これは、競馬暗号史における傑作といっていいように思う。

 9月27日(月)、船橋競馬のメインレースとして行われた「キンモクセイスプリント」(ダート良1200m・10頭立て)の結果である。丸で囲った文字にご注目ください。

 着順
 1着 (マ)イクハージュ
 2着 (マ)ッドアイ
 3着 (ノ)ートゥルレーヴ
 4着 (マ)ルボルクシチー
 5着 (ラ)ブリーハッチ
 6着 (ミ)ホスローロリス
 7着 (ガ)ーネットノーム
 8着 プロト(イ)チバンボシ
 9着 (ト)ーケンマコット
 10着 (キ)ャッスルワンダー
※「小説推理」本誌では文字を丸で囲っておりますが、COLORFULでは該当文字に()を付けております

 この、丸で囲った文字を、1着から順につなげて読むと、「ママノマラミガイトキ」という言葉ができる。

 その意味するところは、言うまでもなく、

「ママの魔羅 磨いとき!」

 これしか文字変換のしようがない。

 おそらく、コロナ禍の世相の、次のような1場面をあらわしているのではないだろうか。

 ――店を開いても、ほとんどお客さんが来てくれないから、しばらく店を閉めておこうと思ったママさん(男性)が、家でごろごろ過していると、そこへチーママ(こちらも男性)が、心配して訪ねてくる。

「ママ、ちゃんと食べてる?」

「うん。適当に」

「駄目よ、ぐうたら過ごしてちゃ。お風呂は入ってる?」

「ううん。なんだか、めんどくさくて」

「えっ、お風呂入ってないの? きっと魔羅にカスがたまってるわよ」

「あら、やだ……」

「お風呂入って、ママの魔羅、磨いとき!」

 どう考えても、そういう1場面だよなあ。

 どうして、競馬にこんな暗号が出現したのかというと、「あんなところにカスをためていると、病気のもとになる。そもそも、臭くてしょうがねえだろ。それを心配した競馬の神様が、暗号というかたちでお示しになったんだよ」という説が有力。

 じゃあ、どうして競馬の神様は、その暗号文を、このレースを選んでお示しになったのか。

 それは、レースの名前が、キンモクセイスプリントであるから。

 金木犀きんもくせい→キンモクセイ→“キン”も臭い。

 臭いままじゃしょうがないという心配を神様がなさって、「ママの魔羅、磨いとき!」という説諭をなさったのではないか――という見方が有力。なるほどなあと思う。

 ちなみに、丸で囲った文字が、一一直線ではなく、つなげると“V”の字が刻まれたようになっているのは、あまりにも暗号がうまく出来たので、神様がVサインを出しているから。暗号好きは口を揃えてそう言う。

 競馬には、こういった暗号話、ウラ話といったものがきわめて多く、たとえば、夏の小倉で阿蘇ステークスが行われるころになると、必ず、次の話がしきりに飛びかう。

「阿蘇ステークスが、今度、国際レースになるんだってな」

「そうなのか」

「うん。レース名で、阿蘇国際ステークスに変わるらしい」

「そうなんだなあ」

 もう、お気付きのかたも多いはず。阿蘇国際ステークス→あそこ臭いステークスという、お下劣な駄ジャレ。

 じつは、これと似た話はいくつもあり、アラビア半島の首長国、オマーンにまつわる話もそのひとつ。

「オマーンは、アルファベットのつづりがOMANで、昔は、オマンと発音してたよなあ」

「そうそう」

「あれは、いつからオマーンになったんだ?」

「あれは、オマンに国際空港ができることになって、オマン国際空港はまずいだろうっていうんで、オマーン国際空港に直したんだよ」

「そうなのかなあ」

 オマン国際空港→おまんこくさいくうこう。

 たしかに、まずいよな。

 駅裏に大人のおもちゃ屋があるのだが、そこのショーウィンドーは、商品はあまりに生々しくて陳列できないので、その代わりに、貼り紙が何枚もある。


「恥丘環境を考えよう!
 たれ流しで困っている女性は、ぜひお尋ねください」


 こんなんで、本当に相談に来る人はいるのだろうか。

 この貼り紙の脇には、

「ASK ME お尋ねください」

 と、英文まで添えてある。

 聞いたら、A(安倍)S(菅)K(岸田)の次は、ME(わたし)のものだという意気込みも含んでるんだってさ。やるねえ。



【八百言】夜目遠目 傘にマスクで 美女になり 宝井基格外(川柳家)