白尾悠さんによる最新刊『隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい』は、私たちが日常で忘れがちな「隣人」同士の緩やかな連帯を描いた連作小説です。
読後はきっと、自分も誰かにとっての良き隣人でありたいと願わずにはいられない。そんな本作の読みどころを、全国の書店員さんたちの熱いメッセージと今回特別に公開される動画でお届けします。
物語の舞台となる「ココ・アパートメント」は、心地よい暮らしを作るために住人が協働するコミュニティ型マンション。北欧で誕生した「コ・ハウジング」という住まい方がベースになったこのような賃貸マンションは、実際に小説のモデルとなったマンションも含め、日本国内に複数存在します。
「ココ・アパートメント」の特徴
・月に数回、当番が食事を作りみんなで食卓を囲む共同食事会がある(強制ではない)
・各部屋にある水回りとは別に、住人共用の巨大なキッチンやランドリールーム、リビングがある
・シェアハウスより個々の家庭のプライベートは確保されながら、緩やかに住人同士が繋がっている
それぞれの部屋の住人たちは、様々な事情を抱えています。義理の姉の死をきっかけに、甥っ子の面倒をみることになった40代独身女性。子供を持つことに恐れがあり、恋人との結婚をためらう30代男性。娘を守るために秘密を抱えるシングルマザー。謎めいた過去をもつお婆さん……。
家族でも友達でもない、世代も家族構成も違う「隣人」という距離感だからこそ打ち明けられる悩みがあり、手を差し伸べられることもある。そして互いに何気ない言葉に救われたり、自分でも気づかぬうちに相手を助けていたりすることに気づかされます。
「私たちは家族じゃないし、それぞれの哀しみを共有することはできないけど、せめて、泣いてる時間くらい、たまには共有してもいいかなって」
「子供にとって安心できる場所はいくつあってもいい。私のようなジジイがよその子供のためにできることは、せいぜいそういう場所を増やしたり、守ったりすることくらいなんよねぇ」
(本文より一部抜粋)
隣人たちに最後まで心を開けず、マンションを去る初老男性に、発達特性のある住人の男の子がかけた言葉は、「さよなら」ではなく「いってらっしゃい」でした。見送られた男性も、次の居場所では誰かの良き隣人になれるかもしれない。そんな期待や救いも感じさせてくれる物語です。
こんな場所があったら住んでみたい。… pic.twitter.com/kkyKczqCME
— 双葉社文芸出版部 (@shousetsusuiri) November 27, 2024
『隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい』紹介動画
著者・白尾悠さんからのメッセージ
東日本大震災のときも、コロナ禍のときも、私は当時住んでいた部屋の隣人たちの、顔も名前も知りませんでした。もしもあの頃彼らと言葉をかけ合うことがあったなら、互いに少し心が軽くなる瞬間があったのでは、と思いながら書きました。
全国の書店員さんから寄せられた感動の声
自分とは合わないと思う人がいても、関わってみたら
世界が変わるかもよって、教えられた気がした。
(紀伊國屋書店相模女子大学ブックセンター 藤井亜希さん)
2024年一番泣いた作品です。住民の頑なな心が変化してやがて信頼関係が生まれていく。何度でも読みたくなる。
(明文堂書店氷見店 二谷由美さん)
読み終わった時にタイトルを見返して「あぁ、すごくタイトル通りだ」と全身が温かくなる作品でした。人との距離が分かりづらい今の時代にこんな生き方はとても羨ましく感じ、誰もが幸せであってほしいと願いたくなりました。
(岩瀬書店富久山店 吉田彩乃さん)
幸せにつまずいてしまった時、まわりに助けを求めたい時、ひとりでは生きていけない時、そんな時にココ・アパートメントのことを教えてあげたい。背中を押してくれるような物語。
(丸善ヒルズウォーク徳重店 熊谷由佳さん)
もっとずっと読んでいたかった。多くの方に手に取ってほしいと祈るとともに、
私自身一生手放さない一冊になるだろうと思う。
(福岡金文堂志摩店 伊賀理江子さん)
家族や友人、自分の近く(隣)にいるすごく大切な人のことをいっぱい、いっぱい、考えさせてくれる作品でした。様々な社会問題が盛り込まれていて、いろいろなことで悩んでいる方の力になることができる作品だと思います。
(宮脇書店和歌山店 岩瀬竜太さん)
登場人物たちが抱える感情や葛藤がとても生々しく現実的で、そのほとんどが読み手である自分の中にも存在し、共感するものでした。濃厚な読書体験、読むことができて本当に良かった。
(ブックスオオトリ四つ木店 吉田知広さん)
もう泣いた。人は一人じゃ生きていくのが困難で、側にいてくれる人、気にかけてくれる人がいるのは幸せなことだと感じた。
(宮脇書店総本店 栗本倫成さん)
◆『隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい』の試し読みはこちらからhttps://colorful.futabanet.jp/articles/-/3790
【あらすじ】
心地よい暮らしのために住人同士が協働するコミュニティ型マンション「ココ・アパートメント」を舞台に、様々な事情を抱えた多世代住人の心の交流を温かな筆致で描いた連作小説。家族と離れて暮らす男子高生、結婚や出産に惑うカップル、シングル家庭の親子、秘められた過去を背負う老女……。家族でも友達でもない、「隣人」のささやかなコミュニケーションをとおして、それぞれの心の変化や「新たな歩み」を描いた救いの物語。