2018年『崩れる脳を抱きしめて』、2019年『ひとつむぎの手』、2020年『ムゲンのi』と本屋大賞にノミネートされ続け、どの作品も累計で10万部を超える大ヒット。これらの作品はすべて知念実希人氏の作品である。魅力的なキャラクター、斬新な舞台設定、予測不可能などんでん返しと感動の結末──作品の完成度はどれも高く、中高生の読者も多いことが作品のリーダビリティーを証明していると言えよう。医療ミステリーのトップランナーとして、いま最も注目を集めている小説家だ。
そんな知念氏が「魂を込めた最高傑作」と自ら語るのが『ムゲンのi』なのだ。単行本発売前の2019年7月、本作について「命を削り、魂を込めて書き上げた私の最高傑作です。めくるめく夢幻の世界と、そこに秘められた謎をご堪能ください」とメッセージを発信している。本作は医療ミステリーであり、ファンタジー小説でもある。
神経内科医の識名愛衣は、眠りから覚めない謎の病気〈特発性嗜眠症候群〉通称・イレスの患者を同時に3人も担当することになった。治療法に悩む愛衣は、霊能力者・ユタだった祖母から受け継いだ力を使って、患者の夢幻の世界に飛び込み、魂の救済〈マグイグミ〉をする。やがて、イレス患者の心の傷は、都内西部で頻発する猟奇殺人と、23 年前の少年Xによる通り魔殺人とも繋がっていることがわかる。
タイトルに込められた「ムゲン」とは〈夢幻〉なのか〈無限〉なのか。「i」とは主人公〈愛衣〉の名前か、LOVEを意味する〈愛〉か、私の〈i〉なのか……。すべての謎は下巻にて明らかになるので、楽しんでもらいたい。本作にコメントを寄せたTikTokで話題の小説紹介クリエイター・けんごさんは「衝撃のラストに熱い涙が止まらない。全ての『謎』が繋がった瞬間、タイトルの意味に心震えました。幾重にも重なる仕掛けに驚かされること間違いありません!」と太鼓判を押す。なお、本作はけんごさんがその年のベスト作品を選ぶ「けんご大賞」2019年の大賞作品に選ばれている。
現在、知念氏は、『硝子の塔の殺人』が2022年の本屋大賞にノミネートされ、「天久鷹央」シリーズが吉川英治文庫賞の候補となっており、今年もその活躍から目が離せない。