元自衛隊特殊工作員が、「日本占領計画」を阻止するために死闘を繰り広げるシリーズ第3弾、『ドリフター 天空の悪魔』が発売された。
爆破テロで最愛の恋人を失った元自衛官の豊川は、日本占領を企む中国の秘密組織が、最終テロ計画を進めていることを聞き付ける。陰謀を封じるべく北海道の牧場に潜伏した彼は、自衛隊ヘリの墜落事故で発見された謎のアタッシェケースをめぐり、秘密組織と自衛隊との三つ巴の奪い合いに巻き込まれていく——。
緊迫のアクションとハードボイルドが光るシリーズ最新作の読みどころを、「小説推理」2025年7月号に掲載された書評家・日下三蔵氏のレビューでご紹介する。
■『ドリフター 天空の悪魔』梶永正史 /日下三蔵 [評]
テロ組織の陰謀に命がけで立ち向かうタフガイ、三度目の任務は北海道での死闘!
元自衛隊の特殊工作員だった豊川亮平は、インドネシアのバリ島の爆破テロで恋人の詰田芽衣を亡くした後、記憶喪失と偽って姿を消し、現地を放浪しながら次々とテロ組織を襲撃し、ついには壊滅に追い込んだ。
その神出鬼没ぶりから「ドリフター(漂流者)」のコードネームで呼ばれることになった豊川は、テロ組織の背後に中国の秘密組織「浸透計画」がいたことを知る。芽衣は「浸透計画」の工作員であり、組織を抜けようとして消されたのだ。
「ティーチャー」と呼ばれる車椅子の天才ハッカー宮間功一郎と組んだ豊川は、芽衣の姉で「浸透計画」の工作員だった朱莉とも協力しながら、二度にわたって「浸透計画」の大がかりなテロを阻止してきた。
最新刊の本書では、豊川はティーチャーの指示で北海道中標津の貝澤牧場に牧童として潜伏している。この地に建設されたメガソーラー事業に「浸透計画」が関わっているようなのだ。
やがて中標津に自衛隊のヘリが墜落。瀕死の副操縦士は、なぜか現場に急行した豊川のコードネームを知っており、彼に積み荷を託して息を引き取った。
かくして、「天空の悪魔」と呼ばれる積み荷のアタッシェケースを巡って、自衛隊の秘密部隊、なぜか再び「浸透計画」側についた朱莉、豊川と、三つ巴の壮絶な争奪戦が始まった──。
ふたりきりで牧場を経営する貝澤夫妻を始め、防衛省の浅野一佐、橋爪三尉、「浸透計画」の幹部アンディ・フォンと、今回も癖のある登場人物が揃い、虚々実々の駆け引きが繰り広げられるのである。
肉弾戦と頭脳戦の両方に加え、本書では豊川と朱莉のロマンスもストーリーの軸になっており、北海道に北朝鮮のミサイルが落下するド派手なクライマックスまで、読者は一気に連れ去られてしまうだろう。
主に警察小説で活躍している著者が、アクション・ハードボイルドに挑んだ新境地の書き下ろしシリーズ、緊迫の第3弾、どうぞお見逃しなく!