良いことがあった幸せな気分の日も、辛い気持ちに押しつぶされそうな日も、どんな時だって、人はお腹が減ります。それでも忙しい日々を過ごしていると、食べるものに無頓着になったり、「さて今日は何を食べようか」とメニューに悩んでしまったりすることもあるのではないでしょうか。
そんな方にぜひお薦めしたいのが、4人の人気作家が「たべもの」をテーマに描く珠玉のミステリ作品集『おいしい推理で謎解きを たべもの×ミステリ アンソロジー』。
カバーイラストにもある温かいポトフや、ふわふわかき氷、それから甘酸っぱいトマトサラダに、とろりと舌の上でとろけるチョコレート……。“おいしい”と“謎”で紡がれる極上のミステリ集には、様々な料理が登場し、食欲を刺激してくれること間違いなしです。
1.「嘘つきなボン・ファム」(友井羊・著)
仕事場での対人関係に悩む女性編集者の理恵は、早朝にひっそりと営業しているスープ屋で提供された絶品ポトフを味わう。理恵を気遣う店主の料理とやさしい推理に心が温まる──。
2.「レモンパイの夏」(矢崎存美・著)
高校生の佳孝は、友達と急に連絡が取れなくなってしまう。少ない手がかりをもとに捜し始めるも、出会えたのは友達ではなく、なんと人の言葉を話す「ぶたのぬいぐるみ」だった!
3.「大雨とトマト」(深緑野分・著)
大雨の中、隣町に住む少女がわざわざ食べにくる、バルサミコ酢で和えたトマトのサラダ。それぞれの人物が抱える秘密が織りなす、予想外の着地点は必読!
4.「割り切れないチョコレート」(近藤史恵・著)
とろりと舌の上でとろける、話題の専門店が作る甘くてにがいチョコレートの描写がたまらない! 複雑な心境を紐解くシェフの推理にも注目。
仕事で疲れた心と体を癒してくれる味や、店主のやさしい気遣い、大切な人を捜していた矢先に訪れた新たな「出会い」に、登場人物たちが抱える秘密……。おいしい料理の先にある「温かくてときどきヒンヤリ」な結末は、何度でも味わいたくなります。
ついジャンクフードで済ましてしまう日があってもいいけれど、たまにはこんな絶品の「料理」と「推理」の余韻に浸るのはいかがでしょうか。きっと幸せな一日をお約束します。