将来、実家の寺の跡を継ぐことを条件に、東京での生活を許されていた潮田朱莉は四十歳を迎え、会社を辞めて地元へ帰ることに。しかし、最終出社日に同僚の青羽雄司から用件不明の誘いを受ける。

 何もわからぬまま辿りついた待ち合わせのナイトクラブ。そこでは、会社だと人畜無害の存在だった青羽が、ミラーボール型のヘルメットを被り、タトゥーまみれの上半身を曝け出しながらターンテーブルを回し倒していた!

 帰郷直前に訪れた、予想外のアプローチ。潮田の遅すぎる初恋の行く末は——。

 

「WEB小説推理」2026年12月号に掲載されたライター・瀧井朝世さんのレビューで『パーティーはいつか終わる』の読みどころをご紹介します。

 

かがみよかがみ

 

■『パーティーはいつか終わる』粟森ヤス /瀧井朝世 [評]

 

親に従って生きて迎えた40歳。突然の愛の告白からもたらされる、にぎやかな日々

 

 将来田舎にある実家の寺を継ぐことを条件に、東京で就職した潮田朱莉。特にやりたいこともなく、流されるまま生きて40歳となり、いよいよ縁談が持ちあがって退職が決定。すると温厚な同僚男性、青羽雄司から謎のお誘いがくる。待ち合わせ場所に行くとそこにいたのは芹沢と名乗る若い女性で、彼女に案内されたのはシブヤ・ブッダ・クラブ。ステージ上でターンテーブルを回すDJがミラーボール型ヘルメットを外すと、それは青羽だった……。40歳女性が思わぬ人生の岐路を迎えるのが、粟森ヤスのデビュー作『パーティーはいつか終わる』だ。note×TALES(テイルズ)主催の創作大賞恋愛小説部門の双葉社文芸出版部賞受賞作だ。

 

 青羽は潮田に長年片想いをしていたこと、この告白イベントはクラブスタッフの芹沢が企画したことなどを打ち明けるが、潮田は大困惑。だが、互いの事情を語るうち、潮田、青羽、芹沢と、青羽とユニットを組むラッパーの行方の4人は打ち解け、潮田が実家に戻るまでのつかの間、花見や酒蔵見学などの交流が生まれていく。

 

 恋愛経験が乏しい潮田とピュアな青羽が、互いに対しどこまでも礼儀正しく誠実な様子が微笑ましい。青羽の片想いの行方も気になるところだが、本作の魅力はそれだけでない。40代で新しい世界を知る喜び、歳の離れた女性2人の間に芽生える友情、高圧的な父の言いなりだった人生に対する自省。女性二人の酒豪っぷりも楽しく、4人がわいわいと遊ぶ様子だけでも読ませるのだが、そこで頭にちらつくのはタイトルだ。彼らのこの楽しい時間も(さらにいえば青羽さんの恋も)、「いつか終わる」のかと思わせる。

 

 が、終盤、〈永遠に酔い続けることはできないように、パーティーはいつか終わるのだ。〉という一文に続く言葉にぐっときた。よく「歳をとると楽になる」と耳にするが、「ああ、こういうことか!」と思ったのだった。読む前は寂しげに感じるタイトルが、読了後には穏やかな幸福に満ちたものに感じられるはずだ。