10代のまぶしさだけでなく痛々しさや息苦しさの表現が評価され、小説推理新人賞でデビューした藤つかさ氏。待望の第二作では、デビュー作『その意図は見えなくて』と同じ高校を舞台にし、女生徒の視点で二日間の「何か起こりそうな」文化祭を描く。

「小説推理」2024年1月号に掲載された書評家・大矢博子さんのレビューで『まだ終わらないで、文化祭』の読みどころをご紹介します。

 

まだ終わらないで、文化祭

 

■『まだ終わらないで、文化祭』藤つかさ  /大矢博子 [評]

 

何かが起きるかもしれない、不穏な予感をはらんで文化祭は始まった。問題を起こしそうな複数の部活と実行委員会──それぞれの思惑の行き着く先は?

 

 リリカルな青春群像劇の下に企みに満ちたミステリと若者の痛みを忍び込ませたデビュー作『その意図は見えなくて』で、曲者ぶりを世に知らしめた藤つかさ。待ちに待った第2弾も青春群像劇であり、緻密な伏線と意外性に彩られたミステリである。

 舞台は八津丘高校の文化祭。代々、予定にないサプライズ企画が名物で、生徒たちもそれを楽しみにしていた。ところが2年前、そのサプライズの度が過ぎて教師がケガを負い、ネットで炎上。テレビにも取り上げられる大問題となってしまった。

 そのため昨年はサプライズを自粛。しかし今年の文化祭当日、曰く付きである2年前の文化祭のポスターが掲示板に貼り出されるという事件が起きた。まるで「今年はやるぞ」と言わんばかりではないか。教師に頼まれた文化祭実行委員の市ヶ谷のぞみたちは、サプライズをやりそうな部活に聞き込みに行くが──。

 面白いのは、のぞみが聞き込みに行った先の部員それぞれの物語が綴られること。そのひとつひとつにドラマと、ちょっとした謎と、その謎解きがある。サプライズ企画を見て入学を決めた軽音楽部員が気づいた違和感。家庭科部員の何気ない会話に隠された思いがけない〈真相〉。2年前の炎上事件の意外な背景。

 そして聞き込んだ先の話からポスターを貼った犯人を絞っていくのだが、話はそこから思わぬ方向に流れていく。終盤の展開にはこう来たか、と思わず笑みがこぼれた。

 何より生徒たちの描写が素晴らしい。この年代ならではの鬱屈や、葛藤や、見栄がある。肥大した自我に振り回され、他人と比べ、「こう思われたい自分」にこだわる。

 ああ、10代だ。懐かしくも痛々しい、未熟であるがゆえに眩しい、そんな10代の姿がページから立ちのぼる。何かをしたい、何者かになりたい、でも方法がわからない。大人から押し付けられる規律は嫌で、でも自分で何がしたいかはわからない。「自分」がいちばんわからない。日常では見ないふりができたそんな本心が、文化祭という非日常で浮き彫りになる。見えてしまった本心は、その変化は、もうなかったことにはできない。だから、まだ終わらないで──と願ってしまうのかもしれない。

 誰もが味わうような青春の痛みと苦み。それを著者は、実にテクニカルなミステリの構造の中に落とし込んだ。それを両立させる技術にも瞠目の一冊。