中国の秘密組織に孤立無援で挑む元自衛官の豊川亮平。前作『ドリフター』で東京テロを防いだが、戦いはまだまだ終わらない。最強の近接戦闘能力と卓越した頭脳を持つが、女にはちょっと甘い──漂流するダークヒーロー「ドリフター」が日本を守るべく再び立ち上がる。ハリウッド映画ばりの大迫力のアクション小説が、さらにパワーアップして登場。続編に込めた思いや、取材の裏話を著者の梶永正史さんに伺った。

撮影=中 惠美子

 

前編はこちら

 

タイタニック的な豪華客船で最後は派手に爆発!?

 

──読みどころはなんといっても最終決戦の舞台となる豪華客船「クリスタル・ホライゾン号」です。映画『タイタニック』のような豪華な舞台で、『スピード2』なみの心理戦とド迫力アクションが繰り広げられる。銃撃戦あり、剣戟あり、爆破ありと、前作を超えるアクションとサービスには大満足でした。

 

梶永:ありがとうございます! 書いていても楽しくて、ついついやりすぎてしまうこともあったのですが、夢中で観ていた80〜90年代のハリウッド映画のような、問答無用のアクションの面白さを、これでもかと詰め込みました。取材を兼ねて豪華客船で船旅ができればよかったのですが、お金も時間もなかったので、クルーズ船ツアーの説明会に参加して雰囲気をつかんできました。また北海道に行く用事があったのですが、あえてカーフェリーを利用してイメージを膨らませました。豊川になりきって船内をウロウロとしていたので、かなり怪しかったかもしれません。

 

──サブタイトルは「対消滅」です。自衛隊時代に因縁のある最強ライバルが登場して豊川が大ピンチ。やはりアクションにライバルは絶対必要ですが、見事な極悪キャラでした。ライバルを描くにあたり、何か意識したことはありますか?

 

梶永:殺人マシーンのような絶対的な敵と豊川。まともにぶつかれば「対消滅」してしまいそうな互角の力を持っているふたり。勝敗を分ける決定的なものがあるとしたら、それはなんなのか……という点を意識しました。豊川はダークヒーローで、善人というわけではありません。そのため、両者の力の差は善悪から生まれるものではないといえます。背負っている過去や、守りたいもの、そういったことが豊川の強さに影響を与えていると思っています。

 

──もうひとつ、気になるのは死んだ恋人の姉である詰田朱梨です。彼女とのラブロマンスはあるのか、ないのか? 今作で関係に進展はあるのかが気になります!

 

梶永:二人の関係についてはいくつかの展開を考えていますが、いずれしても茨の道です(笑)。豊川は恋人のことが忘れられていませんし、彼女の死に責任を感じています。また破天荒な印象の朱梨も実は妹思いですので、その心情はかなり複雑です。今後、二人がどんな選択をするのか、どうか見守ってやってください。

 

──浸透計画の目論みは今作で一段落。とはいえ、まだまだ豊川の活躍を見たいところなのですが、今後の構想はありますか?

 

梶永:浸透計画は人知れず日本全国に勢力を広げており、虎視眈々と水面下で日本占領の時を狙っています。その芽を摘むために、豊川にはまだまだ頑張ってもらうつもりでいます。浸透計画の視点であちこち歩き回り、「次はここだ!」というのは決めています。今度はどの街で大暴れするのか……どうぞお楽しみに!

 

【あらすじ】
恋人を殺された復讐でバリ島のテロ組織をたった一人で壊滅させた元自衛官の豊川亮平。帰国後、日本でホームレスに身をやつしていたが、日本占領を企む中国の秘密組織「浸透計画」の東京テロに巻き込まれ、それを一人で防いだ。追っ手から逃れるべく、大阪の西成に潜伏していたが、ついに居場所がバレてしまう。逃亡先も思考プロセスも読まれ、どういうわけか大ピンチ。敵の親玉は豊川を知り尽くした殺し屋で戦闘能力は互角。戦えば共倒れは必至だが、関西空港爆破テロを防ぐため、豊川は豪華客船に乗り込む。