離婚調停やパワハラ・セクハラ、名誉棄損問題。日本もすっかり訴訟文化が定着し、弁護士が活躍するフィールドは広くなったが、人知れず難儀な依頼や、けったいな依頼主に翻弄される弁護士の数もまた多い。
『花束は毒』で知られる織守きょうやによる連作リーガルミステリー『悲鳴だけ聞こえない』は、新人弁護士・木村とその先輩・高塚の2人が活躍するシリーズの最新作。パワハラ告発があったにもかかわらず、被害者が不在。そして、悲鳴をあげているのは意外な人物だった――という物語の鮮やかな結末に息をのむ!
そして、現代の社会問題のひとつでもある孤立死に向き合った実用エッセイ『死に方がわからない』も、今月の新刊の中で異彩を放っている。
「ひとりっ子、親なし、配偶者なし、子なし」のおひとり様が増えている昨今、いつなんどき部屋で倒れて不幸にも亡くなってしまうか分からない。これは、物騒なタイトルとは裏腹に、「寿命を迎えてきれいさっぱり死んでいく」ことが難しい時代に、現実の死を身近に考え始めた“ボッチ不可避の私”が、様々な実例をあげながらユーモアたっぷりに「死に方」を指南してくれる有難い書だ。
人生いろいろあるけれど、時に現実逃避させてくれるミステリーを読み、時に目の前の現実と対峙するエッセイを手に取りながら、ゆるゆるやっていきたい。ということで、今月の多彩な新刊ラインナップをご紹介。
被害者の不在、死者の願い、美しき嘘。けど、弁護士は全て見破る!
悲鳴だけ聞こえない
織守きょうや
パワハラ告発があった企業から調査を依頼された新人弁護士の木村と先輩の高塚。しかし、投書は匿名で加害者も被害者もわからず、調査は難航した。悲鳴をあげているのは、意外な人物だった――。『花束は毒』の著者による連作リーガルミステリー!
愛する妻が片眼を失くしたのは、かつて僕が作った爆弾のせいだった。
爆弾犯と殺人犯の物語
久保りこ
空也が小夜子のスマホを拾ったことで、2人は運命的に出逢う。小夜子は学生時代の事故のせいで左目に義眼を入れていた。空也はその義眼に惹かれ彼女を愛しはじめたのだが、事故の原因が、かつて自分が作った小さな爆弾であることを知る。第43回小説推理新人賞受賞作からはじまる連作短編集!
わけあり女が3人始めた商いは、男と女の逢瀬の茶屋!
れんげ出合茶屋
泉ゆたか
「うんと気の強い女中が欲しい」。そんな注文が入り、咲は新しい奉公先を訪れる。不忍池の岬のあばら家で待っていたのは、なんと母が幼い頃の咲を連れて奉公していた大店の元お嬢様、志摩だった。さらに妙な色気のある女、香も加わり、男女が人目を忍んで逢瀬を楽しむ“出合茶屋”を開くことに! お江戸の女が元気をくれる時代小説。
生誕150年の節目に送る、〈妖怪〉と〈怪談〉話のアンソロジー決定版!
岡本綺堂
怪談文芸名作集
著:岡本綺堂
編:東雅夫
「修善寺物語」をはじめとする新歌舞伎の名作や、「シャーロック・ホームズ」に触発された探偵小説「半七捕物帳」を執筆し現在も多大な人気を博している岡本綺堂は、実は幻想怪奇文学の名匠でもある。1世紀余を経て、なお冴えわたる綺堂怪談の神髄がここに!
ボッチのわたしが、いかに綺麗に人生を閉じるか。ユーモアあふれる実用エッセイ!
死に方がわからない
門賀美央子
ある程度自分の「死に方」が見えてきた今、ようやく落ち着いて今後の「生き方」に向き合えるようになってきた――。「ひとりっ子親なし配偶者なし子なし」の一人暮らしが増えている今、現代のおひとり様がいかに他人様に迷惑をかけず、部屋で腐らず、綺麗に人生を閉じるかを、様々な実例をあげながら指南するポジティブエッセイ!