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遅刻は呪いのせいかもしれません

 

 この間、大遅刻をしました。

「9月4日から始まる舞台『呪怨』の初顔合わせが、明日の13時からです。10分前には入ってください」と、マネージャーから連絡があった。何度もカーナビでルートを調べて、約40分くらいかかると確認。昼の12時台は混んでるので10分、駐車場が近隣にないかもしれないのでさらに10分足して、1時間あれば大丈夫かという目算で、当日出発。

 すると大通りに出てビックリ、大渋滞でした。ナビの到着予定時刻は、13時6分。アカンやん――その時、身動きの取れない車の中で、走馬灯みたいに若い頃の失敗を思い出しました。

 

 

 確か、22歳くらいの頃かな。遅刻が原因で当時の東京担当のマネージャーから叱られたんです。しかも、一番嫌なタイミング、一番嫌な場所で。

 銀座小劇場で行われた『よゐこの単独ライヴ』の本番前の楽屋でした。想像できますかね? 収容人数100人くらいの劇場で、開場したら外には出られないような狭いところです。なので開演まで楽屋でネタ合わせしようとしてたら、突然その東京担当マネージャーがやって来て、

「お前ら最近遅刻が多いそうやな」

 ガシャンとパイプ椅子を引き、腰を据えて話し始めるマネージャー。

「俺が取ってきた仕事を舐めてんのか。仕事っていうのはな――」

 緊張で、じっとりと脂汗が出ます。どう相槌打ったらいいのか分からんまま聞いてると、今度は部屋の外からスタッフの声。

〈開演10分前でーす〉

「芸人が遅刻したら、取り返さなあかん。その分、お前らは爆笑を取れるのか? ハードルは上がるぞ。先輩は笑ってくれへんぞ」

 あまりにも気まずくて、細かいことはもう覚えてないけど、〈開演5分前でーす〉の声に重なるように、マネージャーが「ほな、頑張って」と楽屋を出て行ったのは覚えてます。

 舞台が無事終わった後の食事では、

「お前ら、怒られて本番入るくらいがおもろなるな」

 と言ってくれました。

 今も他社で現役のマネージャーです。

 

 そのマネージャーは、若かった僕らにとっては怖い人でしたが、東京の仕事をたくさんとってきてくれました。東京での波に乗れたのは、この人のおかげやと思ってます。ただ、他にもしょっちゅう怒られた。

「こないだの番組、あれは面白かったわ。でも、コレとコレとコレ、全然しゃべってへんかったな」

 褒めが20、叱りが80みたいな感じ。毎回美味しいもん食べに連れて行ってくれるけど、味がほとんどしない回が多かったな。

 さて、遅刻ですが、コンビ2人が遅刻すると本当にまずいので、だいたい僕が時間通りに入ります。そこに相方が遅れてくると、なぜかちゃんと来てる僕が怒られるんです。これが芸能界の理不尽。

「相方にちゃんと言うとけよ」

「はい、すんませんでした」

 こんなんばっかりでした。

 では、僕に遅刻がないのかっていうと、たくさんあります。僕の場合は「遅れる」っていうよりも「忘れる」なんです。昔はスケジュールを紙で2週間分もらってたんですが、近い仕事は口頭で言われます。

「明後日、ナイナイさんのオールナイトニッポンが深夜1時入りです」

「はいはい」

 そこから2日も休みがあると忘れます。

 そして、夜中にゲームしてると電話がかかってくる。持ち上げてみると発信元がマネージャー。なんや? こんな時間に失礼な……と、取らずにゲームを続ける。なんかあったら留守電入れるやろ。

 すると1時間後、家の電話が鳴る。出ない。留守電が入る。

「有野さんの自宅の電話でしょうか、マネージャーです! 本日、オールナイトニッポンの出演があると伝えていたのですが」

 慌てて電話出る。

「すまん忘れてた!」

 携帯電話を見ると、うわ! こっちもすげー着信入ってる! 留守電も。

 そこからは電話繋いだまま、急いで現場に向かう。

「有野さん! 家出られてますか? あと5分で生放送始まります!」

「有野さん! 生放送始まりました!」

「有野さん、代わりに私が出ることになりそうです! 早く来てください!」

 この電話の後、マネージャーは本当に生放送に出演しました。

 僕としては申し訳なかったけど、少しミーハーやったマネージャーは、まんざらでもない感じでした。

 

 こんな具合に、寝坊とか時間を間違えるとかではなくって、仕事があること自体を忘れるんです。タチが悪いですね。

 次に覚えてる遅刻は、『ゲームセンターCX』の握手会です。一日かけて東名阪でやる予定でした。朝の秋葉原での握手会を無事終えて、それから前日遅かったせいか、握手会が予想以上にしんどかったせいか……車じゃなくて新幹線に乗ったんです。混んでました。僕はグリーン車、他のスタッフ、マネージャーは指定席。名古屋で降りて、ホームで合流する予定が、知らない間に寝てしまってた。知らない間なので、携帯のアラームもかけてません。爆睡。

 名古屋から出発したときに目が覚めた! あ! ここ降りるとこ! 窓からプロデューサーと目が合って、「あ!」って顔してた。

 すぐデッキに行ってマネージャーに電話します。

「ごめん、寝てた。行ってこいで2時間くらいかかる。時間分かったら電話します」

 さて、ここから2時間、どうしようもない。名古屋で握手しようと待ってる人に……あ、京都土産買っていこう。マネージャーに電話して、人数を聞く。結構多いやん、でもしゃあない。箱詰めのお菓子で、個数が多いのを選ぼう――ということで、10個入りのお菓子を10箱以上持って、なんとか名古屋に戻りました。できる男やわー。

 ちなみに、『ゲームセンターCX』のイベントで、前の会場からお土産を買っていくという文化は、ここから始まりました。

 それと、僕はこれ以来、新幹線も飛行機もロケ車も含めて、移動中に寝なくなりました。何かしらの強迫性障害的な何かやと思います。その分、移動中には映画も観られるし、漫画も読めるし、楽しいです。

「移動中、寝ないんですか?」って聞かれたら、この話を細かく全部話してます。

 

 そんな僕が遅刻したんです。もう、ビックリです。

 移動中の車内は寝てないし、というか運転してるし、朝も7時半には起きて、早く出たのに、なんやねんなんやねんなんやねん……って思いながらも、信号で止まったタイミングでマネージャーに到着時間を連絡する。

 結局、5分遅れで到着したけど、今度は駐車場がない。近隣をすごいウロウロして、結局、会場の搬入用みたいな場所に30分だけ停めさせてもらうことになった。

 どうやら会場で別のイベントがあったみたいで、駐車場が満車やったみたい。挨拶が終わって、本読みの前にまた移動。そのあたりでようやく駐車場が空いて、車も駐められました。慌ただしいなか、スタッフから、

「では、挨拶をお願いします」

 と、顔合わせなので演出、スタッフみんなで挨拶。

「次は出演者、生駒里奈さんから」

 生駒ちゃんは挨拶のなかで、演出との向き合い方とか、和やかに教えてくれた。

「次、有野さん、お願いします」

「はい、鈴木達也役の有野です、これから長い稽古、そして本番とお付き合いいただきますが、皆さんに一つだけ。……時間厳守!」

 すると生駒ちゃんから、

「26分遅れたの、有野さんですよ!」

 と怒られた。申し訳ない。でも、生駒ちゃんとは仲良くやれそうです。

 その後の挨拶が「僕は面白いこと言えないんですけど」ってみんなが付け始めた。この流れでの挨拶は怖かったやろうなー。そんなホラーの舞台が始まります。よろしくお願いします。

 まだ、とうもろこしにハマってます。

 

 

『呪怨 THE LIVE -再念-』
ジャパニーズホラーの金字塔『呪怨』が、恐怖の体感型ホラーショーとして再び甦る―
2023年夏、ホラー界の話題を独占し、日本を絶叫の渦に巻き込んだ「呪怨 THE LIVE」が、2026 年 9 月 4 日(金)~13 日(日)までこくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて再演!

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