中国の秘密組織に孤立無援で挑む元自衛官の豊川亮平。前作『ドリフター』で東京テロを防いだが、戦いはまだまだ終わらない。最強の近接戦闘能力と卓越した頭脳を持つが、女にはちょっと甘い──漂流するダークヒーロー「ドリフター」が日本を守るべく再び立ち上がる。ハリウッド映画ばりの大迫力のアクション小説が、さらにパワーアップして登場。続編に込めた思いや、取材の裏話を著者の梶永正史さんに伺った。

撮影=中 惠美子

 

テレビで見た西成のおっちゃんに興味を持ってすぐに取材へ!

 

──不死身のダークヒーロー・豊川亮平が帰ってきました。前作『ドリフター』では孤軍奮闘、ほぼ一人で「浸透計画」の東京テロを防ぎました。今作が2作目となりますが、豊川という無敵の主人公を著者としてどう見ていますか?

 

梶永正史(以下=梶永): 豊川は卓越した戦闘能力の持ち主ですが、完全無欠というわけではありません。当初、彼は自分の能力を復讐のために使いましたが、いまの彼を突き動かしているものは、守るものの存在です。つまり、情に流されてしまうがゆえに、ピンチにも陥ります。ヒーローとしては不器用な男ではありますが、そんな豊川を著者としてもハラハラしながら応援しています。

 

──前作は東京でしたが、本作は大阪が舞台。東京スカイツリー展望台上での決闘は名シーンでした。今作はどうして大阪を舞台にしたのでしょうか?

 

梶永:きっかけはテレビで西成(あいりん地区)のドキュメンタリー番組を見たことでした。そこで暮らす人たちの生き様に興味を持ち、すぐに現地取材のために宿を取り、数日を過ごしました。西成のおっちゃんたちと昼間から三角公園でカップ酒を飲みながら話をしているうちに、「一見、浮世離れしているように見えるこの西成が、巨大な陰謀の激震地になったらおもしろそうだな……」と思い、『ドリフター2』の舞台にしようと決めました。ただ、プロットを作る際、まっさきに書き始めたのは豊川とこの西成のおっちゃんたちのことで、これが楽しくて肝心の陰謀を何にするかを固めるまでには少々時間がかかってしまいました。

 

──今作では東京テロを凌駕する浸透計画の企み「セクター7」が発覚します。大阪の政党を乗っ取って関西圏を牛耳るという驚愕の計画ですが、実に用意周到に事が進んでいます。実際に地域政党に外国の工作員が這入り込んでいたら……と思うと末恐ろしい話ですが、あながちあり得ない話でもなさそうです。この着想はどこから得たのですか?

 

梶永:外国人投票権の緩和をめぐるニュースを見た際、反対派の方が「安易に許してしまうと、日本ではなくなってしまう」と話していたのが印象に残りました。また、大阪はフィリピンに匹敵する経済規模を持っていると言われていますが、府政を担っているのは自民党ではありません。その独自性を見ていて浸透計画が狙いそうだな……と妄想しました(苦笑)。

 

(後編)に続きます

 

【あらすじ】
恋人を殺された復讐でバリ島のテロ組織をたった一人で壊滅させた元自衛官の豊川亮平。帰国後、日本でホームレスに身をやつしていたが、日本占領を企む中国の秘密組織「浸透計画」の東京テロに巻き込まれ、それを一人で防いだ。追っ手から逃れるべく、大阪の西成に潜伏していたが、ついに居場所がバレてしまう。逃亡先も思考プロセスも読まれ、どういうわけか大ピンチ。敵の親玉は豊川を知り尽くした殺し屋で戦闘能力は互角。戦えば共倒れは必至だが、関西空港爆破テロを防ぐため、豊川は豪華客船に乗り込む。