サスペンスの名手雫井脩介氏による、人気警察小説シリーズ「犯人に告ぐ」。神奈川県警で異彩を放つ捜査官・巻島が知能と技術を駆使し、前代未聞の捜査方法で犯人に詰め寄っていく頭脳戦が魅力的な本シリーズの最新第3巻がこの度待望の文庫となった。

 今回はネットによる生配信番組を利用し、警察は天才詐欺師とのリアルタイムな対話中継を試みる。それはまるでYoutubeLIVEで警察と犯人の交渉を見てるようだ。

 視聴者が見守るなか、番組出演の裏では警察組織を根底から揺るがす恐るべき犯罪を仕掛けられていて──。どうする、神奈川県警!

 巻を重ねるごと群像劇としての濃密さが増す「犯人に告ぐ」の魅力を、「小説推理」2019年10月号に掲載された書評家・細谷正充さんのレビューでご紹介する。

 

175万部突破!! 警察小説の金字塔  天才詐欺師が神奈川県警に仕掛けた、恐るべき計画!

 

■『犯人に告ぐ3 紅の影』雫井脩介 著  /細谷正充:評

 

神奈川県警特別捜査官の巻島史彦が、再びテレビで犯人と対決。その裏では、驚愕の事態が進行していた。雫井脩介の人気シリーズ第3弾、堂々の登場だ。

 

「小説推理」に好評連載された、雫井脩介の「犯人に告ぐ」シリーズ第3弾が刊行された。主人公は、神奈川県警特別捜査官の巻島史彦。前作で彼が率いるチームは、誘拐事件の実行犯である砂山兄弟を捕まえた。しかし兄弟を操っていた〔リップマン〕と呼ばれる男を逃がしてしまう。AI技術を使い、〔リップマン〕に迫るが、あと一歩のところで失敗してしまった。

 どうやって〔リップマン〕を見つけることができるのか。神奈川県警本部長の曾根要介からネットテレビを利用した捜査を命じられた巻島は、しぶしぶ番組に出演する。どうやら曾根はシリーズ第1弾で、テレビを利用した劇場型捜査が成功したことに、味を占めているようだ。既存のテレビよりレスポンスのいいネットテレビには、〔リップマン〕専用のアバターが用意されている。そのアバターを通じて、巻島は〔リップマン〕と対峙するのだった。

 巻島側の粗筋だけを書いたが、本書はそれと同時に、〔リップマン〕こと淡野悟志の物語が進行していく。旧知の女のもとに転がり込み、縁あって弟分を得た淡野は、犯罪の世界から引退することを決意。ボスの〔ワイズマン〕にそう告げるのだが、最後の大仕事を頼まれた。それはネットテレビに出演する巻島まで利用した、驚くべき計画であったのだ――。

 作者は前作の砂山兄弟と同じく、淡野の人生や心情を詳細に描き出す。読めば読むほど淡野が、単なる犯罪者ではなく、血肉を持った人間として屹立してくるのだ。だからこそ巻島と淡野の対決が、盛り上がるのである。

 さらに淡野側のストーリーにより、〔ワイズマン〕の正体や、犯罪計画の内容が、読者には早い段階で明かされる。警察に〔ポリスマン〕という内通者がいることもだ。しかしそれが分かっても、物語の興趣は損なわれない。むしろサスペンス度が増しているのである。作者の手腕は、流石というしかない。

 しかも淡野の、最後の大仕事が凄い。よくある恐喝なのだが、脅す相手が意外すぎるのである。よくもこんなことを考えたものだ。一連の事件の着地点など予測不可能。ただただ、夢中になってページを捲ってしまうのである。

 また、ダメ刑事だが、妙にツキのある小川かつおなど、脇役陣の扱いも巧みである。シリーズ物ならではの面白さも、存分に堪能できた。絶対に読んだ方がいいと、読者に告げたくなる作品なのだ。