コロナ禍をきっかけに、自宅でも気軽に美味しいものを食べたいという人が増え「お取り寄せ餃子」の人気が殺到。その種類はなんと1500種類以上というからビックリ。今回は、誰もが好きな国民的グルメの秘密を、小説『皿の上のジャンボリー』(上下巻)を執筆した蜂須賀敬明さんと、一般社団法人焼き餃子協会の代表理事である小野寺力さんに熱く語ってもらいました!
西は京都、東は群馬県がスタンダード!
──深い、実に深いですね、餃子ヒストリー。その焼餃子が生まれてから70年以上が経つわけですが、最近ではこんな変わった餃子あるよとか、これが注目の餃子だとか、あれば教えてください。
小野寺力(以下=小野寺):変わりダネの餃子もいろんな地域で作られていますが、イベントを開催したときに、一番評価が高いのは結局スタンダード餃子なんです。変わりダネで目を引いて、スタンダードで締める……みたいなパターンが王道です。そのスタンダードも、西日本のひとつとしていえば、「餃子の王将」の発祥である京都でしょう。では、関東のスタンダードはどこかといえば、実は群馬県なんです。日本一売れている味の素冷凍食品の「ギョーザ」も「大阪王将 羽根つき餃子」も群馬に工場がある。輸送がしやすい立地であり、群馬はキャベツやブランド豚肉の名産地でもあります。水沢うどんもありますし、小麦粉を練る技術も高い。群馬の餃子を食べてみると、「いつも食べてるのはこの味だ」ってなります。「餃子のみまつ」は都内のスーパーでもけっこう並んでいます。
──小野寺さんは『マツコの知らない世界』でも群馬の「餃子の金星」をオススメしていましたね。あれは私も食べましたが、シンプルでおいしく、完成度が高い!
蜂須賀敬明(以下=蜂須賀):実は、グンゾーの出身地も群馬なんですよ。
──群馬の餃子事情を加味して群馬出身にしたんですか?
蜂須賀:いえ、まったくの偶然です。
小野寺:なるほど。そこでつながってしまうのか。餃子の摩訶不思議なところですね。
蜂須賀:やはり、餃子の持つ不思議な力。「縁」ですね。僕は小説の中で一貫して、「餃子は人と人を結ぶ食べ物」だと書いたんですが、それは間違っていなかった!
小野寺:本当ですね。これだけ、日本全国で餃子がたくさん作られているわけですが、冷凍技術と輸送技術が優れているので、全国どこでもおいしい餃子が食べられるのはすばらしいことです。もともと消費量としては宇都宮、浜松、そして3位が宮崎だったんですが、2020年の上半期で宮崎が1位になりました。
──根本的なところに立ち返って聞きたいのですが、小野寺さんが餃子に魅入られたきっかけってなんなんですか?
小野寺:最初は宇都宮の有名店「正嗣」(まさし)を友人が持ち帰ったところから始まりました。「いっぱい買って帰るから、みんなで食べようって」って友達を誘ったところ、50人くらい集まったのがきっかけです。2013年のことでした。小さいころは別に餃子が好きでもなかったんですよ。私が育った仙台には当時「餃子の王将」もなかったし、そんな文化もありませんでした。でも、33歳の時に離婚して高田馬場で一人暮らしを始めて、近所の「餃子の王将」で毎日食い続けました。当時は店舗によって味の違いが結構あり、高田馬場店は結構うまかった。今日はチーフが焼いているから食べよう、店長だからやめとこうみたいな感じになるまで通い詰めたんです。金曜日は生餃子持ち帰りが50円引きだったんで、それで餃子を焼くようになりました。
歴史のある名店はやはりうまい!
──なんで毎日食べ続けたのですか?
小野寺:いやあ、単純に餃子はおいしいからです。
蜂須賀:いいですねえ。いろいろあったうえでの一人暮らし、そして餃子。しかも、高田馬場。何か文学的な匂いさえしますね。自然と足が餃子屋に向いたんでしょう。そのころ、僕も早大生だったんで、高田馬場にはよく出没していました。すれ違っているかもしれませんね。
──お取り寄せは本当に楽しいですよね。小野寺さんのオススメを教えてください。
小野寺:歴史の重みがある餃子をこの機会に食べていただきたいですね。ぜひ、小説を読んだうえで。蒲田の『你好』も通販をやっております。ぜひ食べてほしいです。ちなみに伝統あるお店でいえば、乃木坂の『珉珉』もお取り寄せできます。東京の有名店では飯田橋の「おけ似」もやっております。あとは京都の「マルシン飯店」。店主は二代目なんですが、お父さんの味を継ぎながら攻めていますよ。餃子専用ビールを開発しました。宮崎では高鍋町の「餃子の馬渡」です。創業53年の名店で、ここから宮崎の餃子は広まりました。高鍋町は人口2万人ほどの町ですが、餃子屋が18軒もあるんです。その餃子王国の洗練された味を楽しめますよ。
──最後に、お二人とって餃子とはなんですか?
蜂須賀:自由の象徴です。自由の女神は餃子を持っているべきだと思います。作中でも言いましたが、具も皮も大きさもどう作るかも自由です。簡単にも作れるし、こだわれる。そうした自由の象徴であることをこの作品を通して伝えたかったんです。
小野寺:同じような思いですね。餃子の「餃」は「食」で「交わる」です。蜂須賀さんが小説で書いているとおり、餃子には人と人とをつなげる機能が備わっている。「あの店の餃子が好き」っていうだけで、話は広がりますから。いま、焼き餃子協会の活動をしているのも、餃子で多くの人をつなげたいからなんです。
蜂須賀:やっぱり餃子はすごい! 言われて、今初めて気が付きました! 餃子には「交わる」という字が入っているんですね。これだけ、餃子のことを書いていたのに気づきませんでした!
※本記事は、2021年1月に公開された『日刊大衆』の「小説『焼餃子』著者×日本一食べる餃子番長アツアツ対談『餃子の魔力』」を再構成したものです。
【あらすじ】
1940年、首相暗殺に失敗した陸軍中尉のグンゾーは瀕死の状態で朝鮮に流され、死の淵で神秘的な食べ物と出会う。未体験の滋味と幸福感──それは「焼餃子」だった。覚醒したグンゾーはかくして人々に幸せをもたらす「究極の餃子」を探す旅に出ることに。朝鮮のマンドゥ、モンゴルのボーズ、ソ連のペリメニ……様々な餃子と出会い、仲間も増えていく。前代未聞の熱々エンタテイメント、餃子をめぐる究極の大河ロマン小説!