2020年に第42回小説推理新人賞を受賞した藤つかさ氏による待望のデビュー作『その意図は見えなくて』が刊行された。本作は高校生たちが日常で起こる事件を解決していく青春ミステリーの連作だが、描かれているのは「青春」からイメージされるキラキラした眩しいものだけではない。人間の不器用さや嫉妬心、劣等感も隠すことなく描写し、現役高校生から大人まで幅広い層が共感する内容になっている。

 選考委員・大倉崇裕、長岡弘樹、湊かなえ各氏満場一致での受賞となった『その意図は見えなくて』を著者メッセージとともにご紹介する。

 

 生徒会選挙で集まった「白票」の謎を追う「その意図は見えなくて」(受賞作「見えない意図」改題)、部室荒らしの犯人を捜す「合っているけど、合っていない」など、各話の中で謎が提示され、登場人物達が解決に奔走する。しかし、本作はミステリーの「お約束」に従いながら、謎が解決されても解消されることのない問題も描いている。犯人が判明したあと、その人物が抱えていた問題までどうにかしよう、どうにかしたいと主人公たちは思い馳せるのだ。

 推理したから終わりではないと訴えかける姿勢は挑戦的でありながら大きな読みどころになっている。

 

【著者からのメッセージ】
 十代の頃、大人に「青春してるなあ」と言われるのがどうも苦手でした。

 当時の私の日常は、答えのない問いに追いかけ回されているような、居心地の悪い焦燥感で満ちていました。十代が大人に羨望されるほどのものだとは、とても思えなかったのです。私が社会人になってしばらくして、学生を見て「青春してるなあ」と羨んでいる自身をふと見出しました。なんだか十代の頃の自分に謝りたい気持ちになり、この物語を書き始めました。

 本作では十代の登場人物が、いくつかの問題に直面します。その問題とはミステリーとして答えのある事件でもありますし、多くの人が思春期に向き合うであろう答えのない問いでもあります。この物語は後者に軸足を置いていますが、それは前述した執筆の経緯が理由の一つだと思います。

 若い読者の方が本作の登場人物に親しみを、大人の読者の方が懐旧とともに疼きのようなものを感じていただければ、著者として嬉しい限りです。

 

藤つかさ(ふじ・つかさ)
1992年兵庫県生まれ、大阪府在住。2020年に「見えない意図」(単行本収録時に「その意図は見えなくて」に改題)で第42回小説推理新人賞を受賞しデビュー。

 

『その意図は見えなくて』のレビューこちら
https://colorful.futabanet.jp/articles/-/1459

【試し読み】『その意図は見えなくて』の第1話を丸ごと試し読み
https://colorful.futabanet.jp/articles/-/1430