ダイエット界で「神」と崇められる叔母のダイエット教室で、バイトを始めた気弱な30代童貞の恵太。教室をやめた元生徒を再入会させるように命じられたのをきっかけに、元同僚の小百合と一緒にさまざまな理由で「ダイエット迷子」となった女性たちと向き合う。
苦しみながら隠れてバターを齧る人、リバウンドするたび猛烈なダイエットに励む人……。彼女たちに本当に必要なのはダイエットなのか、それとも?
婚活や中年おひとり様など、現代社会のリアルを描いてきた南綾子の『痩せたらかわいくなるのにね?』(単行本時タイトル『ダイエットの神様』)がついに文庫化! 文庫化に際し、人気作家から推薦の言葉が届きました。
小百合フォーエバー!
……すみません、つい叫んでしまいました。
ダイエット経験のある人は全員読みましょう。
宮島未奈さん(『成瀬は天下を取りにいく』著者)
このさき、心がなんだか重たくなったと感じた時、わたしはきっとこの本を読み返すだろう。おそるおそる体組成計に足を乗せるようにして、ページをめくる。体脂肪率ならぬ心脂肪率を確かめるために。
寺地はるなさん(文庫収録解説より)
さらに、これから本書を手に取るみなさんへ著者の南綾子さんからのメッセージをお届けします。
以前のわたしは、外出先で全身がうつる鏡を見つけると、身だしなみを整えるためではなく、自分がデブじゃないかチェックのために立ち止まる癖がありました。今思えば、そんな自分が嫌で、自分で自分に「そんなことはやめろ!」と言いたくて書いたのが、2019年に出した『ダイエットの神様』だったのだと思います。
当時は過度なダイエットに警鐘を鳴らすのが、世界的なトレンドでした。しかし現在、人々の関心はダイエットから美容整形方面に移行しているのは明らかなので、文庫化にあたり加筆修正しながらそのあたりのことも少し盛り込んでみました。
美しさは千差万別で、偏差値を求められるものでは決してないとわたしはずっと思っています。けれどだからといって、自分自身の外見との付き合い方はまだよくわからない。もう外で鏡をのぞきこむことはなくなったけど、わたしの顔は今、シミをうすくする薬のせいであかくかぶれてぼろぼろです。シミは美しくないから。シミを放置していたら、誰かに見捨てられるかもしれないから。「そんな考えはやめろ!」と自分で自分にまだ言いたりないから、わたしはこの本をあらためて世に問うのかもしれないです。
痩せたいのは誰のため? 美しくなりたいのは何のため? ダイエットに成功したとしても出口があるわけではない、様々にこじれてしまった「見た目」にまつわるコンプレックス。それらを抱えた人々と対峙し、己の内面と向き合うことになる「新感覚ダイエット小説」、ぜひお手に取ってみてください。