日本橋の茶道具屋『香風堂』の若い手代が、お店の一人娘おくみを勾引した。吟味方与力・大久保忠左衛門の命を受けた白縫半兵衛は、香風堂周辺で聞き込みを開始するが、おくみとともに姿を消した手代・新助の評判は悪くなかった。真面目で働き者の新助が、五つも年上の出戻り娘のおくみを勾引したのは何故なのか。やがて香風堂に身代金を要求する結び文が届けられ――。「世の中には知らん顔をした方が良いこともあるさ」と嘯く北町同心の人情裁きを描く、書き下ろし人気シリーズ第十九弾。