きを食べるなら、定番はお味噌汁、ごはん、漬物、お好み焼きの定食やと思ってたんですが、うさぎは違いました。いきなり鉄板焼きから出してくれるんです。しかも焼いてくれるし。野菜炒め、とろろ焼き、肉、最後にお好み焼きっていうコース料理みたいな構成。それを、お酒飲みながらゆっくり食べるのが好きでした。

 カウンターがコの字に8席くらい、2人用のテーブル席が2セット、12人でいっぱいの店。このお店のとろろ焼きが美味しかった。お店で「どうやって作るんですか?」って聞いたのもここが初めて。

「簡単やで。すりおろした大和芋に卵黄に青のりを入れて混ぜて焼くだけやで」

 三宿に住んでた頃は作らんかったのに、用賀に引っ越してから、そのレシピを思い出して、作るようになった。でも、なんかベシャベシャして美味しくないから、また店に行って聞いてみる。

「あ〜、長芋で作ったんちゃう。大和芋っていう、もっと粘っこい大和芋でやってみて」

 と教わって作ってみたら、これまでと全然違う! うさぎのとろろ焼きやん! 青のり多めが美味しいなー。そんでまた店の人にも報告しに行ったら、喜んでくれた。

 でもね僕、長芋の方が好きなんですよ。大和芋より粘りも少なくって、生で食べた時のあっさりしててサクサクな食感が好きなんです。焼いたのも好き。鉄板で焼いた長芋をひっくり返そうとしたとき、へばりついてるのも可愛い。へばりついてる長芋の下からヘラを押し込んだら、ぺこんって跳ね上がる感じも可愛い。でも、とろろ焼きには大和芋が合いました。同じ山芋やのにね。

 山芋にもいろんな種類があると知ったのは、この時でした。

 

 皆さんはご存知ですか? 山芋、長芋、大和芋の違い。

 山でロケやるとだいたいお蕎麦屋さんがあって、山菜かとろろを推してます。なんでやろ? 気になったので、ロケの合間にお蕎麦屋さんの人に聞いたことあるんです。

「ここに来るお客さんは山を越えないといけないから、山芋食べてスタミナつけて登って欲しい。それに、山芋も山菜も、そこらでたくさん獲れるでしょ」

 とのことでした。

 昔、学校でも「山で取れるのは山芋やで」って習いました。ネットがない頃に聞いた話なので、さっき調べてビックリ! 合ってました(合ってんのかい)。

 山芋とは、ヤマノイモ科全般の総称。ほな全部やん。長芋も大和芋も自然薯も含まれるやん。ただ、ジャガイモとかが入らへんみたい。あと、サツマイモも里芋も。

 山芋って生ですりおろしたり、細く切って梅干しとかで食べられる。でも、ジャガイモをそうやって食べようと思っても無理やん。調べてみると、どうやら消化酵素のアミラーゼやジアスターゼを多く含んでるからやねんて。同じ芋やのにね。

 で、最近見つけたのが、ネバリスター。これ、すごいんです。2008年に登録された山芋の新種だそうですが、大和芋みたいな粘りで、お好み焼きに入れても美味しい。

 大和芋は形がいびつですりおろしにくい、でもネバリスターは長芋型ですりおろしやすい。しかも、このネバリスターは、まだあんまり知られてない品種。手に入りにくいってこともないのが嬉しい。名前も良いよね。映画のタイトルになりそう。

『ネバリスター 新たなる作戦』

『新ネバリスター 帰ってきたカユミ』

 楽しいねぇ。

 ネバリスターを知ってから、また、あの三宿のとろろ焼きを思い出しました。今なら、昔より料理のいろはも知ってるし、もっとうまく再現できるはず。ということで、作ってみました。すると確かに、粘り気がある。かなり近い。美味しい! でも、なんか違う。

 うさぎの味を再現するなら、やっぱり大和芋やな。お店は閉店して、もう食べられへんけど、ウチではまだうさぎのとろろ焼きが食べられる。