4月4日(月)よりNHK総合〈夜ドラ〉にて放送スタートが発表され、井上祐貴さん、桜田ひよりさん、滝沢カレンさん、中尾明慶さんをはじめとする豪華キャストに期待が高まる「卒業タイムリミット」。
本年度の大藪春彦賞受賞の気鋭・辻堂ゆめによる同タイトルの原作『卒業タイムリミット』がこの度、待望の文庫化となった。
本作は〈72時間以内に謎を解かないと、憧れの先生は死ぬ──〉という、誘拐犯からの挑戦を受け取った4人の高校生を中心に描かれる青春ミステリだ。
文庫刊行に際し、ドラマ化帯と、単行本刊行時に「小説推理」2020年1月号に掲載された書評家・大矢博子さんのレビューにて『卒業タイムリミット』の読みどころをご紹介する。
ドラマ開始前に読んでも良し、ドラマを観てから違いを楽しむのも良し。『卒業タイムリミット』をとことん楽しむために、まずはレビューからお楽しみください。
■『卒業タイムリミット』辻堂ゆめ /大矢博子:評
人気教師の監禁事件を解決すべく集められた4人の3年生。3日後の卒業式までに謎は解けるのか?青春の痛みときらめきに心が震える学園ミステリ。
これは鮮やかだ!
学園ミステリを構成する数々の青春の痛みときらめきがどちらもたっぷりで、さらに思わぬ方向からの真相と後でわかる細やかな伏線。読み始めたときの予想をはるかに超えた場所に着地してくれた。
卒業式を3日後に控えた私立欅台高校で、生徒からの人気の高い女性英語教師・水口が誘拐される。監禁の様子を撮影した動画とともに72時間後に始末するという予告がネットにアップされ、校内は騒然となる。
そんな時、3年生の黒川良樹は自宅に奇妙な郵便が届いていることに気がついた。そこには4人の生徒への呼び出しと「誘拐の謎を解け/真相は君たちにしかわからない」という文言が。集められたのは爽やかな体育会系男子、学年1の美女、学年トップを争う秀才女子、そして教師の手を焼かせた不良の良樹。なぜこの4人が? そして4人は犯人が学校関係者であると推理するが……。
というのが本書の導入部だ。4人は水口の周囲を調べたり、信頼できる教師に頼んで警察の情報をもらったり、水口と確執のあった教師を洗い出したり。と、ここまでならまだ普通。もちろん謎はそこで終わらない。本書最大の謎は「なぜこの4人なのか」だ。
どうもこの4人がそれぞれワケありっぽいのである。欅台高校には教育熱心な理事長の方針で、お題に沿って自分の考えや体験、悩みを書いて提出する「告白カード」と呼ばれるシステムがある。卒業前の3年生に与えられたお題は「高校生活で悔しかったこと」。匿名で挿入される複数の「告白カード」がポイントだ。そこにはそれぞれ特定の教師とのエピソードが綴られていて、内容から見るにどうもこの4人の……。
いやいや、明かすのはここまでにしておこう。ありていに言えば、真犯人が誰かという点については、予想できる読者もいるだろう。だが本書の核はその先にある。そしてその「先」が明かされたとき初めて、この物語に仕掛けられた真のトラップが浮かび上がるのである。
解かれるべきはそこだったのか、とのけぞった。読みながら「ははん、見当ついたぞ」とほくそ笑んだ自分が恥ずかしい。しかもこの4人組がすばらしく魅力的で、彼らをいつまでも見ていたいような気持ちになる。青春ミステリとして文句なし! その後の彼らが再び一堂に集う続編を今から期待している。
▼2022年4月4日(月) NHK総合〈夜ドラ〉放送スタート予定!
月曜~木曜 22:45~23:00 全24回
出演 井上祐貴 桜田ひより 西山潤 紺野彩夏 滝沢カレン 仙道敦子 中尾明慶 北山宏光 ほか
製作開始のお知らせは、こちらをご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/460631.html
▼表題作「卒業タイムリミット」の試し読みはこちらから
『このミス』大賞出身作家が送る青春の光と影を描いたタイムリミット・ミステリ!
https://colorful.futabanet.jp/articles/-/1315
▼『卒業タイムリミット』の魅力と、収録作のあらすじをご紹介!
ドラマ放送開始! 先が気になるNHK夜ドラ『卒業タイムリミット』原作本であらすじを先読み!
https://colorful.futabanet.jp/articles/-/1280