大沢在昌、長岡弘樹、垣谷美雨、湊かなえ各氏を輩出した小説推理新人賞が今年で45回目を迎えた。未来のストーリーテラーを選ぶべく、選考委員による議論の結果、大賞が決定した。小説家を志す者、あるいは小説ファン必見の選考座談会の模様をお届けする。

(構成・文=門賀美央子 写真=弘瀬秀樹)

 

第45回 小説推理新人賞最終候補作
「昏い熱」鮎村咲希
死者を洗うエンドクリーニング」淀橋大
「いつか見た瑠璃色」谷ユカリ
「恋文」鹿森ゆきの
「三つの栞の謎」七宮慶人

選考委員にお渡しした候補作は、タイトルとペンネームのみ明記し、年齢や職業などは伏せております。

 

 

──第45回小説推理新人賞の選考会を始めます。今年は335作の応募があり、一次選考、二次選考を経て、最終候補作として5作が残りました。また、本年から3年間、選考委員を恩田陸さん、中山七里さん、薬丸岳さんのお三方に務めていただきます。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 

一同:よろしくお願いします。

 

以下、座談会の内容は受賞作の核心部分にも触れます。未読の方はご注意願います。

 

 

「昏い熱」

 

──それでは、さっそく選考に入ります。まずは最終候補作すべての講評をおひと方ずつお願いし、そこで出た意見を元に受賞作を絞り込んでいきたいと思います。

 一作目は鮎村咲希「昏い熱」です。高校生の那央は父親を通勤途中の自動車事故で亡くして以来、事件や事故の現場に赴くようになります。最初は父の事故をスマホで撮影して動画サイトにアップした人間を捜し出すためでした。しかし、徐々に「新たな被害者遺族」が生まれる状況に奇妙な安心感を覚えるようになっていきます。そうした中、いつも現場で出会うマニアのような人たちと言葉を交わす仲になりますが、やがて那央に思わぬ危険が迫り……というストーリーです。講評は恩田さんからお願いします。

 

恩田陸(以下=恩田):今回の候補作全5作の中で、小説としては一番気に入りました。主人公の那央が事件事故の現場マニアになった理由を、自分と同類の“遺族”が生まれる瞬間に立ち会うとなんだか安心するから、という歪だけど理解できる心情にした点がよかったです。ただ、物語自体はもう少しサスペンスを盛り上げられたんじゃないかなと思います。那央と同じ現場マニアたちにはそれぞれ背景が用意されていますが、全員が全員那央の父の事件関係者だったというのは都合がよすぎて納得できませんでした。また、終盤で長谷川という女性がいきなり那央を殺しにかかるのですが、唐突感があり最後まで読んでも動機が伝わりづらかったです。何かが解決するわけでもないので、厳密に言えば、物語がミステリーとして成立していないんですよね。例えば那央が人間的に成長するといった物語としての結末も用意されていません。もっと盛り上げられる余白があるのに少し消化不良の印象が残りました。それでも、個人的には好きな作品です。

 

──続きまして中山さん、お願いします。

 

中山七里(以下=中山):恩田さんと同じような感想です。まず登場人物全員がひとつの事件の関係者である不自然さ、そして長谷川がいきなり殺人に及ぼうとする唐突さが気になります。長谷川が現場マニアになったそもそもの理由も不自然です。彼女は「報道ヘリを見ることで非日常感を味わいたかった」と言っていますが、犯罪に手を染める強い動機として説得力に欠けます。報道ヘリがそこまで非日常感があるかどうかも、本作に書かれている範囲では、疑問が残ったままでした。以上のことが引っかかり、ミステリーとして弱くなってしまっています。また、文章が過剰になっている点や一ヶ所視点のずれがある点が気になりました。「手の中のスマホが震えだした」という情景描写がありましたが、それは視点人物である那央には見えないはずです。そうした細かな点にも注意をはらってほしいと思いました。

 

──ありがとうございます。最後に薬丸さん、お願いします。

 

薬丸岳(以下=薬丸):お二人に大方同意します。まず恩田さんがおっしゃったように、自分の身に降りかかった不幸を納得させるために事故や事件の野次馬になるという切り口は面白かったです。ミステリーとしても、最低限の伏線を仕掛けていると思いました。ただ終盤の展開が早急で中途半端に終わってしまっているのは大変残念でした。那央は父親の事故の実況動画を撮った人間と対面を果たすのですが、それについて深掘りされないまま終わっています。その人物がどうして現場実況を続けているのか、理由を知った那央は何を感じ、どう対峙していくのかという点が、物語の一番大きな肝になったはずです。また、中山さんがおっしゃったように、長谷川の報道ヘリに対する執着も今ひとつ腑に落ちない。この作品は、他の候補作に比べて短いので、まだ加筆する余裕があったはずです。周辺人物をもう少し掘り下げてくれたら、一段上の出来になったでしょう。ただ、候補作の中ではもっとも今という時代を感じさせてくれたので、好感を持ちました。

 

──テーマに時代性が反映されていて、主人公の心理や行動が納得できるのは美点ですが、周辺人物の掘り下げが甘かったせいで終盤詰めきれなかった、というのが皆さんに共通する意見だったかと思います。

 

死体を洗うエンドクリーニング

 

──次は淀橋大「死体を洗うエンドクリーニング」です。元刑事の尚崎は、自殺や孤独死などで長らく遺体が発見されなかった部屋の清掃を生業としており、夏場に十四日間遺体が放置されていた貸家を清掃することになります。不思議なことに部屋内のあちこちに腐敗痕があることが判明。警察の捜査は終了していたものの、事件の可能性を見抜いた尚崎が独自に調べるうちに真実が発覚していく──という物語です。

 

薬丸:この作品については中山さんのご感想をぜひ聞きたかったんです。そのままずばり『特殊清掃人』というタイトルの作品を書かれていますよね。

 

中山:そうなんです(笑)。私が書いたものと構成はほぼ一緒でしたが、もちろん偶然の一致でしょう。それよりも最初に気になったのは文章の読みづらさでした。改行が極端に少なく、地の文とセリフがくっついている箇所さえありました。原稿用紙枚数に換算したところ400字詰めで78枚程度でしたが、おそらく規定枚数に収めるために無理をしたのではないでしょうか。そうしなくても、他に短くできる箇所があるように感じました。また、地の文が長いにもかかわらず、何かを描写をしているようでできていない部分も見受けられます。単なる説明に終始しているんですね。イメージが湧きづらく、結果として読みづらさに繋がっていると感じました。

 内容について言えば、ミステリーとして少し弱い部分が目立ちました。犯人が育てていたという子供と行方不明になっている子供が同一人物である確証がないまま、推論だけで話が進んでいきます。犯人の異常行動も推察に終わったままです。残されたメモを証拠として登場させてはいますが、その内容は大した意味がない。だから最後の種明かしというか、伏線が伏線として活きていません。また、相棒である元記者が捜査に肩入れする動機も見えてこない。その辺りが残念でした。

 連作短編の最初の一編のような印象を受けたのもマイナス点です。短編はその一本だけで世界を完結させるのが望ましいでしょう。目の付けどころは本当にいいんです。現代の問題が集約されていますから。

 

──では薬丸さん、講評をお願いします。

 

薬丸:候補作の中では一番ミステリーらしいミステリーだと思います。なかなか面白い題材で、キャラクターの個性もありました。ただやっぱり連作短編の一発目という印象が拭えない。読み終えた直後は比較的悪くはないかなという印象でしたが、そういえば中山さんの作品で『特殊清掃人』があったと思い出してからは類似する部分が気になってしまったのは確かです。

 

──最後に、恩田さんお願いします。

 

恩田:私も死体の移動痕の謎自体は興味を持って読みました。しかしとにかく読みづらい。改行が少ないですし、所々何を言っているのか今ひとつわからない部分がありました。また、謎解きをしていく二人がいくら元刑事や元記者だったとしても、警察がこんなにあっさりと捜査情報を教えてくれるものだろうかと疑問に感じました。他にも、終盤で風呂場の排水溝から証拠が出てくる際に一緒に清掃にあたった元記者の清掃会社社長の描写も引っかかりました。彼は最初から見抜いていた様子なのですが、最初からそこを清掃していたら、犯罪の証拠はすぐに見つかり警察も再捜査に踏み切るでしょう。なぜ最後の最後まで引っ張ったのか。また、中山さんがおっしゃった通り、確かに全てが推論で進むんですよね。要所要所で理屈が曖昧なままだったのは残念です。面白く読めた部分もありましたが、既視感を覚えたのも否めません。また、お二人が先に指摘された通り、連作短編の第一回のように読めてしまうのも気になりました。

 

──ミステリー作品として謎は魅力的だけれども、読みづらい文体と連作短編を思わせる構成のせいで評価を下げているというところでしょうか。

 

本当に自分が読みたいと思える物語なのか見極めてほしい 恩田陸氏

 

「いつか見た瑠璃色」

 

──では3番目、谷ユカリ「いつか見た瑠璃色」に進みたいと思います。主人公の棚橋航也は、早世した親友で画家だった嘉神陽人の回顧展を訪れると、かつてアトリエを兼ねていたマンションに隠し棚があったことを聞きます。それをきっかけに青春時代を思い出すと同時に、過去と現在を繋ぐ出来事が次々と起こります。憧れの女性だった木綿子が突然失踪した事情、自らを陽人の忘れ形見だと名乗り出た部下、さらに木綿子とそっくりな絹子なる女性の正体、そして隠し棚の謎などを追ううちに、陽人の秘め事が判明し……という物語です。こちらは薬丸さんからお願いします。

 

薬丸:ひと言でいうと、整った作品という印象を持ちました。また、動機に性的少数者ならではの事情がからむのも意外性がありました。航也の会社の部下が陽人と繋がりがある偶然性は気になったものの、終盤でその伏線も一応回収され、陽人が何に苦しんでいたかも語られます。ただ、短編なので仕方がないですが、物語の展開が少々性急すぎるように感じました。部下の海人がいきなり個人的な悩みを打ち明けるのは不自然に見えますし、陽人の母が真相を語る場面ももう少し余韻を持たせてもいいように思いました。例えば、航也が最初に画廊に行くシーンの前に、海人とのやりとりを入れるだけでも唐突さは薄れたでしょう。とはいえ、全体的にいい話だと思いますし、短編小説としてもよくできています。

 ただし、インパクトは弱く、作者なりのセールスポイントを感じづらい作品でもありました。選考委員は仕事なので候補作を最後まで読みますが、プロとして書いていくなら、最後まで読んだ感想が“それなりに”面白かったや“それなりに”良かったでは厳しい。最初の掴みで大きなインパクトがあったり、興味をそそられる展開が早い段階で用意されていたほうがいいでしょう。そういう点で作者の個性をあまり見出すことができませんでした。

 

──次は恩田さんにお願いします。

 

恩田:ミステリーとしては謎が弱く、全体的にありきたりだなと感じてしまいました。モチーフになっている美術作品の描写が「生命の神秘を歌い上げている」ではあまりに紋切り型で、この画家の作品や人生に魅力を感じづらいのです。もしこのストーリーにするのであれば、彼の遺作を中心に話を進めるべきでした。物語のタイムラインが過去に行ったり来たりするけれども、途中で話題が彼の絵から離れてしまうため、印象が薄れてしまってます。追憶シーンのはじまりを絵の描写にするだけでも随分改善したでしょう。

 また、登場人物の一人が人生の大きな決断をする理由として「アセクシャル」──生来的に誰にも恋愛感情や性的欲望を持てないセクシャリティを持ち出していますが、その必然性を感じることが難しかったです。この物語であれば、単に好きな人と出会わなかった、という理由でも十分成り立つんですよね。また、作中でキーワードとして繰り返される「生きる隙間」という言葉が伝わりづらく、描くべきマイノリティの人たちの切実さが感じられませんでした。その結果、アセクシャルについても単に目新しいから採用したのかと懐疑的にならざるを得ませんでした。

 

──最後に中山さんのご意見はどうでしょうか。

 

中山:非常に読みやすい作品でした。先ほど恩田さんもおっしゃったように、ミステリーとしては弱いのですが、5作のうちでは一番読後感が良かったです。読み始めは、現在と過去のカットバックを多用する構成が読者に対して少し不親切だと感じましたが、文章が読みやすいので許容範囲に思いました。また、登場人物のなかで一番存在感があるのは死者だというのは印象的で、小説として面白かった。だから短編としての魅力を見たときに評価できると思いました。アセクシャルの問題については、確かに現代的な話題ではありますが、理由として納得できないことはない。お二方が指摘されたマイナス部分は、長所を考えると相殺できると感じました。

 難点を挙げるとすれば、プロローグをつけたところでしょうか。今回の候補作は四百字詰め原稿用紙に換算すると80枚ギリギリの作品が多かったです。それらは全部プロローグやエピローグが入ってましたが、効果的なものは少なく不要に感じました。短編の面白さは切れの良さだと思っています。それなのに前後に余計な文章を入れてしまったために切れ味が悪くなっている。本賞の上限は80枚と決まっていますが、下限はないのだから、50枚で終わらせてもよかった。無理に延ばすと、それがかえって欠点になってしまいます。

 

薬丸:僕もそれには同意です。

 

中山:長編でもよほど意味がない限り、プロローグは作らないです。

 

恩田:その通りですね。

 

中山:短編でプロローグを入れる理由がわからないんですよ。

 

恩田:80枚が上限なら、77、8枚まで書かなきゃいけない、という気持ちからでしょうか。

 

中山:恐怖感があるのかもしれませんね。しかし、不要なものは不要です。

 

──整った作品でリーダビリティは抜きん出ている一方、謎や展開が弱く、インパクトに欠ける内容だったという点で御意見が共通していたかと思います。

 

「恋文」

 

──四作目の候補作は鹿森ゆきの「恋文」です。幼い頃から人間関係に恵まれず孤独な人生を送ってきた主人公は、白川美緒という女性に助けられたことにより恋心に似た感情を抱きストーカー化、彼女を観察し続けます。ところがある日、美緒は何者かに殺されてしまい、主人公はその犯人を捜そうとするが……という一人称告白体の作品です。こちらは中山さんから講評をお願いいたします。

 

中山:この作品にもプロローグとエピローグがありますが、必要性を感じられず、五十枚ぐらいにまで削れる作品だと思いました。また、主人公の氏名や性別が最後まで伏せられているのはなぜでしょうか。隠すなら隠すだけの理由が必要なのに、何の理由もなく最後まで明かさないのは読者に不親切である気がします。さらに犯人を突き止めて復讐を果たした主人公が最後に自殺する動機もわかりませんでした。そして伏線として書かれているであろう「室外機の上に置かれていた赤い物体」は、それ自体がネタバレになってしまっています。思わせぶりなプロローグがあって、ミステリーとしては出オチ感が否めず、小説としても最後までわからないところが多く、評価しづらかったです。

 

恩田:私もプロローグとエピローグはなくてよかったと思います。もし置くのであれば、第三者視点からの事件の描写にすべきだったでしょう。プロローグに、一見いい子だけどすごく腹黒な女の子が事故死するエピソードが出てくるものの、全体にはなんの効果も与えていないんですね。プロローグを伏線とするならば、主人公は美緒の違った一面に幻滅、美緒への好意は殺意に変貌し──といった展開も予想できましたが、そういうわけでもない。美緒はいい人のまま殺されてしまい、主人公も彼女を追って自殺する、では工夫が足りないように感じました。全体を通して漂う不穏な雰囲気や「恋文」というタイトルは悪くないのですが……。

 

薬丸:僕も途中までは主人公の語りの不穏さに惹かれ、どんな展開や驚きが用意されているのか期待していたので、そのまま終わってしまったのは残念でした。美緒が殺された理由も平凡な印象で、安易なところに落とし込んでしまったように感じました。サスペンスも薄いです。たとえば、美緒のストーカーだった主人公が仕掛けた盗聴器が第三者に見つかってしまうシーンがあるのですが、充分に活かされていない。もっと主人公がドキドキする展開にできたはずです。

 僕も主人公が自殺した理由がわかりませんでした。例えば、これが何か過去に自分が犯した罪──友人殺しや両親殺しと絡めてその思いに至ったというのなら、ベタではあるものの、わからなくもないですが。プロローグも思わせぶりに終始して物語に繋がってるとも思えず、惜しい部分が残る作品でした。

 

──せっかく用意したエピソードの数々がストーリーに生かされず、展開に工夫が足りなかったために結末も納得しづらいという点で皆さん一致していたかと思います。

 

アドバイスを聞き入れ、修正していく力もプロとして必要な資質 中山七里氏

 

「三つの栞の謎」

 

──最後の作品、七宮慶人「三つの栞の謎」に移りたいと思います。本作は高校を舞台にしたいわゆる「日常の謎」に分類されるミステリーです。図書委員の二人が、返却された本に栞が三枚挟まれていた理由について推理を重ねていく、という物語になります。恩田さんからご意見を聞かせてください。

 

恩田:少し気が強く不思議ちゃんな女の子と、それに振り回される僕という設定だけで、既視感を覚えました。しかし、書かれている謎は悪くはなく、謎解きの過程はきちんと推移しているので、楽しく読めました。落ち込んでいる先輩におすすめの本を直接渡したいけれど先輩はプライドが高いから、それは難しい。遠回しではあるが一緒に図書委員をやっている「僕」に頼みたいという女の子の動機も好印象でした。ですが、設定があまりにありふれていて、またこの組み合わせかという気持ちになってしまったこともあり、評価しづらかったです。

 

薬丸:学園ものには本当によくあるパターンですよね。また、こういう「日常の謎」系は、読者が推理の過程や手がかりを共有できていないと没入するのが難しいと思います。この作品の謎を解く鍵は「数字」でした。その数字は学年・クラス・出席番号を表すものだったのですが、読者が共有できない事項です。説明がない限り、読者は知り得ず、推理の過程を楽しむことができない。動機も意外性に乏しく、判明しても肩透かしを食った気分になりました。となると、やはりキャラクターの個性で面白みを加えるしかないと思うのですが、二人ともキャラ立ちしていないからどうにも引き込まれない。これに類する小説を書くのであれば、もっと既存の類似作を読んで研究しなければなりません。どういう点が読者に受け容れられているのか、どこに新しさを見い出せばいいのかなどを探し、既存作を上回る魅力を加えられないと厳しいでしょう。

 

中山:そうなんですよね。謎の魅力が低いと感じました。お二方もおっしゃった通り、論理はちゃんとしているけれども、平凡な学生生活の平凡な一シーンでしかない謎に興味を抱きづらく、ページをめくらせる推進力に欠けるんです。ミステリー小説は、謎それ自体が魅力的な方がいい。また、暗号を仕掛ける動機は一応書かれているのですが、僕には不自然に感じられました。もちろん、こういうタイプの設定がお好きな人にはたまらない作品なのかもしれないですが。そして本作もエピローグが不要に感じたというのも指摘しておきたいです。

 

──ミステリー小説として論理性は担保されているものの、既存作によくある人物設定や、謎の魅力に欠けるというのがお三方の評価であったかと思います。

 

 これで各候補作の講評が出揃いました。
次回はいよいよ受賞作を絞り込んでいく作業が始まります。
 はたして第45回小説推理新人賞に輝くのはどの作品か。熱い議論をお楽しみください。

 

(後編)に続きます