アクション映画の黄金期たる90年代のハリウッド映画にも負けないアクション小説『ドリフター』。その待望の続編が発売となった。

 最強の近接戦闘能力を持ちながら女には甘くて無鉄砲なダークヒーロー・豊川亮平。今回は大阪の街を舞台に大暴れ。西成大乱闘、大阪環状線のカーチェイス、豪華客船で最終決戦と、読み出したら止まらないアクション小説がド派手にパワーアップ!

「小説推理」2024年1月号に掲載された書評家・日下三蔵さんのレビューで『ドリフター2 対消滅』の読みどころをご紹介します。

 

水面下で進む中国の日本占領計画。 関西壊滅テロにたった3人で挑む!  不死身のダークヒーロー、 極悪ライバルと豪華客船で血戦!  大暴走のアクション大作第2弾!

 

■『ドリフター2 対消滅』梶永正史  /日下三蔵 [評]

 

不死身のヒーローが中国の秘密テロ組織の巨大な陰謀を阻止するべく再び立ち上がった! アクション・ハードボイルドの快作『ドリフター』の続篇、ついに登場!

 

 北上次郎、杉江松恋、私の3人が編者を務めた創元推理文庫の『日本ハードボイルド全集』(全7巻)が、先日、完結した。最終巻の解説「日本ハードボイルド史」概説に書いたことだが、ハードボイルドという形式は1920年代、禁酒法時代のアメリカで生まれ、日本では戦後の焼け跡に移植される形で入ってきたものである。

 生島治郎、大藪春彦ら先駆者の活躍を経て、70年代末に矢作俊彦と大沢在昌、80年代に北方謙三、志水辰夫、逢坂剛らが登場して、一気にジャンルとして定着した。

 国産ハードボイルドは、冒険小説、警察小説、アクション小説、私立探偵小説、スパイ小説といった隣接ジャンルと融合しながら、独自の発展を遂げてきた。双葉文庫の前作『ドリフター』でアクション・ハードボイルドに挑んだ梶永正史は、その最新の書き手の1人である。

 元自衛官の豊川亮平はインドネシアのバリ島で爆破テロに巻き込まれて恋人の詰田芽衣を亡くし、自らも記憶を失って一年もの間失踪していた。だが、記憶喪失は偽装で、豊川は現地を放浪しながらテロ組織アザゼールの指導者を次々と襲撃し、組織を壊滅にまで追い込んでいたのだ。

「ドリフター(漂流者)」というコードネームが付けられた豊川は日本に戻り、アザゼールを背後で操っていた中国の秘密組織「浸透計画」のテロ計画を未然に防いだ。

 しかし、戦闘で負傷したうえに協力者だった宮間警部を亡くし、その犯人として指名手配されてしまった豊川は、宮間の息子で「ティーチャー」と呼ばれる車椅子の天才ハッカー功一郎の指示で大阪の西成に潜伏していた。

 やがて、組織が豊川に懸賞金をかけてプロの殺し屋たちを雇ったことで、束の間の平和な生活は終わりを告げた。襲撃者たちとの激しい攻防が続く中、豊川は自分の手の内を見透かすかのような敵の動きが気になっていた。

 その正体は自衛官時代の同僚・楠であった! 優秀な工作員だった2人は、互いの能力を限界まで使って死闘を繰り広げることになるのだ──。

 テロ組織の所有する大型クルーズ船クリスタル号を舞台にしたクライマックスの大活劇は、有無を言わさぬ迫力と面白さ。おのれの肉体と頭脳を武器に、国際情勢を背景にした巨大な陰謀に立ち向かう豊川は、現代におけるハードボイルドに相応しいヒーローである。敵にも味方にもひと癖あるキャラクターが揃ってきて、さらなる続刊にも期待がかかる。