流行病で主夫婦が亡くなり、二年前に廃業した門前仲町の蒲団屋・橘屋。遺された幼い子供らのため周囲の商家が見世の処分を手伝ったが、後になって橘屋の遠縁を名乗る者が大昔の借用証文を持ち出し、南町奉行所に訴え出たという。見世仕舞いを手伝った深川の扇屋錦堂の主に呼び出された北町の隠密廻り・裄沢広二郎は、裁きを下す南町の吟味方与力への疑念を打ち明けられる。やがて、この一件が南北両奉行所を揺るがす騒ぎへと発展していく──。書き下ろし痛快時代小説、大人気シリーズ第十二弾!