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 浦幕から連絡があったのは、一週間後の事だった。波風を最小限に留めるべく、タイミングを見計らっていたのだろう。
 彼に会うため、今度は佃島署の駐車場へと、笠門はピーボと共に向かった。
「よう」
 笠門たちが約束の場所に着くと、浦幕はすでにガムを噛みながら待っていた。
「馬場の事件ヤマは解決したようだな」
「その翌日からこっちだよ。まったく世の中、どうなってんだか」
「今に始まった事じゃないだろう。で、何を掴んだ?」
 浦幕の表情が硬く強ばっている事に気づいてはいた。彼の緊張をピーボも察しているようで、何度か不安そうに鼻を笠門にすり寄せてきた。
「大丈夫だ、ピーボ。大丈夫」
 穏やかに語りかけ、ピーボの緊張を解いていく。
「事件捜査と言って、センターの担当だったヤツに口を割らせた。問題の絵を描いたヤツも、描いた絵も突き止めたよ」
「そいつは上首尾だ」
「ただ……どうも得心がいかない」
「おまえの考えはこの際、どうでもいい。掴んだ事をそのまま教えてくれ」
「絵を描いたのは、少年センターに入所していた未成年の男性。氏名まではさすがに判らなかった。だが、恐ろしく絵の上手い男だったそうだ。人物画を好んで、絵画の時間には何枚も描いていた」
「絵を描く時、モデルはいたのか?」
「そんなものいるわけがない。通常は静物や風景を描いていたんだが、その男は一度見た人間の顔は完全に記憶できたらしい。それを鉛筆やらパステルやら水彩やら、その時の気分で絵にする。ある種の天才だったんだな」
「坂内はその男が描いた絵をたまたま見て、逆上した」
 浦幕はうなずく。
「作品は一度、講師の手を経て、教官の許に集められる。物によっては教室に展示される事もあるそうだ。講師が教官に渡すため、その日の作品をまとめて教室から出ようとした時、偶然、散歩中の坂内と行き会った」
「絵はその時、どういう状態だったんだ」
「全部重ねて、両手で持っていたようだ。坂内が見たのは、一番上にあった絵だ」
「そして坂内は教官を突き飛ばし、絵を引き裂いたか……」
「絵を描いた少年は、今回の件には無関係だろう。着目すべきは絵の方だ」
「人物画が得意と言っていたよな。引き裂かれた絵には、誰が描かれていた?」
 浦幕は再びため息をつく。
「そこなんだが……」
「もったいぶらずに早く言え」
きよおさむなんだよ」
 笠門はピーボと顔を見合わせる。
「笠門、おまえ清洲を知らないのか?」
「知らん」
 浦幕は携帯を操作すると、画面を笠門に向けて突きだした。
「いま、大人気のアニメ監督だ。描いた少年の憧れの人だったらしい」
 画面に映っているのは、カッパとキーアを両側に従えた、細面の温厚そうな男だった。

 飯田橋駅から徒歩十分のところに、ゴメスエンターテインメントのビルはあった。二十階建てと他を圧するほどの外観ではないが、その中にはアニメ作品の企画、営業、ライセンス管理などすべての本社機能が集約されているらしい。道を挟んだ向かい側には、リトラという、ゴメスが運営する七階建ての制作スタジオがあり、作画、撮影、脚本会議など、行われているという。
 笠門は、本社ビル一階の来客用待合スペースにいた。広々としたスペースには換気用のファンが回り、三人掛けの椅子が五列、並んでいる。現在、笠門以外に人はおらず、ピーボは天井から吹いてくる空調の風を浴び、気持ち良さそうにしていた。
 アニメ監督の清洲納は四十歳で、現在、リトラスタジオで『カッパとキーア』第四シーズンの制作を行っているらしい。中に入ろうとしたが、機密扱いのものが多いとの理由で、丁重に断られた。作業が一段落するまで、待合で待てと受付にいた女性は微笑みながら、しかし断固とした口調で告げた。
「何が機密だよ。たかがアニメじゃないか」
 ピーボはふいっと首を振り、壁に貼られたゴメス制作の作品群に目をやった。何も判ってないなと笑われたような気分になる。
 確かに、色とりどりのポスターの中には、笠門でも知っている作品が多数あった。子供の頃に見ていたテレビアニメで、今も続いている作品もある。
 それらの中でも『カッパとキーア』の存在感は際だっていた。三年前にテレビ放送が始まって以来、人気はうなぎ登りで、去年には劇場用映画も作られ大ヒットしたとある。テレビシリーズはすべて清洲が総監督を務めており、劇場作品は脚本、監督でクレジットされていた。まさに作品の頭脳、中心と言える存在だ。
 飯田橋に来るまで、ざっとネットで調べてみたが、清洲監督は『カッパとキーア』の番組内に設けられたミニコーナーに自ら出演し、キャラクターやエピソードの解説を行っているという。端整なマスクと穏やかな物腰が子供たちや一緒に見ている親たちの間で評判となり、最近ではテレビ番組や雑誌インタビューの依頼などが、引きも切らないほどだとか。
「たかがアニメ、されどアニメか……」
「よく言われる事なんですよ」
 柔らかな声が背後から聞こえた。戸口に清洲納が立っている。ラフなグレーのパーカーにジーンズ、足にはサンダルをつっかけている。鼻先にかかるほどに伸びた髪を無造作にかき上げながら、黒縁の丸眼鏡の向こうから、黒く、力のある目がこちらを見つめていた。
「偏見という言葉は絶対に使いたくないんですが、アニメ作品はなかなか認めてもらえなくて」
 構えたところのない、素直な物腰と微笑み。それでいて嫌みなところがまったくない。
 大した好感度だ。笠門は思う。こうした人物にありがちな胡散臭さも、彼に限ってはまったく感じられない。本当に「良いヤツ」なのだろう。
 刑事経験はなかったが、警察学校で一通りの訓練は受けたし、ピーボと行動を共にするようになってからは、凶悪な者たちと対峙する機会も増えた。それなりに人を見る目は養われているはずだ。そんな笠門が見ても、清洲の第一印象は「最高」だった。
 鋭い視線を向けられ、清洲は落ち着かない様子で、モジモジしている。
「ああ、すみません、こんな格好で。いま、作業が佳境で、今日も徹夜かなぁなんて……ああ、これも余計なことでした」
 年齢は四十歳とのことだが、見た目は遥かに若いし、言動もどこか子供っぽい。その辺がまた、新たな好感を生むのかもしれない。
「それで、刑事さんがボクに何か……ってその前に、こっちから、きいちゃってもいいですか?」
「どうぞ」
「その犬、何なんです?」
「自分の相棒です。気にしないで下さい」
「無理無理。気になりますよぉ」
 清洲はキラキラと目を光らせながら、ピーボを見つめる。ピーボはすっくと立ち上がり、清洲と目を合わせた。
「金色の毛がかっこいいなぁ」
 清洲は右手をさしだした。ピーボが微かに体を震わせ、ほんの少し後ずさりをした。清洲は構わず手をだし続ける。
 何かを見極めるように、ピーボはなおも清洲を見上げている。そこに見えた表情は、「困惑」だった。
「あれぇ、嫌われちゃったかな」
 笠門はさりげなく、清洲とピーボの間に移動すると、身分証を示した。
「警視庁の笠門巡査部長です。お忙しいところ、お時間を取らせて申し訳ありません」
「いいえ、いいえ」
 清洲はその時点でもう、ピーボの事など忘れてしまったかのようだった。切り替えの速さに、笠門は驚かされる。
「どうも中には入れて貰えないようなので、ここで。どうぞ、お座り下さい」
 清洲は言われた通り、手近の椅子に腰を下ろす。
「最近はいろいろとうるさいんです。スタジオは人の出入りが多いですからね。時々、変な人が来たり、ファンが忍びこもうとしたりね。それに、かっこいいけど、犬は無理なんじゃないかな。精密機器とかいっぱいあるから」
「なるほど。残念だったな、ピーボ」
 笠門は振り返って言った。しかし、ピーボは壁際に立ったまま、まだ清洲を凝視している。その様子が気にかかりつつも、ゆっくりと清洲に向き直った。
「坂内六郎という男をご存じありませんか」
「坂本とか坂田は何人かいるけど、坂内はいないなぁ。何をした人なんですか?」
 質問には答えず、笠門は携帯に坂内の顔写真を表示、画面を清洲に向けた。
「この人なんですが」
 清洲は眉を顰めつつ画面を見つめていたが、やがて首を振った。
「さあ、やっぱり覚えがないなぁ」
 笠門は清洲の顔に目を凝らしていた。しかし、不自然な表情などはまったく見られない。こういう時の頼りはピーボなのだが、なぜか今回は、壁際で固まったまま積極的に動こうとはしてくれない。
 どこか調子が悪いのか? 家に戻ったら、ちゃんと診てやらないと。
「どうかしたんですか? 犬の方ばかり見て」
 清洲に声をかけられ、我に返る。ピーボが気になって、聞き取りに集中できない。
 清洲は無邪気に笑いながら言った。
「犬が好きなんですね」
「いや、別にそういうわけでは」
 今日に限って、ピーボと波長が合わない。いったい何が原因なのか。
「それで……」
 携帯をしまいながら、笠門は何とか気を取り直し、目の前の男に集中する。
「もう一度、よく考えていただけませんか? この男と会った事はない?」
「ごめんなさい。もともと人の顔とか覚えるの得意じゃないんで……。ただ、その人の事は知らないと思うなぁ。さっきもきいたんだけど、何したんです? その人」
「申し訳ない、まだ言えないんです」
「それじゃあ、ちょっと思いだしようがないなぁ」
 待合室のドアが開き、スーツ姿の男が足音も荒く入って来た。
「納、一人で何やってる」
 男は清洲をかばうように、笠門との間に入りこんだ。
「身分証を見せてくれ」
 険しい表情で言う。受付で警察関係者である事は聞いてきたのだろう。
 身分証に目を走らせた男は、ポケットから名刺をだした。そこにはプロデューサー・監督の肩書きと共に、「たな井田いだ彰久あきひさ」とある。
 笠門は名刺を手に乱入者を睨み返した。
「我々はある捜査の事で、清洲さんに話を聞いていただけです」
「私は、清洲の業務全般を管理している者だ。監督を勝手に現場から呼びだしては困る」
「困ると言われましても、こちらは事件捜査に関わる事ですので」
「だからといって……あんたさっき、我々と言ったな。だがあんたは一人で……」
 ようやく壁際にいるピーボに気がついたようだ。大きな体にフサフサの毛。あの勢いで部屋に飛びこんできて、ピーボに気づかなかったとは、よほど慌てていたと言う事か。
「犬……何で、ここに犬が?」
「あいつはピーボ。オレの相棒です」
「相棒って……」
「いずれにしても、用件はすべて終わりました。清洲さん、もう戻られてけっこうです」
 笠門と棚井田のやり取りを、どこかぼんやりとした様子で眺めていた彼は、気怠そうに肩をすくめると、そのまま無言で部屋を出て行った。
 ふとその場の空気が変わったように感じられた。ピーボが壁を離れ、笠門の足元に寄ってきた。
 それを見た棚井田は、露骨に顔を顰める。
「こんな所に犬を連れてくるなんて、どういうつもりだよ」
 悪態をつきながら、大きなくしゃみを三発した。動物の毛などにアレルギーがあるのかもしれない。
「こいつは、失礼しました」
「今後もし、清洲に話を聞くことがあれば、まず、私を通してくれ」
「清洲さんの業務を管理する、とおっしゃっていましたが、具体的にはどういう?」
「あいつは、スケジュール管理とか書類仕事とか、まるでダメでね。だから、オレが面倒を見ているんだ」
「なるほど。マネージャーか秘書のような? しかし、名刺にはプロデューサー、監督とありますが」
 棚井田はギョロっとした目を笠門に向けると、ドアに手をかけながら言った。
「我々は忙しいんだ。これで失礼するよ」
 そのまま入って来た時と同様、足音荒く出て行ってしまった。先に出た清洲に追いつくと、背中を押しながら、エレベーターの方へと向かっていく。
「ちょっと言いすぎたかな」
 ピーボに語りかけると、同意を示すように鼻先を下げる。先までの緊張感は完全に解けていた。
 収穫はゼロ。だが、言葉にできない違和感を、笠門は覚えていた。その場でしばし、正体を探ろうとしてみたが、答えはさっぱり見つからない。
「帰ろうか、ピーボ」
 リードを巻いた手を軽く上げながら問うと、ピーボは同意の意思を示し、顔を上げた。
 だがその顔付きには、いつもの晴れやかさがない。
 いったい何なんだ。ピーボに何があった。
 つかみ所のない不安が、笠門の心にわき上がる。





「それで? 結局、何ともなかったのか?」
 いつもの部屋で、須脇警視正は戸口に座るピーボを見た。作り笑いをして手を振ると、ピーボは大きな耳をパタパタと動かしてみせる。それをやると須脇が喜ぶと判っているからだ。
 あんなヤツに合わせる事ないぜ、といつも耳打ちするのだが、ピーボは止めようとはしない。
 須脇の機嫌が良くなった。
「あまり無理させないように。この件が片付いたら、少し休暇をやってもいいんじゃないか」
「念のため、専門の先生にも診て貰ったんですが、すぐに結論はだせないと言われました」
「判った。ピーボの事はおまえが一番良く判っているはずだ。任せるよ」
「ありがとうございます」
 須脇の表情が曇った。
「そんな中で、どうしてもやるのか?」
「ええ。早い方がいいと思いまして」
「しかし、大丈夫なのか? 随分と手荒いやり方だが」
「正直、結果は予想できません。ただ、今の時点では完全に手詰まりで。坂内の容体は、どうです?」
「落ち着いてはいるらしい。だが、鎮静剤が効いていて、意識ははっきりしないそうだ」
「これが最後のチャンスかもしれません。やらせて下さい」
 須脇の腹はもう決まっているようだった。重々しくうなずくと言った。
「責任は取るから、やれるだけやってみろ」
「感謝します」
 一礼すると、笠門はピーボに向き直る。ピーボは両耳をパタパタと動かしていた。いつもより、多めに。

 特別病棟七〇一号室の前で、笠門はピーボの首輪を録音機付きのものへと変える。ナースステーションからは看護師たちの厳しい視線を感じた。先日、坂内との面会に異を唱えた新人看護師は、口をきこうともしなかった。
 笠門はピーボにそっと語りかける。
「憎まれ役になっちまって、悪いな、ピーボ。すまん」
 ピーボは既にスイッチを切り替えている。病室の中で目を閉じている坂内の方を向き、何かを感じ取ろうとしている様子だった。
「行こうか、ピーボ」
 脈拍を報せる機器の電子音が響く中、笠門とピーボはベッドに近づいた。
 坂内は静かに薄く目を開いていた。酷い痛みから解放され、表情は穏やかだ。ただ意識は朦朧としているようで、笠門が挨拶をしても、眼球は動かない。ただ真上の天井を見上げているだけだ。
「坂内さん」
 再度の呼びかけにも、応答はなかった。笠門は後ろに下がり、かわってピーボが椅子の上に乗る。枕にそっと顔を近づけ、坂内の様子をうかがっていた。坂内の目が動いた。ピーボに気づいたのだろう。しかし、それ以上の反応はない。笠門は壁を背に、じっと待つ。許可された面会時間は三十分。ここからは、ピーボの領域だ。
 無言の時が、ゆっくりと流れていく。ピーボは微動だにせず、坂内に寄り添っている。
 二十五分が過ぎた。笠門はそっと廊下に出ると、ナースステーションに、「もう少し待て」と合図を送る。師長の柴田がうなずいた。
「犬を飼ってた」
 病室から声が聞こえたのは、そのときだった。坂内がピーボに向かって、話している。
「野良犬だったけど、何でだか、オレになついてさ。かわいかったなぁ。エサやると、尻尾振って。仲間はみんなバカにしたけど、あの犬はかわいかった。おまえ、あの犬みてえだ」
 ピーボを見つめる坂内の目から涙が落ちた。
「犬は、オレがムショに入っている間にどっか行っちまったけどよ」
 笠門は気配を消し、坂内の独白に神経を集める。
「オレがあんな事、言いださなけりゃなぁ。犬の絵を描いてくれなんて言わなけりゃなぁ」
 話の前後がはっきりしない部分はあれど、今、彼の頭には、過去の出来事が鮮明によみがえっている──。
 意思の疎通も困難な認知症患者が、ファシリティドッグとふれ合う事で、一時的に症状が消え、家族たちと会話ができるようになった、という事例も報告されている。笠門自身、以前の事件で似たような体験をした。今回も、同じ事が起きているのかもしれない。
 坂内の涙は既に止まっていた。顔を横に向け、ピーボの姿をもっと見ようと、懸命にベッドの端へと体を寄せようとしていた。
「今まで、誰にも言わなかったんだけどよ、オレ、スギさんに頼んだんだ。犬の絵を描いてくれって。スギさん、絵が上手くってなぁ。色んな話を作って、それを書いたり、絵にしたりして、何だか変わったヤツだったんだ。で、犬を描いてくれって頼んだのさ。そしたら……」
 坂内が口を閉じた。鎮静剤を投与されているにもかかわらず、目に強い光が宿っていた。ピーボに向けられた目が懸命に訴えかけているもの、それは……何だ? 後悔か? 懺悔か? 悲しみか?
 いや、恐怖だ。坂内は、恐怖を思いだしている。
「スギさん、新宿の裏路地にいる犬を見てくるって、出かけた。そこで、怖いものを見ちまったんだ。人が死んだらしい」
 笠門は息を詰め、坂内の言葉に耳を傾ける。
「酷いことするヤツがいるって、スギさん、怖がってた。人を殺したヤツの顔、見ちゃったんだって」
 坂内に寄り添うピーボ。その首輪に仕こまれた録音機には、今の言葉がすべて入っているはずだ。
「その後、すぐだった。スギさんが消えちゃったの。ヤサも全部引き払っちゃってさ。絵やお話を書いたノートなんかも全部持って、いなくなった。なあ、わん公、おまえ、どう思う? スギさん、何でいなくなったんだろうな」
 ピーボは反応を表にださない。うなずく事も、もちろん吠える事もしない。それでも、坂内は納得したように弱々しく笑った。
「だよなぁ。やっぱり、そうだよなぁ。実はさ、オレも犯人の顔、知ってんだ」
 笠門は汗ばんだ両手を握りしめた。
「スギさんが絵に描いてたんだ。犯人の顔。オレ、ちらっとだけど見たんだ。忘れられねえなぁ。忘れられねえよ」
 笠門はベッドの脇に立つと、携帯の画面を坂内に向けた。
「その時、あなたが見た顔というのは、これですか?」
 坂内は画面を凝視していたが、やがて弛緩したような笑みを浮かべた。
「そう、その顔さ……忘れたことは、ねえよ」
 画面に映っていたのは、清洲納の顔だった。

(つづく)