【あらすじ】
洋菓子メーカーの親子を前代未聞の方法で誘拐した〔大日本誘拐団〕。その実行犯は逮捕されたものの、主犯格の〈リップマン〉と呼ばれる男は警察の手を逃れ、鎌倉に潜伏していた。神奈川県警特別捜査官の巻島史彦は、犯人の手がかりをつかむため、配信のニュース番組に出演する。巻島の呼びかけに応え番組へ現れた〈リップマン〉だが、その裏では「最後のシノギ」と称して警察組織を根底から揺るがす恐るべき犯罪を仕掛けていた――。
累計170万部超の大ヒットシリーズ「犯人に告ぐ」待望の第3弾が、9月8日ついに文庫化! それに先駆けて、シリーズ1作目の冒頭を無料試し読み配信中です。
併せて、1作目から最新作『犯人に告ぐ3 紅の影』までのおさらいと読みどころをご紹介。
『火の粉』『仮面同窓会』『望み』など数多くの作品が映像化されたサスペンス小説の名手・雫井脩介が描く警察小説『犯人に告ぐ』は、第7回大藪春彦賞を受賞、「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝くなど、2004年のミステリーシーンを席巻した。
身代金受け渡し中のミスで幼い命が失われた誘拐事件から6年後、川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査指揮を任された巻島は、現役捜査官としてテレビニュースに出演することとなる。番組上で犯人との“対話”を続ける中、見えてきたものとは――。史上初の「劇場型捜査」が展開された衝撃のシリーズ1作目である。
続いて2作目『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』で巻島が任されたのは、洋菓子メーカーの社長と息子の誘拐事件。犯人側の巧妙な駆け引きによって、警察、被害者親子、犯人の三つ巴の心理戦が展開され、策略を巡らした緊張感たっぷりの攻防が描かれる。実行犯は捕まえられたものの、すんでのところで捜査の手を逃れた主犯格の〈リップマン〉は、警察を依然翻弄する。
そして、このたび文庫化された最新作『犯人に告ぐ3 紅の影』では、顔認証などの最新技術と地道な人海戦術でじわじわと犯人を追い詰める巻島ら県警側と、ぎりぎりのところで捜査を逃れながら警察組織の根底を揺るがす恐るべき犯罪を仕掛けようとする犯人、それぞれの視点で描かれていく。警察組織のしがらみや腐敗に足をとられる巻島の苦悩と、逃亡を手助けする〈リップマン〉の仲間との親交が対照的だ。
犯人の手がかりをつかむため、配信のニュース番組にもう一度出演した巻島はスタジオから呼びかける。
「〈リップマン〉に告ぐ――」
どちらの視点からもみなぎる執念と悲哀に心を揺さぶられ、読んでいると警察、犯人のどちらも応援したくなる。驚くほどの才覚を持つ男が〈リップマン〉として犯罪に走った過去には、一体何があったのか。県警の異端児である特別捜査官・巻島はどのようにして犯人を追い詰めるのか。驚愕の結末を、最後まで刮目してほしい。