笹川総合病院の301号室では、不自然な医療事故が度々起こり、立て続けに患者が亡くなってしまう。医療従事者のミスなのか、誰かの故意の「何か」があったのか。新米弁護士の木村は先輩の高塚と共に、死と対峙する医療現場で起きた難事件に挑む。

 著者デビュー10周年記念「木村&高塚弁護士」シリーズ、3ヶ月連続刊行で待望の再始動! 「小説推理」2022年9月号に掲載された書評家・日下三蔵さんのレビューと帯で『301号室の聖者』の読みどころをご紹介します。

 

301号室の聖者

 

 

■『301号室の聖者』織守きょうや  /日下三蔵:評

 

病室という特殊な空間で交錯する人間模様を少しずつ解き明かしていくのだが、法律では解決しきれない真相が待ち受けているのがいい。

 

 織守きょうやは2012年に『霊感検定』で第14回講談社BOX新人賞Powersを、15年に『記憶屋』で第22回日本ホラー小説大賞読者賞を、それぞれ受賞。新世代ホラー小説の書き手として旺盛な執筆活動を続けており、角川ホラー文庫の『記憶屋』シリーズはマンガ化、映画化もされたベストセラーになっている。

 しかし、その活躍はホラー界に留まらず、昨2021年には二見書房から『幻視者の曇り空』、文藝春秋から『花束は毒』と、力作ミステリを立て続けに刊行して、大きな話題を呼んだ。

 そんな著者のミステリ第1作は、本書『301号室の聖者』の前作に当たる連作短篇集『黒野葉月は鳥籠で眠らない』である。新米弁護士の木村とベテラン弁護士の高塚が4つの事件に遭遇するこの作品は、15年に講談社から刊行され、19年に『少女は鳥籠で眠らない』と改題されて講談社文庫に収められた。今回のシリーズ再開に伴い、本書に先立って原題に戻して双葉文庫にも入っている。どのエピソードでも、歪だったり、亀裂の入った人間関係に、法律を用いた意外な結末が提示される。我々の先入観や偏見を巧みに利用したトリックが仕掛けられており、本格ミステリに社会派の要素も加わったハイレベルな連作になっている。

 ホラーからリーガル・サスペンスという振り幅に驚くが、もともと著者は現役の弁護士なのである。現在は執筆多忙のため休業中とのことだが、法律の専門家なのだ。

 16年に講談社から刊行された本書は木村&高塚シリーズ第2作。今回の双葉文庫版が初の文庫化である。

 事務所が顧問契約をしている笹川総合病院が医療ミスで訴訟を起こされ、木村が案件を担当することになる。木村は病院に通ううちに、入院患者やその家族たちが抱える事情に少しずつ触れていくが、問題の301号室で立て続けに不審な事件が発生し、ついに患者が死亡してしまう。事故か? 殺人か? 殺人だとしたら、余命少ない入院患者を殺す動機は何か?

 病室という特殊な空間で交錯する人間模様を、高塚の助言を受けながら木村は少しずつ解き明かしていくのだが、法律では解決しきれない真相が待ち受けているのがいい。

 9月には待望の第3作『悲鳴だけ聞こえない』が双葉社から刊行される予定である。俊英の傑作シリーズの再開を喜びたい。