2025年の秋に、WOWOW「連続ドラマW 1972 渚の螢火」として高橋一生さん主演でテレビドラマ化が決定した坂上泉の『渚の螢火』が双葉文庫から刊行された。

 

 今から53年前の5月15日。沖縄が本土に復帰した。それに際して、通貨もドルから円へ交換する作業が実際に行われたのだが、本作はそれを題材にしたサスペンス小説だ。回収したドルを輸送している銀行の現金輸送車が襲われ、100万ドルが強奪される。主人公である琉球警察の真栄田太一は極秘裏に事件解決を命じられるが……。

 

 戦前、戦中、そして米軍管理下に置かれた戦後まで、沖縄が辿ってきた過酷な現実を描きつつも、クライムサスペンスとしても楽しめる本作は沖縄本土復帰50年となる2022年に単行本として発売され、このたび文庫化した。今年は終戦80年の節目の年。あらためて、本作を通して、沖縄に思いを馳せてもらいたい一冊だ。

 

【あらすじ】
1972年春。本土復帰を控えた沖縄では、それまで使用されていたドル札を円に交換する必要があるため、島中の現金を回収していた。そんな最中、現金輸送車が襲われ100万ドル(当時のレートで3億円以上)が奪われてしまう。本土復帰の直前であり、高度な外交問題に発展する恐れがあるため、琉球政府および琉球警察上層部は日米両政府に秘匿したまま、極秘裏に事件を解決するよう指示をする。任務をうけた真栄田太一警部補は、様々な葛藤を抱えながら事件解決に挑むが……。昭和史ミステリーの新鋭が描くノンストップサスペンス。

 

沖縄を象徴する主人公が事件の捜査に当たり、アメリカ占領下、沖縄の地に積み重ねられていった理不尽、矛盾を目の当たりにする。(中略)そんな物語の最高潮に沖縄返還その日をぶつけることで、本作は円環の輪を閉じるのだ。実にスマートな終盤戦である。
(谷津矢車「解説」より)

 

 

◆ドラマ情報
2025年秋予定
WOWOWにて放送・配信

 

【原作】
坂上泉
【出演】
高橋一生 ほか
【脚本】
常盤司郎 倉田健次
【監督】
平山秀幸
【音楽】
安川午朗
【プロデューサー】
高江洲義貴 廣瀬雄
【制作プロダクション】
東北新社
【制作著作】
WOWOW
【公式サイト】
WOWOWオンライン
https://www.wowow.co.jp/drama/original/1972nagisanokeika/