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僕の好きなコールスローとボディブロー

 

 新年あけてだいぶ経ちますが、遅ればせながら今年もよろしくお願いします。

 今年はね、ネットニュースになるような連載にしたいです。ということで、実はみなさんにお伝えしていなかったことがあります。

 僕、ポテトサラダよりも、コールスローサラダの方が好きなんです。お店にあったら必ず頼みます。

「どっちゃでもええ」って声が聞こえそうですが、この事実がネットニュースになりますように。

 

 

 そんなコールスローですが、実は作り方が面倒なんです。料理をしない人からしたら、キャベツ切ってマヨネーズで和えたら完成だと思ってるかもしれませんが、それやとキャベツがシャキシャキすぎるんです。なので、お塩振って、水気を切ってしんなりさせてから、マヨネーズと和えます。それでもキャベツの水気は残るので、自分で作るときは市販のマヨネーズに塩胡椒お酢多めです。甘いのが好きならばすし酢で和えるのも良いでしょう。

 

 そんなコールスローとの出会いは、高校生のときに初めて行ったケンタッキーでした。

 え、高校生で初めて!? って思いましたか?

 そうなんです。僕の地元ではファストフードってドムドムバーガーしかなくって、中学生なので繁華街には行けないし、ネットもないのでケンタッキーも知りませんでした。

 ……いや、知らない、は嘘です。コマーシャルで知ってはいるけど、テレビの世界の話やと思ってました。「東京で食べれるもん」って感じかな。今の若い子には想像できないかもしれませんけど、ネット環境がない中学生って、それくらい閉鎖空間でしたよ。マクドナルドは梅田にあるって知ってたけど、そこまで食べに行くお小遣いがあったら、駄菓子屋でたくさん食べてゲームがしたかった。

 そんな中学時代を終えて、高校に上がって電車通学となります。バイトも始めて、友達と一緒に繁華街のケンタッキーに初めて行きました。セットを頼むと、ついてきたのがコールスローサラダ。耳慣れない言葉が気になりました。

「コールスローって何? お芋で作ったらポテトサラダ。トマトが多かったらトマトサラダやろ。ほなこれはキャベツで作ってるキャベツサラダや。なんでコールスローって言うのん?」って同級生に聞くと、

「そんなん知らん! それよりチキンの衣がうまいわー。ご飯ないかな」

 そんな環境です。その頃はスマホも検索エンジンもないし、友達はみんな肉のうまさに感動してました。でも僕は、初めて食べたコールスローのキャベツのしなしなっぷりに、衝撃を受けたんです。

 

 でも今考えると、トンカツ屋さんからしたらこのキャベツの使い方って嫌やろうなって思うんです。

 本来なら、キャベツの千切りは水につけてシャキシャキにしたのを、トンカツと合わせて食べてほしいやろう。なのに、わざわざシャキッと感をなくしてしんなりさせて、コールスローってけったいな名前に変えられる。

「キャベツの良さがなくなるじゃねぇか!」

 って、トンカツ屋の大将は我慢できひんと思う。でも、農家さんからしたら、

「どっちゃでもええです」

 って言うやろうなー。キャベツに聞いても、

「どっちでも良くない?」

 でしょう。

 自分にはこだわりがあるけど、他人からしたら、「どっちでも良くない?」。

 それが、よゐこのテレビの出方でもあります。

 

 よゐこって、どんなイメージですか?

 どこで僕らを知ったのかによって、イメージも変わってくると思うんです。

 最近やと、ゲームを楽しくやる2人。

 10年前やと、無人島でサバイバルする2人。

 20年前やと、めちゃイケ、ウリナリの端っこにいる2人。

 30年前やと、シュールなコントの2人なんです。

 そんな昔のこと、知らないでしょ。この連載では何度か書いてますが、デビューから10年間はシュール芸人。人の言うことに笑わず、自分の言いたいことだけ言う僕。共演者からは「どうすりゃいいか分かんねぇよ!」って、しょっちゅう言われてました。なんやこの状況は?

 そんな違和感が続いてて、仕事はあるけど、「よゐこといえば」というような必殺技がなかった。

 20代後半、濱口が『黄金伝説』の「一週間でせんべい1000枚を食べきる男」に参加しだして、シュール芸人が今度は体を張るようになった。その後は「1ヶ月1万円節約生活」にも参加、その手伝いで僕が呼ばれて、そのうち「無人島で2泊3日0円生活」シリーズができた。

 そんな時期に、初期のよゐこ担当マネージャーに久しぶりに会って、1990年代の上京したての頃の昔話をしてたら、ふと彼が、

「無人島、面白かったわ。良かったなぁ、代表作できて。俺が担当やったら、あの仕事受けてへんで。良かったなぁ」

「何でですか?」って聞くと、

「よゐこには、シュールでスタイリッシュなコント師になってほしかったからな。俺が思い描いたよゐこの理想の売れ方ではないねん。だから、今こうやって売れてるのは、俺が松竹芸能辞めたおかげかもな。良かったな」

 と、嬉しそうに笑ってた。

 僕にとっては辞めて欲しくなかったマネージャーやったので、それを聞いて色んな思いがこみ上げて、泣きそうになりました(泣いてないよ)。

 第5回でも書きましたが、笑福亭鶴瓶さんに言われた話を、やっぱりここでも思い出してました。

「よゐこ、シュールもええけどベタも大事やで」

 若い頃は尖ってたので、ベタは鶴瓶さんがやったらええがな、っていうのがよゐこの考えでした。でも、それは間違いでした。

 この鶴瓶さんからの助言には、実は続きがあります。

「よゐこ、芸能界に必殺技はない。大事なのはボディーブローやで」

 それは鶴瓶さんも持ってないからやん、必殺技は欲しいに決まってるやん、って失礼なことを考えてました。

 確かに、必殺技を手に入れてしまったら、そればっかり求められて一発屋と言われるやつになるのかもしれません。その一方で、芸能人としては、やっぱり、みんなが知ってる必殺技が欲しい。でも、その作り方が分からない。

 確かに、「無人島」は代表作と言われてるし、「ゲームセンターCX」の有野課長として海外のメディアから取材されたりもする。僕が気づいてないだけで、もしかしたら代表作のことを必殺技というのかな。いまだによく分かってないんです。

 35年やって、シュールとはまた違う必殺技がないか、今も探してる最中です。芸能界では「シャキシャキキャベツも良いけど、しんなりしたキャベツが好き」っていうささやかなこだわりは我慢して、ベタなボディブローを利かせてます。これ読んでる人からしたら、「どっちでも良くない?」でしょうか。

 

 こんな感じで、今年もよろしくお願いします。m(_ _)m