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 これまで『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』をはじめとした「死」を扱う作品を多数手がけてきた森田碧さん。最新刊『先に死ぬ僕との6つの約束』執筆にあたってのこだわりや背景について話を伺った。

 

 

この本を読み終えたときに最初に抱いた感情を大切にしてほしい

 

──本作は代償と引き換えに願いが叶う不思議な神社を舞台にしたお話ですが、どのようなきっかけから生まれたのでしょうか?

 

森田碧(以下=森田):神社を舞台に、不思議な出来事が起こる物語を書いてみたいと思ったのがきっかけでした。僕自身、神社が特別好きというわけではないんですが、旅先で偶然神社を見かけると、つい立ち寄ってお参りをしたり、お守りを買ったりすることがあります。神社という場所には、どこか日常とは違った雰囲気があるというか、不思議なことが起こりそうな場所だと昔から感じていました。そこから「もし、本当に願いを叶えてくれる神社があったら」と考え、物語を膨らませていきました。

 

──主人公・蓮は森田さんですか?

 

森田:なるべく作者の主観や考えを登場人物に投影しないようにしているので、どの作品も基本的には別人です。ただ、人のためより自分の願いを優先するところは僕に似ているかもしれません。逆にヒロインの美鈴は人のために動ける子で、僕にはないものを持っています。

 

──本作では、「誰かを幸せにすること」と「自分が幸せになること」が対照的に描かれています。これまでの経験などが作品に反映されている部分はありますか?

 

森田:特定の経験というよりは、もともと簡単には答えの出ないことをあれこれ考えるのが好きで、そうしたことを掘り下げていく中で、今回のようなテーマが生まれました。登場人物の選択や関係性を組み立てていくうちに、自然と対照的な考えを持つ主人公とヒロインが出来上がりました。

 

──本作のテーマである「願い」と「代償」を通して、読者に伝えたかったことや、感じてほしかったことは何でしょうか?

 

森田:伝えたい思いや感じてほしいことを最初に決めて書くことはあまりありません。作者の思いを押しつけるのが好きではないので、この本を読み終えたときに最初に抱いた感情を大切にしてほしいと思っています。同じ作品でも、読み返したときにはまた違う感情を抱くこともありますし、読者全員が同じものを受け取る必要もないと思います。それぞれの感じ方で、この物語を受け取ってもらえると嬉しいです。

 

──神社を通して蓮と美鈴が少しずつ心を通わせ、互いの状況が変化していきますが、森田さんが特に印象に残っているシーンやセリフはありますか?

 

森田:個人的には、自分よりも人のことを願う美鈴が、次第にその思いに囚われ、代償も大きくなっていく中で、人に無関心だった蓮が美鈴のことを気にかけるようになっていく姿が印象に残っています。あとはラストで、それまで自分のためにしか願わなかった蓮が、初めて誰かのために願う場面です。蓮がその選択をするまでの過程も含めて、特に気に入っています。

 

──森田さんの過去著には代表作「よめぼく」シリーズなどがありますが、『先に死ぬ僕との6つの約束』の位置づけや思い入れを教えてください。

 

森田:これまでは限られた命をテーマにしたお話を書くことが多かったのですが、今作も最初は「余命ものを書いてほしい」と声をかけていただいたのが始まりでした。ただ、余命を題材にした作品はこれまでにも書いてきたので、今回はその要素を残しつつ、少し違うものを書いてみたいと考えました。そこで、明確な期限を設けるのではなく、死とは遠い場所にいる主人公とヒロインの物語にしました。最初に作ったプロットでは、ここまで「命」を意識していなかったのですが、ブラッシュアップを重ねるうちに少しずつその要素が強くなり、結果として、これまでとは違った形で命を描く作品になったと思います。

 

──本作はどんな読者に読んでもらいたいですか?

 

森田:神社を舞台にした物語が好きな方や、どうしても叶えたい願いがある方に読んでもらえたら嬉しいです。もちろん、そういったことに特に関心がない方にも、この物語を楽しんでいただけたらと思います。

 

──最後に読者に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

 

森田:ここまで読んでくださってありがとうございます。今回はこれまでで一番、執筆に苦労した作品でした。蓮や美鈴が「代償」として選んだものの中には、人によっては失いたくないと思うものもあります。そのため、言葉の一つひとつを慎重に選びながら、何度も書き直しました。そうして完成した物語なので、まずは難しく考えず、それぞれの感じ方で楽しんでいただけたら嬉しいです。読み終えたあと、少しでも心に残るものがあれば幸いです。