カブと柿のマリネ
先日、家族で外食しました。
そこで出た副菜は、初めて食べた味でした。
カブの酢漬けに、熟して柔らかい柿を合わせたものが2個ずつ入ってる。斜めに切られたカブと、同じ角度に切られた柿が合わさって、ちょうど平らになる。パズルのピースがぴったりハマったみたいで、すごい気持ちいい!
まさに“株が上がる”!
ん? そういえばこの言葉、何か違和感があるな。株が上がるって何? 普段はそうではない人が良いことした感じか。クラスの目立たない人が運動会で1位取るみたいな感じ……いや、違うな。クラスの目立たない人が運動会で1位取ったことによって、そのクラスが逆転勝利した感じか。それは株が上がるな。

さて、僕は? 僕の株は上がってんの?
ご存知、CSフジテレビONEのご長寿番組『ゲームセンターCX』の有野課長としては、上がったと思う。だから、番組のイベントにもお客さんがたくさん来てくれるんやろう。上がってるから、観てみたいと思ってもらえる。面白くて、楽しくて、課長がゲームをクリアするかどうかで盛り上がるのが確実やから。
もっと言うと、番組のイベントやのに僕が忙しくて参加できないスタンプラリーとかをやっても、やっぱりお客さんは来てくれる。僕の株が上がったっていうより、番組全体の株が上がったって感じか。この株は安心できる、信頼できると思ってもらえてるんかな?
あー、そうか。株が上がったから、この番組も継続されてるのか。
でも、逆に局内や番組内での株が上がらへんかったら、僕が降板することになるか、自分がメインの冠番組ならば番組終了やわな。いずれにしても、ずーっと続くわけではない。過去には「当初の目的は達成された」って円満に終了する番組もあった。でも、大多数は志半ばで、世間の株が上がらず、終了する。
世間がその目標に興味がなかったってことなのかな。株を上げるっていうのは、まず興味を持ってもらったうえで、大逆転のような平均以上の結果を出せて、そこで初めて評価が上がるってこと。つまりは、結果がすべての厳しい世界。
では、僕が他人の株を上げることはあるのか?
実はあるんです。誰にも言うてないけど、こっそり上げてるんです。
「有野さん! ○○ってスタッフと一緒に番組やってるでしょ。今、別の現場で、彼と一緒にやってるんですよ」
って、制作スタッフに言われたことがあります。
こういうとき、「ああ、そうなんですか」と素っ気なく返して終わっても良いし、「制作とタレントは距離があるしな」とスタッフも気にしないと思います。
でも僕の場合、それが知ってるスタッフだった場合、「彼、どうですか?」と、聞いてみます。
「優秀ですね」と、お世辞なのかそう返してくれます。ここで終わらず、さらに具体的に聞きます。
「どんなところがですかね?」
すると、
「編集の直しがいらなかったんですよ」
とか具体的に言うてくれます。
「でしょ」
と、自慢げになる僕。
知ってるスタッフが、別の現場でも活躍してるっていうのは素直に嬉しいもんです。若手時代ならば、悪口言って盛り上げて、後日「やめてくださいよ!」って本人から言われるのを待ってたりしたけど。
最近では、こんな感じで、彼と仕事した時の話やら、仕事の向き不向きの話をしたり、ちょっと損してるなーって思うような些細な発言を指摘したりもします。スタッフからは「分かりました、気をつけますね」なんて言われます。
で、後日、話題に上がった本人にも「あの人が褒めてはったたで」と教えます。
「なんて言うてくれてましたか?」
「柔軟剤が良い匂いがして良いって」
「なんすかそれ!」
と、細かくは言いません。日によって、ちゃんと教えたりもするかな。
逆に「○○さんってスタッフと一緒にやってますよね、今一緒にやってるんですよ」って、タレント側に言われることがあります。そういう時は、
「どう? あいつ、タレントと距離置いてるやろ」
そんで、本人に言うと嫌がるエピソードやらを吹き込みます。
「それ言ってみます!」
そうすると、次に会ったときに話が盛り上がる。タレントとスタッフが少し近づけるきっかけになれば良いなと。全部が全部いい方向になるかは知らないけど、スタッフの株が上がったらええなーと思って、やります。
ほっといたらええのに、なんでそんなことするの? と思われるでしょう。でも、それで僕はスタッフにはよく見てるなと思ってもらえるし、○○にはお礼を言われる。結果、僕の株が2箇所で上がるんです。
嫌な考え方でしょ。ここでだけ書いておきます。
さて、僕の株、家族の中ではどうでしょう?
妻の妊娠期間中は、それはそれはひどい男でした。つわりでしんどいのに、
「お腹減った、スーパー行こう」
って、妻を連れて行った時のこと。妻が鮮魚コーナーの匂いで気分が悪くなりながらも頑張って買い物済ませたら、僕がいなくなってて、どこ行ったんだろう? って振り返ったら、レジの先のガチャガチャコーナーでガチャやってたそうな。
「あの時の怒りは一生忘れない」
と、今も言われます。株はどんどん下がってたことでしょう。
僕の株が上がってたとしたら、長女が生まれた頃かなと、自分で思い返します。当時の妻は、家にいたいけど、買い物で出ないといけない。授乳でクタクタでご飯も食べられない。そんな話を聞いてたので、僕がお弁当を作って仕事に行ってた時期もありました。
元気出してほしいから、何がいいかと一生懸命考えて、作ってたのは肉ものとご飯(簡単なウインナーとおにぎりとかでしたけど)。ところが、ある日言われました。
「作ってくれるのはありがたいんだけど、脂ものは乳腺が詰まっちゃうんだ」
「なるほど! ごめん!」
母乳の出が悪くなるのも知らなかった僕。あら? もしかして結局、株は上がってないのかな。
妻に聞いてみました。俺の株が上がったのっていつ頃?
「長女が幼稚園の頃かな〜」
なんで?
「幼稚園にほぼ毎日、送り迎えをやってくれてた」
そこ?
「そこで最初は誰とも話さないで、さっと帰ってきてたから、『なんで他のママと話さないの?』って聞いたら、『なんか仕事の話とか聞かれても嫌やし』って面倒くさそうに言ってたんだけど、『誰もそんなの聞かないよ、長女のパパとして接してくれるよ』って説得したら、他のママとも話してくれるようになった。そこから学校行事にも参加してくれるようになったところかな」
なるほど! 一発でガンって上がるもんじゃなくって、じわりじわりと上がったのね。株の上げ方も色々あるなー。
この連載も、もうちょっと僕の株が上がるようなことばっかり書いていこうと思いました。
