南綾子さんの最新小説『わたしは今すぐおばさんになりたい』(双葉文庫)が、12月10日に刊行された。
主人公・響は、輝かしいキャリアもなく、恋愛もうまくいかず、これといった人生の目標もないまま日々を過ごしている。海外で活躍する同級生や子育てに励む同期の存在に、どこか取り残された気持ちを抱える彼女が、社内でひそかに憧れている人物が「庶務のおばちゃん」こと桜子だ。
必要以上の仕事はしないけれど、ランチタイムは満喫し、独身でたのしく生きているように見える桜子。彼女との交流を通して響は少しずつ前へ進み、独身の女性がひとりで健やかに、憐れみを向けられることなくしあわせに生きるためのヒントを探し始める。
本書は、双葉社文芸総合サイトCOLORFULでの連載を書籍化したもの。連載中から毎話高いPV数を記録し、発売前のゲラを読める会員サイトNetGalleyでは、2025年11月掲載作品ランキング(集計期間:2025/10/1~2025/11末)において、PV2位、レビュー数3位、リクエス4位を獲得。発売前から注目を集めていた。
ここでは、寄せられたレビューの一部を紹介する。
響が感じている疎外感にとても共感しました。人でいるのが好きなのに、人と違うことがさみしい。そんなふうにさみしいとき、私は南さんの作品を読みたくなります。とても現実的で、なのに勢いがあって、時々声を出して笑ってしまう。今作にも元気と勇気をもらいました。
(書店関係者/NetGalleyより)
普通、架空の話なら大逆転が起きるし、奇跡も起きるけど、助けを求めても誰の応答もない。ズタボロになりながらも日々を過ごしているうちに、誰の助けもなくのりきった。友達にも男にも頼らなくても(頼れなくても)なんとかなった。荒れた海から抜け出た彼女に、ただただ拍手喝采だった。私たちはひとりでもなんとかなるのだ。
そしていろいろなものにぶつかられ傷だらけになり、いつしかおばさんという最強の鎧を身につける。そんな未来を恐れることはないのだと言われた気がする。おばさん最強!
(書店関係者/NetGalleyより)
まず、社内にいる無害そうで幸せそうな「おばさん」の解像度の高さに驚きました。人に対しておせっかいなようで、無責任。会話の内容は他愛もない話ばかり。しかし、彼女らの「おばさんらしさ」を形成しているのは、彼女ら一人ひとりの過去からの積み重ねであり、それが生きる術であったのだと感じます。
一人で生きていく道は、桜子や町田のような先人たちが切り開いてきた道で、その知恵が連綿と受け継がれていくであろうことに希望を感じました。
(レビュアー/NetGalleyより)
南綾子さんからのコメント
数年前、「他人の承認を得なくても、幸せに生きている人の話を書いてほしい」と担当編集者さんに言われたとき、それをどうかたちにすればいいのかわからず、一旦保留にしてしまいました。「それって、完璧人間過ぎて書くことなくない?」と当時わたしは思いました。主人公には、物語を動かす悩みや葛藤がかかせません。
たぶん、他人の承認を得なくても云々は、担当編集者さんの願望でもあるのです。そしてそれは、わたし自身も同じだと気づきました。仕事で成功できなくても、誰からもプロポーズされなくても、落ち込まず元気に暮らしたい。完璧人間でない自分でも、そうなりたい。なので、これは誰より担当編集者さんへむけた物語でありますが、わたしと彼女の思いに共感いただける方は、きっとたくさんいると信じて書きました。ぜひお読みください。
現在、試し読みが無料で公開されている。
最強の「おばさん」が繰り広げるストーリーをぜひチェックしてみてはいかがだろうか。
https://colorful.futabanet.jp/articles/-/5783