第一幕 ~加瀬惣介​~

 

探索

 

 

 目を開けると白い光に包まれた。外から鳥のさえずりが聞こえてくる。それ以外は、音そのものが取り除かれてしまったように静かだ。その静けさに当惑を覚える。毎日、耳にしていた波の音が聞こえないことに、ここはどこだ、という焦りを抱いた。夜具を跳ね上げた加瀬惣介は、緑の畳、そして白い障子を見て、

(ああ、そうか)

 と理解する。ここは俺の家だったか。惣介の顔に射していたのは、雨戸の隙間からこぼれる朝の光だった。建て付けが悪くなっているのかもしれない。あとで下男の九兵衛に言いつけておかねばならぬな、そう思いながら惣介は、

「うぅむ」

 と頭をおさえた。体の重さを感じている。清次郎のことや市原新之丞のことをあれこれ考えていてほとんど眠れなかった。それでも明け方近く、ようやく眠りに引き込まれたのだったが、それが意外と深かったようである。半刻(約一時間)程度だとは思うが、それでも眠れたのはよかったと思った。

 惣介はとうから木刀をつかむと庭に降りた。陽は昇り始めたばかりで、空にはまだ夜の群青が塗り重ねられていた。吐く息は白く、晩秋の底冷えする冷気が体を縮こませる。

 惣介が木刀を振っていると、雨戸から九兵衛が顔を出した。

「お早いですな」

 惣介は前を向いたまま、

「すまぬ。起こしたか」

 次の型に木刀を移す。

「いえ、ちょうど起きなければならぬ頃合いでしたので……。それにしても」

 八双からの剣を振り下ろす惣介に九兵衛がしんみりとした口調になる。

「清次郎様のことはご心配ですな」

「聞いたか」

「ええ、雪乃さんから少し」

「あわただしくなる。九兵衛にもいろいろと言いつけることが増えるかもしれぬ。頼むぞ」

「それは、まあ。こころえております」

「では、とりあえず、雨戸を直すよう手配してもらいたい。俺は、少なくとも五日の間は、この家で暮らすぞ」

「はあ、さっそく」

 九兵衛は申し訳なさそうに言った。惣介は再び木刀に意識を戻した。無心になれるまでとにかく振る。一度頭の中を空っぽにする必要があると思った。

 朝の稽古を終えて部屋で着替えていると、

「旦那さま」

 襖の向こうから声がした。通い女中のきぬだ。

「きぬ。ご苦労だ」

 惣介は襖を開いた。

「私が来たときに門の前で若い男が立っていて、このようなものを預かりました」

「なんだ?」

 きぬが両手で差し出しているのは白い封書だ。惣介は首をかしげてそれを見つめる。

「どんな男だ?」

「下男風の男でした。旦那さまにお渡しするように、と」

 受け取った惣介は表と裏を確かめてから、居間に向かった。封書にはなにも記されておらず、そのことが不気味に思えた。

「おはようございます」

 居間に入ると、娘の雪乃が待っていた。

「早いな」

 惣介が腰を下ろすと、雪乃は畳に雑巾を置き、手早く襷をほどいた。どうやら拭き掃除をしていたようである。

「いつもこれぐらいに起きます。きぬの仕事を手伝わせてもらったり、九兵衛に指示を出したり。そういうことが私は好きみたいです」

「それはいい。いつでも嫁に行けるな」

 言いながら惣介はふと悲しみに襲われる自分に気づいた。十六歳の雪乃が嫁に行けば、もうこうして朝のひと時を一緒に過ごすことはなくなるのだ。離れて暮らすことがほとんどだったが、それでも当たり前だった娘とのやり取りがなくなってしまうことは、やはり寂しく思えた。

(清次郎が大変な目にあっているこんなときに……)

 なにを感傷に浸っている。惣介は頭を振ると、湿った気持ちを紛らわすため手早く封書を開き、中の紙を取り出した。だが、文字を追おうとしたところで、ふと思い出し、

「母はどうした?」

 雪乃に聞く。

「先ほど覗いたのですが、まだ眠っておられました」

「そうか」

「いつもは一番に起きるのです。それが今日は……。やはり、お兄さまのことで、相当参っているんだろうと思います」

「仕方ないな。今は休ませてやれ」

 雪乃に返事をして、惣介は再び手紙に目を落とした。

「な……」

 読み始めてすぐ惣介は絶句した。手を震わせながら最後まで目を通すと、すぐに立ち上がって、

「九兵衛、九兵衛!」

 襖をあけて下男を呼ぶ。

「お父さま、どうされたのです?」

 父の変わりように雪乃の声が上ずる。なにも知らずに見つめてくる娘に、惣介は思わず憐れみを覚えてしまった。そんな父を見て雪乃はなにかを悟ったらしい。青白くなりながら、

「なにが記されていたのですか?」

 こわばった声で聞いてきた。

「これか」

 惣介は手紙を持ち上げると、顔をしかめて見つめた。それから観念したようにため息をつき、

「雪乃のことだ」

 と娘に手渡す。今伝えるべきかどうかはわからなかった。が、いずれ知られることになるのだ。変にとりつくろったりすれば、あとで知られたとき雪乃をさらに傷つけることになる。なら、今、見せた方がいい、そう思った。

 受け取った雪乃は、そこに書かれている文字を読み、たちまち顔を真っ赤にさせた。その姿を見るのがつらくて、惣介は目をそらしながら切り出す。

「縁組みを見直したいのだそうだ」

 雪乃は年明けに嫁に行くことが決まっていた。手紙はその相手である祐筆ゆうひつ組のなかこうすけの父、中田また右衛もんからである。内容は、惣介が言った通り、縁談の解消を申し入れるものだった。

「清次郎のことが原因、か……」

 惣介は愕然としながらも、これが罪を得るということなのだ、と思った。周りにいた人間が簡単に離れていく。なぜつかまったのかは関係ない。穢れをうつされることを恐れるように当然のごとく距離をあける。みな、自分が渦中に巻き込まれることを避けるのだ。

(それにしても又右衛門め)

 惣介は憤る。中田家は代々物頭を務めてきた家柄で、出世に絡むことはなかったが、禄は二百石を得ていた。その当主である中田又右衛門は吝嗇家として有名で、そうして貯めた金を家中藩士に貸し付けてさらに富をふくらましているという。そんな又右衛門だったが、惣介が郡奉行から罷免されても一向に気にしない男であった。それは藩内の立場より金に信頼を置いているからなのだったが、だからこそ、息子の幸之助が雪乃を見初めたとき、なんのためらいもなく加瀬家に縁組みを持ちかけてきたのである。

 惣介は、雪乃を嫁に出すことに反対した。まだ早いと思った。雪乃は十六だ。だが、相手の幸之助は雪乃に相当入れ込んでいるらしく、なんとしてもすぐ縁組みをしたい、と言ってきた。雪乃は、武骨な父親に似ず、容姿の整った娘だった。かといって母の美津に似ているわけでもなく、美津は、確かに細面で涼やかな目をしていたが、気の強さが表に出過ぎていて決して美人とは言えなかった。だが雪乃はおっとりとしていて美しいのである。父と母のいいところだけを受け継いで生まれてきたようだった。

 そんな雪乃は若い男から人気があった。家の前をうろうろしたり、付け文をする者が結構な数いたと聞いている。九兵衛が教えてくれた。ただ、惣介が郡奉行を降ろされた途端、それらはぱたりとなくなっていたのである。そのような時期に、中田家から縁談の話が持ち込まれた。中田幸之助は二十一歳の、いかにも金持ちの息子といった男で、顔も整っていることから女に人気がありそうだったが、惣介は軽薄なところがあまり好きではなかった。世の中を甘く見ているような浮ついたところのある男だった。

 それでも結局縁組みを了承したのは、中田家の財力に目がくらんだからである。不況が長引く藩にあって、禄をもらい、勤めにいそしんでいれば、それで安泰かと言えばけっしてそうではなかった。下級藩士などは内職をしながらようやく生きているという有様である。雪乃の将来を考えると、裕福な中田家に嫁ぐことは悪い選択ではないと思った。また、この機を見送ったところで、雪乃に縁談話が舞い込んでくるかもわからないのだ。親が郡奉行から降ろされたという事実はそれだけ重く、ひょっとすると雪乃は嫁入りに適した時期を逃してしまうかもしれなかった。

 惣介は雪乃にそうしたことを伝え、雪乃も雪乃で、

「お父さまが、おっしゃることでしたら」

 と納得して嫁に行くことを決めたのだ。

 そんな矢先、中田家から縁談の解消を申し入れられた。その変わり身の早さに惣介は激しい怒りを覚えた。咎を避けるために切り捨てるなんて、あまりに娘をないがしろにしすぎではないか、と思った。さすがの中田又右衛門といえども、藩を転覆しようと企てる大罪人と親戚になろうとは思わなかったらしい。嫁ぐことに一抹の寂しさを覚えていたとはいえ、娘が哀れに思えてしようがない。

「これでよかったのです」

 雪乃がうつむけた顔を上げ、わざとらしく明るい声を出す。

「嫁ぐ前に、相手さまがどういう方かを知ることができました。きっと、このままお嫁に行っても、雪乃は幸せにはなれなかったでしょう。そんな気がします」

 強がりを言う娘に、惣介はあわあわと口を動かす。

 なにか声をかけてやりたい。抱きしめ、なぐさめてやりたい。

 だが、どちらも自分にはできないことはわかっていた。ほとんど家にいなかった父にそんなことをされても、雪乃の気持ちを乱すだけだ。

「清次郎のことが片付けば、お前のこともどうにかする」

 代わりに惣介は歯を食いしばりながらそう言った。

「辛いだろうが、それまで待て。そして父を信じろ」

「はい……」

 力ない笑みを浮かべる雪乃を見ていられなくなり、惣介は部屋を出た。自室に戻り、支度を整えてから玄関に向かう。九兵衛が慌てて出てきて、どちらに向かわれるのですか、と草鞋をつっかけようとした。

「清次郎のことで調べることがある。供はいらぬ」

 惣介は答え、大股で進んで門をくぐった。肩を怒らせたまま早朝の町を歩く。朝の清廉な陽射しが、惣介にはひどく物憂いものに思えた。

 

 

 城下の北西に郡奉行配下が多く暮らす町がある。惣介が幼少期を過ごした町は、城下の上水用に引き入れる伏見川と、領内を貫く高田川がちょうど分岐する場所に設けられていて、常に水の音が響いていた。惣介の今の住まいがある城下南から歩いて半刻(約一時間)ほどと少し離れてはいたが、惣介はこの町に来ることを昨夜、床の中で決めていた。奥弥一に相談するためである。今、惣介が頼りにできるのは弥一をおいてほかにいなかった。ほかの者は惣介が郡奉行を降ろされた際に離れてしまっている。

(弥一は家にいるだろうか)

 歩きながら惣介は考える。友浦に来た翌日だし、まだ城下にいる可能性は高かった。弥一が今担当しているのは芦田村など城下に近い村だ。一夜を家族と過ごし、朝、出発しても村の巡回には十分間に合う。そう思ったが、弥一は真面目な男であることを惣介は思い出した。通常通り代官所に泊まり、それから村を回るつもりかもしれない。どちらなのかは、行ってみなければわからなかった。

 通りを歩いていると、惣介の胸にふいに懐かしさが込み上げてきた。郡奉行を務めていたころ、城下に戻るたびこの町で暮らす下役の家に行っては農政を語り合った。部下の生活、家族との関係を把握することも大事だと思っていた。郷方廻りは、家を留守にすることが多い。奉行職の自分が顔を見せることで、家族に対して安心感を抱かせてやれるのではないか。そうして家族に配慮しておけば、下役も勤めに励みやすくなる。

 当時は惣介が町を歩けば、郷方廻りの連中が、

「お奉行」

 と声をかけてきたものである。それは、惣介に対する親しみと信頼のあらわれだった。そんな彼らのふるまいは、惣介にとって一つの喜びでもあったのだ。

 だが、今、町を歩く惣介は違和感を覚えている。誰も声をかけてこないのだ。まだ朝早かったが、何人かは外に出ていて、門の前を掃除したり、水汲みをしたりしている。生垣越しに洗濯物を干している者の姿も見える。家禄の低い者がほとんどのこの町では、女中を雇える家は少ない。妻女が家事をするのが普通だった。

 その妻女たちは、明らかに通りの真ん中を歩く惣介に気づいているのに、それでも知らん顔を決め込んでいる。

(まさか湊組に左遷された二年の間に、忘れられたわけでもあるまい)

 そういぶかしんだ惣介は、ちょうど門から出てきた女と鉢合わせて、

「あ」

 と声を上げた。女は惣介がかつて面倒を見た部下の妻だ。何度か家に上がり、飯を馳走になったことがある。そのたび妻女は夫が世話になっていることに礼を述べていたのだ。

「お、久しぶりだな」

 惣介が手をあげると、女は目を見開いて、

「きゃ」

 と飛びあがった。思わず惣介は立ち止まる。女の顔にはあきらかな狼狽が浮かんでいた。

助蔵すけぞうは達者にしておるか?」

 嫌な予感を抱きつつも、惣介はかつての下役の名を出した。

「失礼いたします」

 女はとっさに礼をして、生垣の内側に引っこんでしまった。

「なんだ?」

 茫然と見送る惣介の耳に、かすかなささやきが飛び込んでくる。

「息子さんが牢に入れられたそうよ」

「執政のお屋敷に討ち入りをかけようとしたとか」

 声のしたほうを振り返ると、少し離れた位置に二人の女を見つけた。女どもは惣介と目があった瞬間、急にそっぽを向いて、なにか用事を思い出したといった様子で小走りに去っていった。

(そういうことか)

 惣介は頭が熱くなるのを感じた。この懐かしい町で、自分は今、明らかに嫌われ者になっている。住民は惣介と一定の距離を保ちつつ、その行動をうかがっているのだ。

 立ち尽くした惣介は、

(弥一の家に行ってはならぬ)

 そう判断した。今の状況で弥一の家に向かえば、弥一とその家族の迷惑になる。罪人とかかわったという理由で町中から白い目で見られるはずだ。

(俺が罪を犯したわけではないのに)

 そして、清次郎もまた罪人と決まったわけではないのだ。

 だが、今は、なにを言っても仕方なさそうだ。噂が独り歩きしている。

 惣介は踵を返した。この町にとどまっていてはいけない。思い出の詰まった町だからこそ、みじめな思いを抱きたくなかった。惣介は顔から血の気が失われていくのを感じながら通りを引き返す。大きく見開かれた目には、見知らぬ町が映っている。

 

 

 向かい合った老人からは薬の匂いがした。惣介が気づかないふりをして、元気そうでなによりです、と挨拶すると、老人は湯呑を置き、激しく咳き込んだ。

「世辞を言わずともよい。夏の終わりに風邪をひいて咳が残った。やつれたことは、自分でもわかっておる」

 老人は苦し気に言うと、懐紙を出して口を拭った。行動の一つ一つが年寄り臭い。惣介の上役だった頃からは想像できない姿だ。勤めから身を引き、有り余るほどの余暇ができると、人はこうも老け込んでしまうのか、と惣介は驚いた。

「加瀬の倅がどうして牢に入れられたか、ということだったな」

 老人は、すまぬ、と断ったあと、もう一度乾いた咳をした。

「はい。お知り合いの多い栗山くりやまさんなら、なにかご存じなのではないかと思いまして」

 二十畳ほどある広間にあって、場違いに思えるほど小柄な男に惣介は告げる。男は白眉の下の細い目を閉じると、重々しく息を吐いた。惣介はその様子をじっと見つめる。男が発する威圧感が薄らいでいる、と思った。かつては、こうして溜息をつかれると、間違ったことをしたのではないか、と自身の言動を振り返ったのだったが、今は、特別なものを感じることはない。

(やはり月日が過ぎてしまったのだ)

 目の前に座る老人は、惣介が出仕したときに直属の上司である郡奉行、また、惣介が代官、郡奉行に昇ったときには郡代を務めていた栗山ひよう右衛もんである。栗山は今から五年前に隠居して家督を息子に譲り、悠々自適の暮らしに入った。栗山が辞めてすぐのころは、惣介も勤めの相談をしにくることが多かったが、その後、次第に足が遠のくようになり、今回来たのは三年ぶりのことである。

「知り合いと言っても、相手は年寄りばかりだしの。それに、わしはすでに隠居の身。あの頃のように、なんでも耳に入れておこうという気にもならぬ」

「ほんの手がかりでよいのです。なにか知りませぬか」

 惣介は身を乗り出して言った。そうして栗山の表情をうかがいながらも、

(これは、ひょっとすると時を無駄にするかもしれぬな)

 と焦りを覚える。栗山は執政に加わっていた者としては珍しく、どこの派閥にも属さない男だった。そのくせ郡代を十五年務めた。派閥に属する人間が、そのときどきの形勢によって出世したり蹴落とされたりする中、郡代を長らく務めた栗山の経歴は特異である。それだけ農業を知悉していたことも関係していたし、百姓を味方につける術を心得ていたことも大きかった。重い年貢を課す福備において、それでも民が忍従しているのは栗山が郡代を務めているからだという噂が出たこともある。それほど栗山は農政をうまく回していた。歴代でも一、二を争う名郡代と言っても過言ではない。

 だが、栗山が郡代に居座り続けたのは、別の理由も影響していたのである。処世術だった。

 栗山はどの派閥にも属さない代わりに、誰よりも情報を得ることに長けていた。その情報をある人に渡したり、逆に対立する立場の者に渡したりと、巧みに出し入れすることで、執政たちから無視できない存在として認められたのである。栗山は誰からも必要とされることで、自分がもっとも得意とする農政で力を振るうことを可能にしてきた。

 惣介は、そんな栗山の情報網に期待して屋敷を訪れたのである。弥一を頼るのをあきらめたとき、真っ先に浮かんだのが栗山だった。あの町に住んでいたころ、惣介もまた、上役の栗山を家に招いて飯を馳走したことがある。そのときの栗山の親しみやすい態度が脳裏に浮かんできたのだ。

「勤めは退いたが、しかし、今回のことだけは多少、知っておる」

 なかば諦めつつあった惣介に向かって、栗山が細い目を開いた。

「まことですか?」

 惣介は思わず手をつく。栗山は、そんな惣介の気勢を削ぐようにゆっくりと茶をすすり、それから口をもぐもぐと動かして言った。

「加瀬の倅がつかまったから調べたのではない。今回、つかまった人間が、みな、久保くぼ派だったことに興味を持った。今後、執政内で動きがあるかもしれぬ。そう思い、何人かを調べに走らせたのだ」

「久保派? 清次郎は久保外記げきさまとかかわりがあるのですか?」

「なんだ、知らぬのか? 息子のことだろう?」

 栗山はあきれていたが、惣介が二年前まで西の国境付近の地域を担当させられていたこと、また、その後湊組に役替えになったことを思い出したらしく、それ以上は追及してこなかった。

 

(つづく)