■『鑑定人 氏家京太郎』中山七里

 

 多くのヒット作を生み出してきた、中山七里が描く新たな主人公は、凄腕鑑定士の氏家京太郎。彼は、3人の女性が殺害され子宮を抜かれるという猟奇的な殺人事件の容疑者について、弁護士から鑑定依頼を受ける。だが、3人の殺害を立証する検察側の鑑定通知書には違和感があり……。容疑者、検察官、弁護士、科捜研、裁判官──真実をゆがめているのは誰だ? 手に汗を握る展開の果てに待ち受ける、驚愕のラストと圧巻のサスペンスに刮目せよ。

 本書の魅力の一つが登場人物である。それぞれの個性はもちろん、立場や関係性にも注目したい。

 

《登場人物紹介》
氏家京太郎(うじいえきょうたろう)……民間の科学捜査鑑定所である氏家鑑定センターの所長。警視庁科捜研のOB。

橘奈翔子(たちばなしょうこ)……氏家鑑定センターのDNA担当。

那智貴彦(なちたかひこ)……元勤務医で連続通り魔事件の被告人。3件の女性殺害のうち最後の1件を否認。

吉田士童(よしだしどう)……元検事で、いわゆるヤメ検の弁護士。那智の弁護を担当。

高頭冴子(たかとうさえこ)……千葉県警捜査一課の警部。〈県警のアマゾネス〉と称される。

谷端義弘(たにばたよしひろ)……東京地検の検事。吉田とは犬猿の仲。

黒木康平(くろきこうへい)……科捜研職員で氏家のライバル。通り魔事件の鑑定を担当したが、再鑑定を目論む氏家に対して、試料は全量消費したと主張。

 

●民間組織VS国家組織

 

 元々警視庁科捜研に所属していた氏家と当時からライバルだった黒木の関係が、民間鑑定センターと警視庁科捜研の対立という構図に。

 元同僚同士が立場を変えたからこその意識の違いや、変わってしまった言動、変わらない信念に注目。

 

●弁護士VS検事

 

 吉田と谷端は検事時代の元同僚で、谷端は吉田が検事をやめるきっかけに深くかかわっている。そしてこの構図は図らずも氏家と黒木の関係と交差する。

 

●氏家鑑定センターVS真実

 

 猟奇殺人犯・那智は3件の殺人のうち1件は否定した。弁護士・吉田は殺人犯の弁護──勝ったとしても賞賛はないだろう事件を引き受けた。しかも勝算は低い。

 対するは正義を執行する警視庁&科捜研。勝ち筋があるとしたら、氏家鑑定センターにしか見つけられない真なる証拠を見つけ出すのみか。

 そして読めない那智の思惑──果たして追い求めた真実の先に真犯人はいるのか。

 

 一筋縄ではいかない事件と複雑に絡みあう人間模様。しかし、〈モノ〉に隠された真相はたったひとつ。驚愕の結末まで一気読みの鑑定サスペンス!

 

 小説冒頭を公開中! 是非お楽しみください。
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