楓川に架かる新場橋で人足姿の若者が迷子になった老人を背負って立ち往生していた。老人を捜していた身寄りの者に無事引き渡す場に居合わせた北町同心の白縫半兵衛は、人足姿の若者が青山伊織という名の武家であることを知る。その数日後、昌平橋の袂で金貸しの義平と取立屋の清次が何者かに斬り殺された。探索を開始した半兵衛は、義平が保管していた借用証文の中に青山伊織の名前を見つける――。「世の中には知らん顔をした方が良いこともあるさ」と嘯く半兵衛の人情裁きを描く、書き下ろし人気シリーズ第二十一弾。