龍治に返り討ちにあい、川に飛び込んで逃げた吉三郎は生き延びていた。手負いの吉三郎だったが、しつこく復讐の機会を狙い、おえんの存在を知る。吉三郎は、自分と同じく白瀧家に恨みを持つと踏んでおえんに近づき、その長屋に転がり込んだ。打算から始まった同居は、しかし徐々に心の変化をもたらし、ある時おえんを襲った身の危険に対して吉三郎は……。若者が夢を持ち、恋に落ち、時に傷つきながら成長する。巻を追うごとに目が離せなくなる江戸の青春群像、せつなく沁みる書き下ろしシリーズ第五弾!
拙者、妹がおりまして 5
定価:682円(税込)
判型:文庫判
ISBN:978-4-575-67106-3
発売日:2022年4月14日
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「おっかさんと呼んでもいいんだよ」
おえんと吉三郎
傷すり合う二人の儚き同居。
地獄一歩手前の壮絶な別れ!
涙誘う第五弾
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泰平の江戸の世に、かくも切なく──
「ねえ、あのさ」
出掛けようとするおえんを、夜着にくるまったままの壱が呼び止めた。
「なぜ俺を捨てないの? 俺に関わってたら、あんたも地獄に行くよ」
おえんは笑った。
「地獄なんてありゃしないわよ。この世が地獄みたいなもんだもの。死んだらそれっきりでしょ。またこの世に生まれ変わるともいうけどね」(本文より)
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