『喜び』以外の感情をなくした不思議な高校生が、余命一年の音楽教師と出会い、『心』を取り戻していく。大切な涙は、最後に必ずこぼれる──
北の大津波に呑まれ沖晴は、死神と取引をしたという。『悲しみ』『怒り』『嫌悪』『怖れ』の感情を差し出し、『喜び』だけを残したまま生還した。だが、家族は死んでしまった。親戚の家をたらい回しにされ、高校生となった沖晴が辿り着いたのは瀬戸内海の階段町。笑うだけの不思議な高校生が出会ったのは、余命一年の音楽教師・京香だった。あたりまえの感情がない沖晴、あたりまえに笑うこともできなくなる京香。沖晴は普通の高校生になることができるのか。死にゆく京香は沖晴と出会い、大切なものに気づく。あたりまえの感情は、こんなにも愛おしい……
『タスキメシ』『風に恋う』青春小説の旗手による感涙傑作、待望の文庫化!