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たまこんにゃくと肝試し

 

 こんにゃく、40代に突入してから美味しさが分かりました。

 今50代の人にとっては、こんにゃくといえば「子どもの頃に煮物に入っていたもの」。煮物も美味しいけど、今も昔も子どもはやっぱりハンバーグが食べたい、肉食べたいって考えるので、食べたいものランキングではベスト3には入らへんと思う。こんにゃく作ってる方、すみません。今はおいしさも身体にいいのも知ってるし、大好きなんですよ。

 僕がこんにゃくを好きなところって、調理で乾煎からいりするところです。そこ? でしょ。以前、こんにゃくを調理しているとき、妻から教わりました。

「乾煎りした?」

「何それ?」

「油引かずに炒めて水分飛ばすと、味が染み込みやすいの」

「へ~」

 そんなことも知らない僕。

 それから好きな食材にこんにゃくが加わりました。この乾煎りっていう一手間が好きです。カレーで言うと、常温の油から香辛料にゆっくり火を入れていくところとか、テンパリングとか、そんなのが好きなんです。え、そこからやるの? というのがプロっぽいねって感じ。

 するとスーパーに行ってもこんにゃく売り場を見るようになりました。そこで分かったんですが、こんにゃくも種類が増えましたよね。板こんにゃくの大きさもバリエーションが増えて、小さいこんにゃくも売られるようになった。糸こんにゃくも、結んである糸こんにゃくも発売されて、アク抜き不要のも出て、独特の臭みもなくなってきたし、どんどん手軽になって、子供にも食べやすくなったのかな。あと、地方のこんにゃくがどこでも手に入るようになったのもうれしい! 山形の玉こんにゃくも、近所のスーパーで知りました。とりのポン酢煮に入れると美味しい。

 刺身こんにゃくも、初めて見たときはビックリした! 

「緑色のこんにゃくってなによ、刺身?」

「薄すぎひん?」

「酢味噌で食べる?」

「何それ?」

「あ、美味い!」

 美味しさ知ってからはお店であったら注文するようになった。

 広島県の子持ちこんにゃくにも驚いた。いくら載っけてるのかなとか思ってたら、ししゃもの卵が練り込まれてる。僕が食べたんは少し焼いて焦げ目がついてるところに、マヨ七味つけるやつ。弾力にプラスして、噛むと子持ちのプチプチ感が楽しい。こんにゃくの中にも知らんもんいっぱいあるな~って思わされた1品でした。

 

 

 これくらい今ではこんにゃく好きですが、まだまだその魅力に気づく前の、子供の頃。

 小学生のときに読んだ漫画では、肝試しで使う小道具として出てきました。釣り竿にこんにゃくぶら下げて、ほっぺたにくっつけて「ひゃあ!」って言わせるやつ。肝試しをしたことがないので、「そんなんで驚くもんかな?」って半信半疑になりながらも、一回は体験してみたいと思ってました。

 で、小学校の高学年くらいで友達同士で遊園地に行ったとき、お化け屋敷があったんです。乗るタイプのじゃなく、自分で暗い屋敷の中を歩いていくタイプのやつ。僕は何歳になってもこっちの歩く方が好きです。怖くて立ち止まっちゃいそうになるけど、自分で進まないと終われないでしょ。その感じがRPGみたいで、進む自分が格好いいって思える。

 ただ、当時の僕はませてたので「結局人が作ったもんやろ?」と余裕ぶりつつ、もしかしたらあの漫画で読んだ釣り竿こんにゃくを体験できるかも、とわくわくしてました。

 中に入ると、係の人が言います。

「最後のところにボタンがあるので、押してみて下さいね」

 何それ? ゲームみたいやな。ボタン押して退治するんかな。変な話やなって思いながら進む。でも、一緒に入った友達2人はすでに怖がってます。僕の腕を、痛いくらいに掴んで、

「アリシン離れんといてや!」

 僕のあだ名は高校生までアリシンでした。仕方がないので、僕が先頭を歩きます。

 どこでこんにゃく来るんやろと、期待しながら、暗い通路を歩きます。天井からは人形が逆さにぶら下がってたり、胴をノコギリで切られてるのがあったり、なかなか凝ってるやん。先のほうからは不自然に「きゃー」って声が聞こえてくる。悲鳴がスピーカーから流れてるのは怖くないねんな。などと思いつつ、ビビリの2人を連れて僕の勇者パーティは進みます。

 すると突然、進路に垂らされたカーテンみたいな布が現れて、視界を遮ります。それをかき分けて先に進んだとき、

「うわ!!!」

 大声が出てしまいました。床がクッションの安全マットになってました。床がやらかいだけで、なんか踏んだって感覚でこんなにびっくりするもんかって驚きと、お化け屋敷やるやんけ! って思いが半分半分。僕のパーティ2人も「うわ!」って同じリアクションでした。

「マットやんけ! ビビったー」

 ビビる、これはビックリしたって意味です。さらにびっくりした場合は「バビった!」って言ってました。ただし今は54歳なので使いません。

 いよいよ出口が近い予感。これが最後の難関か、確かにこう書いてあります。

「ボタンを押して下さい」

 今で言うところの、クレーンゲームみたいな透明アクリル板があり、下にボタンが一つだけポツンとついてる。アクリル板の中は真っ暗。今までは、牢屋やら、洞穴やら、舞台の設定があったのに、ここは真四角の何もない部屋。さて、このボタン誰が押す?

「アリシン押してくれ! 怖い!」

 2人のなかでは僕に決まってるみたい。でも、怖い。よし! 覚悟を決めて押そうとすると、

「ちょっと待って! アカンめっちゃ怖い。向こう向いててええか」

「あかんやろ、ちゃんと見ろや。ほな押すで」

 押した途端にアクリル板の中の明かりがついて、血まみれの生首が一瞬見えました。3人とも揃って、

「ぎゃー!」

 ボタンから離れてひっくり返りました。部屋の隅まで退がります。

「なんかおった!」

「めっちゃ怖い!」

「なんや? 顔やったな! 血まみれのおばはんやったな」

「おっさんやろ」

 もう一回、押します。

「おっさんやん」

「バビった〜」

 どっちでもええけど。笑っちゃいます。一瞬だけ光ったのは、僕が驚いてボタンからすぐに手を離したからでした。押しっぱなしで明るくして見ると、全然怖くない。

 何回も押して離してしてると、あんだけビビってた友達も、

「やらして」

 押して離して。

「全然怖ないやん」

「なんやこれ」

 喉元過ぎれば熱さを忘れるというやつでしょうか。

「全然怖ないやんけ」

「お前腰抜かしてたやんけ」

「抜けてへんし!」

「次、北極の世界行こうや」

 というわけで、今度は何も怖くない、ただマイナス30度の寒いだけのアトラクションへ行きました。楽しかったです。

 結局、こんにゃくは出てきませんでしたが、こんにゃくみたいな安全マットが怖かったです。

 

 そのまま、肝試しでこんにゃくを体験しないまま大人になりました。今はいろんな種類のこんにゃくが売ってるし、あの漫画で読んだ板状のこんにゃくよりも怖いものがあるかもしれません。

 ただ、子持ちこんにゃくを肝試しに使っても、

「ひゃあ、プチプチ!」

 怖くない。

 たまこんにゃくを使っても、

「ひゃあ! 肉球?」

 なるほど、ご当地こんにゃくは肝試しには向かへんな。

 こんなのを考えたところで、もうこの歳で肝試しせえへんけどね。

 ともあれ、こんにゃくって美味しくなったなぁって話でした。