■ゲーム

 

【好きなこと】

 僕はゲームを作るのが好きだ。テレビ番組で自作ゲームを披露したこともあるから、なんとなく知っている人もいると思う。幼いときは、ほとんど友達もいなかったし、1人でできるゲームをたくさん考えていた。それは大人になっても変わらない。ゲームを作り始めたきっかけにはちょっとした理由があるのだ。

 

【母と兄と父】

 僕には3歳年上の兄がいる。彼は賢くて成績優秀、さらに運動神経も抜群だった。逆に自分は勉強もできないし、運動もできない。そんな差を悔しく感じながらも少年時代を過ごしていた。

 そして小学5年生のとき、前章でも書いた両親が別居するという事件が起こる。兄との話題は当然、母か父かのどちらについていくか、という話だ。

 子どもなりに考えて迷っていた矢先、勉強すると言って机に向かっていく僕にお父さんは目の前で「お父さんはお兄ちゃんがいてくれればいいから」と言い放った。しかも「茂樹はあかんと思う」と追い打ちまでかけてくる。この言葉が小学5年生の自分にはとてもつらくて、それを聞いて僕は涙を流し、再び机に向かった。

 

【悲しみとゲーム】

 悲しいことがあるうえ、親同士のケンカも絶えない。この悩みを友達に言うわけにもいかず、学校の先生に相談して協力をしてもらうことにした。いままでのことを話すと、とても熱心に聞いてくれ、親に電話までしてくれたのだ。僕はとてもうれしかったし、これでなんとかなるかもしれない、と淡い期待さえ抱いていた。

 しかし、他人にケンカをしていることを話されたのが母親の逆鱗に触れてしまい、こっぴどく怒られてしまう羽目に……。これで負のループが完成である。心が疲れてしまった僕は人間不信に陥って、誰も信用しなくなっていた。

 そんなときに心を癒してくれたのがゲーム作りである。このときは「大仏様に聞け」というゲームを作った。まず、大仏様に吹き出しが書いてある「大仏カード」というものを作る。それとは別に相談の答えになりそうな言葉を書いた「答えカード」も複数枚、用意しておく。そしてこのカードをシャッフルして裏返しにしたらゲームスタート。相談事に対して「答えカード」を引けば、書いてあるものが大仏様のありがたいお言葉になるという構造になっている。これで悩みを解決していこうという遊びだ。

 

悲しみとゲーム

 

【大仏様】

 さっそくこれで遊んでみた。「大仏様、すみません。親がケンカしているのですがどうしたら良いでしょうか」と悩みを打ち明け、答えカードをめくる。すると「明るく生きればいい」という言葉が出てきた。これはすごくいい答えだ。「ありがとうございます」と感謝の言葉を述べて、またカードを伏せた。そして調子に乗ってまた同じ質問を大仏様にぶつけて答えをめくると、今度は「野菜を食べなさい」という答えだった。僕は「野菜を食べればいいんですね。ありがとうございます」と小声で感謝する。

 正直、悩みを解決するというよりも、何が出てくるのかわからないのがとても楽しい。僕はとても苦しく悲しい思いをしていたが「大仏様に聞け」に没頭したことで、少しだけ心が軽くなっていった。大仏様には感謝しかない。

 この後、僕は正月に親戚一同が集まる場所でみんなが遊べるボードゲームを手作りしたり、数少ない友達には自作の完全オリジナルゲームブックで遊んでもらったりと次々とゲームを開発していった。みんなが楽しく遊んでくれたのが何よりもうれしかった。

 

大仏様

 

【妄想とキン消し】

 自作のゲームも好きだが、幼少期からおもちゃも大好きだ。小学5年生で山口県に引っ越した後も中学2年生くらいまでは人形遊びにハマっていた。特にキン消しは大のお気に入りで、実家にはいまだにコレクションした物がたくさん保管してある。僕は自分が持っているキン消しや人形、漫画のキャラクターを頭の中の妄想に登場させたりして楽しんでいた。この遊びをするのは決まって学校の帰り道。引っ越した山口の家は母子家庭だったこともあり、とても小さくプライベートの空間がない。お母さんもいるし、1人で遊ぶこともできないから、家までわざと遠回りして夜遅くまで歩きながら妄想に浸って帰っていた。たとえばキン肉マンたちと遊園地に行ってジェットコースターに乗ってみたり、漫画のお気に入りのキャラクターとデートしてみたりと、そんな感じのものが多かったと思う。

 

【自立は大事】

 そんな一方で、お風呂など1人でいる時間ができたときは、キン消しと人形を使ってしゃべりながら遊んでいた。これは大人になっても続けていたことである。協力して敵を倒したり、戦いをしてみたり……と、リアルなものがあるぶん、これはこれで楽しかったりする。ここで僕がこだわっているのは「自立する人形であること」だ。 逆にいえば、立たない奴は嫌いだし認めていない。実家の人形の中でも、自立する奴はレギュラーで、倒れてしまう奴は万年補欠である。これは会話の中で「こっちに行こう」とか「あの敵を倒すぞ」という話になったときに自立していないと物語が成立しないからだ。倒れていたら倒れていたで「なに倒れてるんだ。早く行くぞ!」なんてセリフが出てくるのだが、そこから先には進めない。だから立たない奴は熱湯をかけて矯正をし、自らの足で立つよう直し続けていた。なお、キン消しはもとから自立するように作られていたのでよくレギュラー入りを果たしていた。信頼のおける奴らである。

 

自立は大事

 

【仕事になる】

 大人になってからは、1人で外へ繰り出し自作ゲームをしていた。時間を区切って自販機を見つけてはオロナミンCを探し、見つけたら買わなくてはいけない「オロナミンCゲーム」をやってみたり、散歩しながら「中西」という名前の家を見つけ出しては庭や門をちらりと横目に見て、どんな暮らしぶりや趣味をしているかなど妄想して遊ぶ「中西ゲーム」をやっている。

 そして、2018年には僕が出演するバラエティ番組『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)で高畑充希さんを題材にした「高畑充希 収穫祭ゲーム」を本人に遊んでいただいたこともある。これは畑に隠れた「高畑充希カード」を見つけた人の勝ちなのだが、「高畑あずき」「赤坂見附」など偽物が隠れているというものだ。

 

【幼稚とかわいげ】

 没頭できるゲームの開発、いろいろな登場人物が織りなす妄想の物語を作ってきたことが、なすなかにしの中西茂樹を作っている。子どもの頃のことが大人になって身になるのだな、と感じることが多々あるからだ。実際に子どもの頃に何もしてこなかった人は、大人になってから何もないということも見てきた。

 思春期になると格好つけたがって、この「幼稚さ」を邪魔者扱いし、嫌ってしまう人もいる。だけど、僕にはこの「幼稚さ」が大切で手放せないものだ。これが次第に育っていったら「かわいげ」に変化して、仕事でも大事な役割を果たすようになる。 これは僕だけの話ではなくて、みんなにも当てはまる話なのだ。これからもこの気持ちを忘れないように日々を生きていこうと思う。

 

「いまのところ」は全3回で連日公開予定